このコラムは基本的に、“ウェブで販売されている最高の時計”というテーマのもと執筆されている。

パテック フィリップのステンレススティール(SS)製Ref.1518が“2000万ドル超”で販売されている記事をぜひご覧いただきたい。一方で、時針の代わりに太陽と月の表示があり、デッドビートセコンド機構を備えたユニークなドクサに興味があるならこのまま読み進めてほしい。

選んだ時計には自信があるが、前回掲載分の結果は今ひとつだった! 目玉となる初期フランク ミュラーとブシュロンの“ゴンドーロ”は、いまだにそれぞれの希望価格で販売中だ。一方でeBayに出品されていたポー“ラ”ルーターは最終的に1826.98ドル(日本円で約29万円)で落札され、ルガンのクロノグラフは完売となった。なお、ロレックスRef.6424のオークションも先週末に2325ドル(日本円で約35万2000円)で終了している。

それでは、今週のピックアップを紹介しよう!

オーデマ ピゲ プレシジョン 天文台ダイヤルとバルジュー13VZAS搭載 1948年製
先月のオリジナル マイアミビーチ アンティークショーで目にした数千点の時計のなかで、今もなお強く印象に残っているのは、このシンプルで、一見すると控えめで、さほど魅力的に映らないオーデマ ピゲだ。こんな紹介の仕方では次の時計にスクロールしたくなるかもしれないが、ぜひもう少しお付き合いいただきたい。この時計が特別な理由をお伝えしよう。このことは以前から言われ続けているが、私は今日のコレクターが本物のヴィンテージ オーデマ ピゲの素晴らしさを本当に理解しているとは思えない。

1951年以前に同社が製造した時計はどれも基本的に一点物であり、ひとつとして同じものは存在しなかった。シリーズとして製造されたモデルであっても、細かな違いがあったのだ。そして、それらは極めて稀少な存在だった。1940年代に製造されたパテック フィリップのクロノグラフの総数と、1951年以前のオーデマ ピゲのクロノグラフ製造数がわずか307本であることを考えてほしい。あるいはパテックのパーペチュアルカレンダー(Ref.1518、Ref.1526、Ref.2497)を思い浮かべて欲しい。パテックが同時期に製造したパーペチュアルカレンダーは688本だが、オーデマ ピゲはわずか9本しか作っていない。

この比較は一見、パテックの優位性を示すものに思えるかもしれない。しかし、当時オーデマ ピゲが複雑機構を備えた腕時計を製造していたという事実自体が驚くべきことなのだ。どんなブランドであれ、20世紀中ごろのパテックと比較するのは容易ではない。たとえばヴァシュロン・コンスタンタンは、この時期にパーペチュアルカレンダーの腕時計を一切製造していない。もちろん今回紹介する時計は時間表示のみ(タイムオンリー)のモデルだが、こうした背景を理解することでその価値がより明確になるだろう。これは単なる“ビッグスリー”の一角を担うブランドのヴィンテージウォッチというだけではない。3社のなかで唯一、ウォッチメイキングにおいて技術的挑戦を続け、各リファレンスを大量生産することなく仕立て上げていたブランドによる、極めて希少で卓越した時計なのだ。

前述のオーデマ ピゲの複雑機構のほぼすべては、バルジュー製のムーブメント“13VZ”をベースにしている。この点ではパテックのRef.1518やRef.2499、そして伝説的なJ.B.チャンピオンの天文台モデルと共通している。そして今回紹介するプレシジョン 13VZASは、オーデマ ピゲのなかでもJ.B.チャンピオンの時計に匹敵するモデルである。ただし、まったく同様というわけではない。なぜなら、このムーブメントが(パテックの事例のように)天文台クロノメーター検定にエントリーされた記録は存在していないからだ。しかし両者が持つ理念は共通している。天文台時計とはブランドが誇る究極のタイムオンリームーブメントであり、最高水準の精度と仕上げで製造されたものだ。そしてこのオーデマ ピゲには、そのすべてが反映されている。細かい説明はさておき、まずはムーブメントの仕上げに注目して欲しい。広い面積に施されたコート・ド・ジュネーブのストライプは、フィリップ・デュフォーのシンプリシティに匹敵するほど美しい(実際、デュフォー自身が仕上げの参考にしたのが13VZだと言われている)。

このムーブメントは32mm径のSS製ケースに収められており、2021年のクリスティーズで10万6250スイスフラン(当時の為替レートで約1285万円)で落札され、1万2000~2万8000スイスフラン(当時の為替レートで約145万〜328万円)のエスティメートを大きく上回った。そして現在、マイアミのメンタウォッチのアダム・ゴールデン(Adam Golden)氏が、この驚くべきオーデマ ピゲを13万5000ドル(日本円で約2040万円)で販売している。詳細はこちらから確認できる。

パテック フィリップ ローズゴールド(RG)製Ref.1486 箱、書類付き 1942年製
10月にこのBring A Loupeで、ヴィンテージのパテック フィリップ Ref.1485を“キューブ風”と表現して紹介した。それに続くのがひとつ上の番号にあたる姉妹リファレンス、Ref.1486だ。どちらもキューブのようなフォルムを持つが、Ref.1486はフードラグを備えゴールドケースで製造されている。一方のRef.1485は丸みを帯びた魅力的なラグを持ち、SSのみで展開されている。少々ややこしいが、どちらも同じケース構造を採用しており、このふたつのリファレンスはペアとして考えずにはいられない。これは時計界におけるユニークな仕様のひとつであり、私も特に気に入っている。

私の記事を読んだことがあるなら、私が20世紀中期の防水ケース、特にケースメーカーであるフランソワ・ボーゲルのものを好んでいることにはお気づきだろう。このRef.1486ももちろんボーゲル製で、1939年に取得された特許技術が使われている。この設計ではケースはケースバックとベゼルのふたつの主要パーツから構成され、側面にある3つのスライド式固定パーツがそれらをしっかりと密閉する。このRef.1486は状態が極めていいため、ケース側面のスライド機構用の刻みがはっきりと残っているのが確認できる。

1960年以前のパテック フィリップへの関心の高まりにより、こうした個性的なリファレンスの価格は近年上昇している。しかし私の知る限りでは、Ref.1486の優れた個体が市場に登場するのは実に久しぶりのことだ。実際、このリファレンスの過去最高額が記録されたのは1999年のオークションであり、それ以降極めて希少な存在となっている。そのため個体数の少なさと良好なコンディションのモデルの不足により、市場全体の価格上昇には追いついていない。Ref.1486はラグを含めたサイズが横27mm×縦37mmで、手首に乗せたときのバランスが絶妙であり、非常につけやすい時計だと感じる。

今回のRef.1486は、おそらく市場に登場したなかで最も素晴らしい個体のひとつだろう。“ピンクオンピンク”と呼ばれる配色で、RGのケースにRGトーンのシルバーダイヤルが組み合わされており、パテックのアーカイブ抄本によってそのオリジナリティが確認されている。さらにこの個体にはオリジナルの箱と書類まで揃っている。ケースに刻まれたホールマークのシャープさを見てほしい。ヴィンテージのパテック フィリップにおいて、これほどの状態のものは滅多にお目にかかれない。

この傑出したRef.1486は、バルセロナのAncienne Watchesのイグナシオ・コル(Ignacio Coll)とそのチームによって1万2000ユーロ(日本円で約188万円)で販売されている。詳細はこちらから確認できる。

ダニエル・ロート ホワイトゴールド(WG)製Ref.C117 永久カレンダー 1990年代製
LVMHとラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンがブランドの最新ラインとしてダニエル・ロートのモデルを少しずつ復活させているなか、パーペチュアルカレンダーの登場は時間の問題だろう。オーデマ ピゲとブレゲでの経験を経て、ロートは1989年に自身のブランドを立ち上げた。そして3年後の1991年のバーゼルワールドで、彼は世界初となる瞬時切り替え機能を搭載したパーペチュアルカレンダーを発表した。それまでのパーペチュアルカレンダーは、日付や月などの表示が真夜中にかけて徐々に変化するものだったが、このモデルではすべての表示が一瞬で切り替わる仕組みになっている。ロートの作品は初期の独立系時計師の頂点を象徴するものであり、このパーペチュアルカレンダーもその好例だ。彼の初期の時計は伝統的な時計製造に根ざしながらもまったく新しい美学を打ち出し、その革新的な機能性によって業界の進化を促した。

しかしロートはこの偉業をひとりで成し遂げたわけではない。実はこのパーペチュアルカレンダーの開発に際し、彼は親しい隣人であるフィリップ・デュフォー(Philippe Dufour)に協力を仰いでいる。デュフォーはこのモデルに搭載されたパーペチュアルカレンダーモジュールの開発に大きく関与した。このモジュールは最終的にレマニアのエボーシュムーブメント、Cal.8810の上に搭載されることとなった。ロートとデュフォーという20世紀を代表するふたりの名工がてがけたにもかかわらず、このプロジェクトは非常に困難を極めた。世界初のものを生み出すのは決して容易なことではない。デュフォー自身も「大変な作業だったのを覚えています。ムーブメントの完成までに6~7カ月かかりました」と語っている。

ある日曜日の午後、マンハッタンのアッパーイーストサイドを何気なく歩いていた時、ふとした好奇心からリアルリアル(The RealReal)のマディソンアベニュー店に立ち寄った。そしてショーケースのなかにこの時計を見つけた。初期のダニエル・ロートをこうした場所で目にするだけでも十分に興奮するが、それがデュフォーが関わったパーペチュアルカレンダーとなればなおさら心が躍る。とはいえ、周囲の誰もこの時計の意義を理解できるとは思えなかったので時計をそっと置き、「ありがとう」とだけ言って店を後にし、急いで帰宅してこのBring A Loupeの記事を書き上げた。

この個体は完璧とは言えない。おそらくオーバーホールが必要で、オリジナルボックスやギャランティーも付属していない。もちろん1990年代の時計としてはそれらが揃っているのが理想的だ。しかしこのモデルの過去の取引価格を考慮すると、見逃せない価値がある。同じリファレンスの個体が2024年には4万8946ドル(日本円で約740万円)、2023年には7万674ドル(日本円で約1070万円)でフィリップスのオークションにて落札されている。なお、これらはどちらもフルセットだった点は付け加えておこう。

このダニエル・ロートのパーペチュアルカレンダーはリアルリアルによって3万6000ドル(日本円で約545万円)で掲載されているが、現在のセール価格は3万4200ドル(日本円で約518万円)にまで下がっている! 詳細はこちらから確認できる。

ドクサ サン&ムーン デッドビート秒針 1950年代製
今週のピックアップの締めくくりにふさわしいeBayからの1本として、ヴィンテージの魅力に溢れたこのドクサを紹介しよう。HODINKEE Magazineを何号か遡ると(Vol.11だったはず)、“Hey Hodinkee”でコミュニティからの質問に答える機会があった。そのなかでも特に興味深かったのが、「比較的手ごろな価格でデッドビート秒針機構を搭載したムーブメントを見つけるにはどうすればいいか?」という質問だった。もちろん、現在1万ドル未満でデッドビートを製造している数少ないブランドのひとつとしてハブリング²を挙げたが、話の大部分はヴィンテージ時代のサプライヤーであるシェザード(Chézard)に焦点を当てた。

シェザード SAは20世紀前半に活躍したエボーシュメーカーで、最終的に現在のETAの一部となった。わかりやすく言い換えるならETAに吸収されたブランドということだ。とはいえ、このメーカーについて詳しく調べるのはなかなか難しい。シェザードは1952年にデッドビート秒針機構のムーブメント群に関する特許を取得しており、今日ではこの分野でコレクターに知られている。ここで明確に説明しておくと、デッドビート秒針とは秒針が通常のスムーズな動きではなく、1秒ごとにカチッとジャンプするように進む機構を指す。この動作は、輪列に蓄えられた一定の張力が限界に達したときに、ゼンマイが4番車を解放することで実現される。

このシェザード製ムーブメントを搭載したドクサは、間違いなくユニークなデザインだ。時針を持たず、サン&ムーン表示で時間を示すという珍しい仕様になっている。太陽は午前6時(おおよそ日の出の時間)に現れ、月は午後6時から登場し、時間を示す仕組みだ。

セイコー 奇想天外な時計たち

セイコーは13年ぶりに“パワーデザインプロジェクト”という社内プロジェクトを復活させた。これは非常に興味深い取り組みであり、セイコーウオッチの社内デザイナーたちが、従来の枠にとらわれず自由に時計のコンセプトを探求できる場となっている。昨年のテーマは“専用すぎる腕時計展”であり、デザイナーたちは実用性を重視した時計を生み出すことを求められた。しかし、それは我々が一般的に考えるような実用性とはやや異なるアプローチだった。

昨年のプロジェクトで、文字どおり“パンダ”クロノグラフを再解釈したかつてないほどユニークなモデルが登場したのを見逃していたなら、惜しいことをした。しかし心配は無用だ。今年もセイコーは“専用すぎる腕時計展2”というシンプルながら的確なタイトルで、このプロジェクトを再び開催した。

商業的な成功はさておき、このプロジェクトは、巨大コングロマリットが社内の才能を育成して膨大な製品ラインナップのなかで遊び心ある個性を表現する素晴らしい試みである。規模の大小を問わず、時計デザインの背後にある人間らしさを改めて感じさせてくれる。今年は6本の時計が登場し、そしてそのどれもが驚くほど専門に特化していた。

ナイトモード
最初に紹介するのは忍者専用腕時計だ。タクティクール(tacticool)とタクティカル(tactical)が融合したデザインであり、忍者が夜の闇のなかで活動することを考慮し、すべてブラックで統一されている。忍者が直面する外部衝撃(共感できる人はいるだろうか?)から時計を守るため、デザイナーの菅沼佑哉氏は、文字盤の針を保護するスイング式の蓋を採用。この蓋はガラス製または金属製を選択でき、時間を確認していないときには、針をしっかりと覆う構造になっている。

もちろん、この時計には輝くメタルブレスレットや繊細なレザーストラップを合わせるわけにはいかない。菅沼佑哉氏は、忍者専用腕時計にハイブリッドなカフストラップを採用。これは細いレザーを幾重にも巻きつけて装着する仕様となっており、腕にしっかりと固定しながらも肌を保護するデザインになっている。さらにセイコーによれば、この時計は上腕や足首にも巻きつけられるため、忍者のさまざまな動きに適応できるとのことだ。スプリングドライブムーブメントを搭載できるかどうかも気になるところである。

もし忍者のようなステルス性が自分には合わないと思うなら、まったく正反対のアプローチとして、目がくらむような光と鼓膜を揺さぶるサウンドに包まれるナイトクラブの世界へ飛び込んでみるのもいいだろう。そんな環境にぴったりなのが“クラブDJ専用腕時計”だ。セイコーはこれらのコンセプトウォッチが市販予定のないデザインであることを明確にしているが、特にこのDJ専用腕時計に採用されたインフィニティ(無限)ミラーのアイデアは、ぜひ製品化してほしい要素のひとつだ。ビジュアル面では、まるで『ブレードランナー(原題:Blade-Runner)』をほうふつとさせるネオンカラーが魅力的であり未来的な印象を放っている。さらに時計の見た目から判断すると、セイコーのルミブライトを塗布する必要すらなさそうだ。クラブでDJをするなら、ブラックライトの下で自然に発光し、最高の視認性を発揮することだろう。

クラブDJ専用腕時計

この時計はDJ専用というだけあって、文字盤の時間表示にもユニークな工夫が凝らされている。午後6時から午前5時までの時間のみを表示し、不規則な睡眠サイクルを前提とした設計となっている。デザイナーの伊東絢人氏はこのモデルにセイコーの自動巻きムーブメントを採用しているが、この省略された時間表示がデジタルムーブメントなしでどのように機能するのかは不明だ。すべての要素が綿密に考え抜かれており、ストラップにもこだわりが見られる。選ばれたのは中央にUV反応性のホワイトファブリックを配したレザーストラップで、全体のデザインを引き締める仕上がりとなっている。

夕暮れから夜明けまで
クリストファー・ノーラン(Christopher Nolan)監督の映画の登場人物がしばしばハミルトンを着用するように、昨年はロバート・エガース(Robert Eggers)氏にとって、『ノスフェラトゥ(原題:Nosferatu)』に企業スポンサーを取り入れ、オルロック伯爵にこの眩い“ヴァンパイア専用腕時計”を持たせる絶好の機会だったのかもしれない。しかし、その宝石がちりばめられた外観を超えて見れば、この時計は太陽恐怖症のトランシルヴァニア人にとって必携の1本といえるかもしれない。

石原 悠氏(セイコーの高級ラインを手がけるデザインディレクター)は、ヴァンパイアが安全に外出できる時間を把握できるよう、文字盤のすべての要素を巧みに設計している。回転ベゼルには赤から透明へとグラデーション状に配置されたクリスタルがセットされており、吸血鬼が最後の血の宴からの経過時間を記録できる仕様になっている。

もし鏡に自分の姿が映り日の出とともに目覚めるなら、きっとバランスの取れた朝食で1日を始める準備ができているはずだ。そこで登場するのが“ゆで卵好き専用腕時計”である。ケース側面のプッシャーを操作すると、好みの固さに応じたタイマーをセットできる(ちなみに私は半熟一択)。さらにこのケースは10%の卵殻を含むプラスチック複合素材で作られており、まさにゆで卵愛好家のためのアイテムとなっている。

針は時間の経過とともにスイープし、最後に振動して卵の茹で上がりを知らせる仕組みになっている。もちろん、デザイン面でもこの時計のテーマがしっかりと反映されており、オレンジからイエローへと変化するグラデーションダイヤルはまさに卵の黄身を思わせる色合いだ。この時計を手がけたのはグランドセイコーの酒井清隆氏。デザインの詳細は、公式ページに登場する“タマリエ(卵ソムリエ!?)”に聞いてみるといいだろう。まさにエッグストリーム(極端な卵愛)とも言うべき時計だ。

古き伝統
ついに、全面夜光ダイヤルを採用したモデルが登場した。しかし、まさかそのデザインが“サンタクロース専用腕時計”になるとは予想していなかった。暗闇で光るダイヤルの上を、白い秒針が駆ける。その先端には赤いトナカイがデザインされている。確か赤いのはルドルフの鼻だけだった気がするが…まあ、それはさておき。時刻表示は夜間のみに限定されており、これはサンタのプレゼント配達スケジュールに合わせたものだ。また星型のGMT針がセカンドタイムゾーンを指し示し、世界中を飛び回るサンタにとって実用的な設計となっている。

この時計の時間表示の仕組みが現実世界でどのように機能するのか、正直なところ完全には理解しきれていない。しかしそれを議論するのは、魔法映画のなかで熱力学の法則を持ち出すようなものだとも思う。松本卓也氏が手がけたこのモデルは、今回のデザインのなかでも最も装飾性の高い1本だ。ハンターケースを採用し、ヴィンテージ懐中時計を思わせるディテールが随所にちりばめられている。さらに美しくデザインされた彫刻入りのカバーが、クラシカルな魅力を一層引き立てている。

もしクリスマスに本当の恋が見つかるかどうかを知りたかったなら、この展示の最後を飾る時計が、その問いに答えてくれるかもしれない。廣瀬由羽氏が手がけたこの“恋する乙女専用腕時計”は、恋に夢中な若者たちが運命の人を探す手助けをするという、なんとも愛らしいコンセプトの時計だ。

特徴的なのは、ひとつの針が半透明の花びらディスクになっている点。このディスクには花占いの機能が組み込まれており、花びらの一部がカットアウトされている。占いを始めるとディスクがランダムに回転し、下に印刷された“LOVE me”または“Love me NOT”のどちらかのメッセージが小窓から現れる仕組みだ。さらに、大きく歪んだクリスタルを採用することで、占いの結果はボタンを押した人にしか見えないようになっている。

ロレックスのロンドンの新拠点は必見です。

ロンドンのメイフェア地区にあるオールド・ボンド・ストリートの角で、緑のリボンが切られました。ハサミを握るのは、ブライアン・ダフィー(Brian Duffy)氏とジャン・フレデリック・デュフール(Jean-Frederic Dufour)氏。彼らはヨーロッパ最大となるロレックス・ブティックの開業を正式に宣言しました。この絶好の立地にある店舗は、Watches of Switzerlandとロレックスの100年にわたるパートナーシップの結晶なのです。

“ロゴがなくともここは明らかにロレックススーパーコピー 優良サイトだと感じる”と、誰かが言っているのを耳にしましたが、それにはまったく同感です。壁はロレックスを象徴するグリーンで彩られ、特徴的なフルーテッドベゼルのモチーフが随所にあしらわれています。それは決して過剰なブランディングではなく、むしろロレックスらしさを洗練された形で表現しています。全面改装されたこの空間は、壮麗さと親しみやすさの絶妙なバランスを実現しています。4フロア、総面積1100平方メートル(約1万1800平方フィート)という広大なスペースでありながら、ラグジュアリーでありつつも温かみのあるパーソナルな雰囲気を醸し出しているのです。
2025 VS工場新作:ロレックス デイトナスーパーコピー 126506 配重バージョン 163.8g 丹東4131ムーブメント
ブライアン・ダフィー氏(Watches of Switzerland CEO)とジャン・フレデリック・デュフール氏(ロレックスCEO)がテープカットしました。

このプレス向けオープニングイベントに参加する機会に恵まれましたが、この新店舗はまさに建築とリテールの融合による偉業としか言いようがありません。店内に足を踏み入れた瞬間、一般的な小売店とはまったく異なる世界に入り込んだような感覚を覚えました。Watches of Switzerland(HODINKEEの親会社)とロレックスは、このプロジェクトに約1年半を費やしており、その時間と配慮が細部にまで行き届いていることが感じられます。1階には7種類の異なる大理石が使用され、建物自体の構造も非常に印象的です。もともと1886年に銀行として建てられたこの建物は、ここ40年ほどのあいだに小売スペースへと転用されました。

もちろん、ロレックスはロンドンと深い結びつきを持っています。ハンス・ウイルスドルフ(Hans Wilsdorf)が1905年にこの地でブランドを創業したことからも、それは明らかです。1階の壁には彼の堂々たる肖像画が飾られており、その周囲には最新のロレックスコレクションが展示されています。このフロアとその上の階では、ゲストはこれらの傑作を鑑賞し、エキスパートのセールスコンサルタントのサポートを受けながら購入することができます。これらのコンサルタントは、どのような状況にも対応できるよう6カ月にわたる厳しいトレーニングを受けており、購入プロセス全体を通じてスムーズでパーソナルなガイダンスを提供します。GMTマスター II、コスモグラフ デイトナ、サブマリーナーが、これらのフロアの主力モデルとして展示されています。また1階の奥には、ロレックスグリーンのガラスと宙に浮かぶロレックスクラウンが特徴的な、美しいアトリウムが広がっています。4つのフロアはそれぞれ異なる体験を提供しますが、このアトリウムが高さ約13m(約43ft)にわたって各階を結びつけ、一体感を生み出しています。

「このブティックにあるすべての要素は、時間をかけ、細心の注意を払ってつくり上げられました。数々の独自の特徴を備え、真のフラッグシップとしての地位を確立しています。そして“最高のものは常にさらによくすることができ、そうあるべきだ”というロレックス創業者の信念を受け継いでいます」

– ブライアン・ダフィー氏(Watches of Switzerland CEO)
地下階へ降りると、そこはまさにロレックスコレクターにとっての楽園とも言える空間が広がっています。フロアには世界でも類を見ないほど充実した認定中古ロレックスのセレクションがそろっていました。展示されているのは、ジョン・メイヤーデイトナ、トゥッティ フルッティヨットマスター、そしてメテオライトダイヤルを備えたホワイトゴールド製GMTマスター IIといった、目を見張るようなモデルの数々です。さらに、ジュネーブからの到着待ちのアイテムとして、コメックス・サブを含む希少モデルも控えているとのことです。またこのフロアには6カ月ごとに入れ替わる特別展示スペースが設けられ、ロレックスの輝かしい歴史のさまざまな側面が紹介されます。現在の展示では、GMTマスターの進化をテーマにしたコレクションが披露されています。

地下階のGMTエキシビション。

各フロアを移動する際は、ぜひエレベーターを利用することをおすすめします。このエレベーターは壮麗なグリーンベゼルのディスプレイと並行して動き、ブティックのなかで最も印象的なデザインのひとつを特別な視点から楽しむことができます。1階に到着すると、そこは快適さとプライベート感を追求した空間が広がっています。ブティックの扉をくぐった瞬間から、ワールドクラスのカスタマーサービスが実感できるのですが、その最高の例ともいえるのがこのフロアです。エレガントなラウンジエリアに加えて本格的なバー、そしてVIP向けに設けられたふたつのプライベートルームが、より親密で特別なショッピング体験を提供します。このバーは単なる装飾ではなく実際に営業しており、このブティック限定のオリジナルカクテル“1905”が提供されます。この特別なカクテルを味わいながら、ジュネーブから到着予定のコメックス・サブに思いを巡らせるのも、贅沢な時間の過ごし方かもしれません。

このフロアには、ジェムセッティングされた現行ロレックスも展示されており、貴石の輝きを最大限に引き出すために大きな窓の近くに戦略的に配置されています。その空間は、洗練されつつも心地よい雰囲気に包まれています。さらにテニス界のレジェンドであるロジャー・フェデラー(Roger Federer)選手とヤニック・シナー(Jannik Sinner)氏のポートレートがさりげなく飾られており、ロレックスがスポーツ界と深く結びついていることをさりげなく伝えています。

さらに1フロア上がると、最上階はロレックス認定サービスセンター専用のスペースとなっており、ロレックスが品質に対して揺るぎないこだわりを持っていることを象徴しています。室内に足を踏み入れるといくつもの小さな作業台が並び、奥にはガラス越しに工房が見えるようになっています。そこでは時計職人や研磨職人、技術者たちが、ブレスレットの微調整からムーブメントのオーバーホールに至るまで、細心の注意を払いながら作業を進めています。この精巧な職人技と高度な技術には思わず引き込まれました。ロレックスの時計が分解され、再び組み上げられていく様子を目の当たりにするのは魅了されるのです。

ここは間違いなく訪れるべき場所です。もしまだ足を運べない方もご安心を。Instagramでこの空間を特別にご紹介するので、ぜひチェックしてください。このブティックはロレックスの豊かな伝統と現代的なラグジュアリーリテールのコンセプトが見事に融合した空間となっています。それはまるで、このブティック限定のオリジナルカクテル“1905”のようなもの。ロンドンでの創業と、その絶え間ない進化を讃えるのにふさわしい存在です。

このブティックは、3月14日(金)にロンドンのオールド・ボンド・ストリート34番地で正式にオープンしました。所在地、営業時間、連絡先などの詳細情報はこちらからご確認いただけます。それでは、新たに誕生したロレックスのロンドンの新拠点をご覧ください。

パテック フィリップはこの意匠を新作でも継続するようだ。

超高額なスモークドサファイアダイヤル搭載モデル、Ref.5316Pに心を奪われつつもトゥールビヨンやミニッツリピーターは必要ない。そんな人に朗報だ。同じビジュアルを、永久カレンダーとレトログラード式日付表示だけで楽しめるモデルが登場した。新作Ref.6159G-001は、あのスモークダイヤルをホワイトゴールド製ケースとホブネイルベゼルの組み合わせで実現している。

Patek ref. 6159G-001
パテックフィリップスーパーコピー代引き 激安のムーブメントには、レトログラード式日付表示に加え、曜日、うるう年サイクル、月をそれぞれ9時、12時、3時位置の窓で表示する自動巻きCal.26-330 S QRを搭載。パワーリザーブは約45時間で、2万8800振動/時で駆動する。とはいえ、この時計でもっとも目を引くのはやはりその全体的な美しさだろう。おそらく多くの人にとって意外性すら感じさせる要素である。ホワイトゴールド製ケースのサイズは直径39.5mm、厚さ11.49mmとなっている。

Patek 6159G
Ref.6159G-001は、パテック フィリップから登場したとは思えない、まさに意表を突くような1本である。まず特筆すべきは、ムーブメントを見せつつも視認性を確保した驚くべきスモークドサファイアダイヤルの採用だ。そしてホワイトゴールド製ケースにはホブネイルベゼルが組み合わされているが、複雑機構を備えたパテックのモデルでこの意匠を見る機会はあまり多くない(思い浮かぶのは、永久カレンダーとホブネイルベゼルを備えたRef.5139くらいだろう)。なお、Ref.6159G-001の価格は1866万円(税込)である。

我々の考え
もし現代の時計のなかで、これまで実物を見たことがないが、ぜひ触れて、撮影して、じっくり観察したい1本を挙げるとすれば、それは間違いなくパテックのRef.5316/50Pだろう。レトログラード式日付、永久カレンダー、ミニッツリピーター、トゥールビヨンという超絶複雑機構に、スモークドサファイアダイヤルという意外性あるデザインを掛け合わせた“怪物”的存在だ。そして今回の新作は、まさにそのモデルから強くインスピレーションを受けたものに思える。いわば“怪物の息子”とも呼ぶべき存在で、より親しみやすい仕様ながらパテックのハイエンド要素を多く備えている。ムーブメントには、2016年から採用されているキャリバーが搭載されている。

このキャリバーを搭載した直近のモデルは、昨年発表された希少なハンドクラフトモデルのRef.5160/500Rである。実はこの時計、私は撮影する機会を逃してしまった(そしてその見事な彫金を見られなかったことを今も後悔している)。時間に制約があったこと、そしてやや変わったケースデザインが個人的にしっくりこなかったことが理由である。

だが今回のRef.6159G-001で使われているクル・ド・パリ装飾のベゼルは、予想以上に美しく仕上がっていた。このデザイン要素にはあまり引かれたことがなかったが、ここではまったく別物のように感じられる。ちなみにこの意匠を採用した最新のモデルのひとつがRef.6119Gであり、私はこのモデルに関しては、ホブネイルベゼルを省いたほうがすっきり見えるのではないかと考えていた(お気に入りだったRef.5196Pの後継ということもあり)。とはいえ好みは人それぞれであるし、この意匠は1932年から続く由緒あるデザインなのだから、そろそろ自分も“100年近く前のセンス”に歩み寄るべきなのかもしれない。本日行われるアポイントでは、真っ先にこの時計に向かうつもりだ。そしてきっと、ホブネイルベゼルに対して“申し訳なかった”と素直に感じることになるだろう。それほどに、この時計は素晴らしい仕上がりであると感じている。

基本情報
ブランド: パテック フィリップ(Patek Philippe)
モデル名: レトログラード日付表示針付永久カレンダー(erpetual Calendar Retrograde Date)
型番: 6159G-001

直径: 39.5mm
厚さ: 11.49mm
ケース素材: ホワイトゴールド
文字盤色: ブラック・グラデーションのグレー・メタライズ・サファイヤクリスタル
インデックス: アプライド
夜光: ホワイトゴールド製のファセット仕上げバトン型アワーマーカーにホワイトの蓄光塗料を塗布
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ファブリック柄のコンポジット素材、カラーはブラック。ホワイトゴールド製の特許取得済み3ブレード・折り畳み式バックルを採用

Patek ref. 6159G-001
ムーブメント情報
キャリバー: 26-330 S QR
機能: 時・分・秒表示、レトログラード式日付表示、曜日・うるう年サイクル・月表示、ムーンフェイズ
直径: 28mm
厚さ: 5.36mm
パワーリザーブ: 最小35時間~最大45時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 30

新しく生まれ変わったヴィンテージCal.135、そして160年にわたるゼニスの精度追求。

ゼニス G.F.J.、ブランド創業者に捧げるヴィンテージクロノメトリックの復活

ブランドの歴史に詳しいなら、文字盤上の3文字とシンプルなモデル名の意味はすぐに理解できるだろう。ジョルジュ・ファーブル=ジャコ(Georges Favre-Jacot)を知らなければ少々首をかしげるかもしれないが、それでもまったく問題はない。要するにこの名前はゼニスの歴史、すなわちエル・プリメロ誕生以前の時代に深く根ざした姿勢を示しているのである。

A Zenith GFJ
2022年、ゼニスはカリ・ヴティライネン(Kari Voutilainen)氏と協力し、復元されたヴィンテージのCal.135-Oを搭載した10本限定の時計を製作した。当時のこれらに搭載されたムーブメントは、1950年代初頭にニューシャテル天文台コンクールに実際に出品された個体である。多くのコレクターは、このきわめて生産数の少ない限定モデルを、ここ数十年で最良のタイムオンリーゼニスと見なしている。38mmのプラチナケース、コンブレマイン製のギヨシェダイヤル、そしてヴティライネンによる手仕上げのムーブメントを備えたこのリリースは大きな成功を収め、ゼニスのクロノメーターヘリテージを時計界に強く印象づけた。

今回発表されたG.F.J.において、ゼニスは2022年の限定コラボレーションをさらに発展させた。このストーリーは完成した時計そのものと同様に、ムーブメントにも深く関わる内容である。

An old Zenith ad
1945年、ゼニスの技術部長であったチャールズ・ジーグラー(Charles Ziegler)は、エフレム・ジョバン(Ephrem Jobin)という時計師に、天文台コンクールの頂点を目指せるクロノメータームーブメントの開発を命じた。ジョバンは、独自の輪列配置を採用した13リーニュのCal.135を設計した。オフセンターに配置されたミニッツホイールによって、大型のバイメタル切りテンプ、“ギョームテンプ”(ブレゲひげゼンマイ付き)と大径の香箱が搭載可能となり、等時性と精度が向上した。最終的に、この“プレミアム”仕様であるCal.135-Oは天文台クロノメーターコンクールにおいて230以上の部門別最優秀賞を獲得。時計史上、最も多くの受賞歴を誇るムーブメントとなった。

“ノーマル”バージョンであるCal.135は、1948年から1962年にかけて約1万1000個が製造された。基本的には、Cal.135-Oと同一のムーブメントである。天文台コンクール用にはゼニスの精鋭時計師であるシャルル・フレック(Charles Fleck)やルネ・ギガックス(René Gygax)らが、Cal.135のなかから優秀な個体を厳選し、調整・レギュレーションを施すことでCal.135-Oへと仕立て上げたのである。

A Zenith GFJ movement
The Zenith GFJ buckle
The Zenith GFJ dial macro
2025年に登場する新作G.F.J.において、ゼニスは1962年以来初めてこの伝説的キャリバーを製造することとなった。新Cal.135は、オリジナルの設計とサイズ(直径13リーニュ、厚さ5mm)を忠実に踏襲しつつ、ごくわずかに再設計が施されている。1万8000振動/時(2.5Hz)で駆動する手巻きムーブメントは、オリジナルの約40時間に対して約72時間のパワーリザーブを実現。トップセコンド機構を備えつつCOSC認定を取得しているが、実際にはCOSC基準を大きく上回り、日差±2秒以内の高精度を誇る。ムーブメントの受けには、ル・ロックルにあるゼニス本社の赤と白のレンガ造りのファサードをモチーフとした、特徴的な“ブリック”ギヨシェスタイルで飾られている。

G.F.J.は直径39.15mm、厚さ10.5mm、ラグからラグまでが45.75mmのプラチナケースに収められており、程よいサイズ感を備えた現代的な時計である。サイズこそ現代的だが、段差のついたベゼルやラグにはヴィンテージから着想を得たディテールが随所に見られる。

A Zenith GFJ dial macro
文字盤中央にはゴールドのパイライト(黄鉄鉱)を自然にちりばめた、深いブルーのラピスラズリが配されている。アウターリングにはムーブメントと同様、“ブリック”ギヨシェ模様が施され、6時位置に配された大型のスモールセコンドはマザー・オブ・パール製で、豊かな質感とコントラストを生み出している。面取りされたホワイトゴールド製のアワーマーカーと、40個のホワイトゴールド製ビーズによるミニッツトラックはすべて手作業で植字され、スリムなWG製の針が全体のデザインを引き締めている。

G.F.J.は160本限定で、価格は695万2000円(税込)。ゼニスブティックおよび正規販売店限定で、現在予約注文を受け付けている。

我々の考え
ヴィンテージ愛好家であり、Cal.135のファンとしてはどうしてもこのムーブメントにばかり目がいってしまう。何十年も前のムーブメントを復活させることは決して容易なことではない。多くの場合、当時の製造用工具は失われ、キャリバーに精通した時計師たちもすでに現役ではない。ブランドはこうした状況のなかゼロから開発を始めなければならず、そのR&D(研究開発)コストは莫大なものとなる。そうした事情を理解したうえで、ゼニスが最も歴史的に重要なタイムオンリーキャリバーを正統な形で蘇らせたことに、心から敬意を表したい。

A Zenith GFJ
時計自体の仕上がりも素晴らしい。明らかにG.F.J.は、内部に搭載されたムーブメントに最大限の注目を集めるためにつくられたプレミアムな製品である。もしゼニスが、よりシンプルで手ごろな価格のステンレススティール製でこの“新しい”キャリバーを発表していたなら、ほかのWatches & Wondersモデルに埋もれてしまったかもしれない。そうした仮想的なバージョンのほうが、より幅広い時計愛好家にとって商業的には魅力的だった可能性はある。しかし、今回ゼニスが選んだアプローチには大きな意味があると感じる。

G.F.J.は、いわば“ハローモデル”である。最終的に購入することになる160人のコレクターは、間違いなく大いに満足するだろう。そして残るゼニス愛好家やゼニスに興味を持つ者たちは、次の機会を待つことになる。ブランドが60年以上の時を経てムーブメントを復活させるのは、160本を製作して終わるためではない。Cal.135を搭載した新たなモデルが今後登場する可能性は高い。もし、ゼニスの現代Cal.135の第1弾かつ最も強いインパクトを放つバージョンを手に入れたいなら、このモデルこそがまさにそれだ。G.F.J.は細部まで緻密につくり込まれており、ダイヤルも実に美しい。Watches & Wonders 2025における、最も注目すべきヴィンテージインスパイアの新作のひとつとなるに違いない。