ファンに人気のある時計にいくつか手を加えたことで、

パルミジャーニ・フルリエは今絶好調だ。その理由は、パルミジャーニが2週間前にスティール製と18Kローズゴールドの両方で発表した、新しい42mmのトンダ PF スポーツ クロノグラフ(それと3針のトンダ PF スポーツ オートマティック)を見れば一目瞭然だ。このクロノグラフはトンダ GTシリーズよりも薄いが、ほかのトンダ PF クロノグラフよりも(12.4mmに対して)12.9mmとわずかに厚い。このラインの真髄ともいえるケースシェイプとラグは、これまでのPF クロノグラフによく似ている。全体的な変化はかなり小さいが、せっかくうまくいったその成功になぜ手を加えてしまうのか?

グイド・テレーニ(Guido Terreni)氏がパルミジャーニ・フルリエのCEOとして指揮を執りはじめたこの数年のあいだで、ブランドに新しい息吹が吹き込まれたように思える。まあ今や時が経っても色あせないブルガリ オクト フィニッシモが発売されたとき、テレーニ氏がブルガリの指揮をとっていたのだからそれほど驚かないが、それでも2回やって2回とも成功するのは当たり前ではない。

どういうわけか、テレーニ氏とチーム(自身の名を冠したミシェル・パルミジャーニ氏を含む)の手により元の地位へと返り咲き、ブランドは再び脚光を浴びることになった。テレーニ氏はブランドが一本調子にならないよう、ブランド全体のラインナップを充実させることを意識していると話してくれたが、トンダコレクションは最もポテンシャルが高いゆえに改善が急務だった。

彼は間違っていなかった。2020年にトンダ GTを、2021年にトンダ PFとしてトンダシリーズを再デザイン・再発売させたことで、パルミジャーニに対する市場の関心を再び高めた。その理由は、新しいスポーツモデルのようにリリースされるたびに明らかになっている。

トンダ PF スポーツ クロノグラフに焦点を当てると、一見して最も明らかな変更点はストラップで、これはトンダとトンダ GTモデル(および少数の変わったトンダ PF)で最もよく見られるオプションである。この場合、時計には手作業で縫い合わせたコーデュラ加工のラバーとデプロワイヤントクラスプが付属。ストラップはケースのラグのあいだにシームレスに収まっているが、ストラップを交換するために必要に応じて裏側から取り外すことができる。

夏にメタルブレスレットからラバータイプに交換するのが好きな人にとっては、このオプションはかなりうれしいものだろう。一方、私は夏のベタベタした時期を金属製のブレスレットで過ごしているため、パルミジャーニチームに質問をしてみた。新しい時計にトンダ PFのメタルブレスレットを付けることはできるか? と。はい、と言われたが、でもそれは彼らが目指していたスポーティさのポイントに合っていたのだと思う。

時計内部にはCOSC認定ムーブメントのPF070を搭載する。このムーブメントは、これまでのトンダ PFクロノグラフに搭載されていた時・分・スモールセコンド、日付表示、クロノグラフを備えた完全一体型のクロノグラフであるパワーリザーブは従来どおり(約65時間)で、振動数(3万6000振動/時)、直径、厚さ、石、部品点数なども以前のものと同様だ。手作業で仕上げられたエッジの面取り、コート・ド・ジュネーブ装飾の見栄えも美しい。クロノグラフのプッシャーは均等な押し心地で、作動が成功したことがわかる満足感がある。実際のところ、(厳密にこれはPF070/6710だが)唯一の違いは(フェラーリ・250GTOにインスパイアされた)異なるローターであり、それ以外はすべて同じである。

外装の仕上げも素晴らしく、ポリッシュ仕上げとサテン仕上げがされたSSまたは18KRGを用意。しかしブレスレットがもたらす“輝き”がないストラップのほうが、そのすべてがもう少し静かでエレガントに感じられる。

もうふたつある大きな変化は、ダイヤル側から見てよくわかるものだ。おそらく、この時計の最も“スポーティ”な要素は、パンダダイヤルへの移行だろう。文字盤のメイン部分にはブランドのクル・トリアンギュレールパターンのギヨシェを施しているが、インダイヤル(ランニングセコンド、30分積算計、12時間積算計)はよりマットなブラックを採用している。一方、ベゼルのローレット加工には65カ所の切り込みがある。ブランドはこの切り込みが光をより効果的に演出し、時計を少し大胆にしていると述べている。正直にいうと、私自身は気づかなかった。オリジナルのトンダ PFベゼルの切り込みの正確な数や美的感覚まで知っている人がどれだけいるだろう?

針はケースの色と一致しているが、実際にはSSバージョンと同じ金属ではない。実際には、18Kゴールド製ロジウムメッキのスケルトンデルタ針を使用しており、上部にブラックの夜光塗料を塗布している。またクロノグラフ針にはロジウムメッキのSSが使われている。RG製ケースの場合は針もRG製だが、クロノグラフ針はRGメッキのSS製となっている。すべての夜光はブラックのスーパールミノインデックスと調和している。

おそらくいちばん目立つのは、残念ながら日付表示窓だろう。私の好みでは、このブランドは日付ウィンドウの色を文字盤に合わせて、よりよいバランスを保つことができたはずなのだ。

ここで少し触れておきたいのは、このブランドがリリースした3針のトンダ PF スポーツ オートマティック 40mmの日付が、ダイヤルの6時位置にあるということだ。仕上げは同様に全体的に素晴らしいが、クロノグラフ特有のスポーティさが欠けている。ドレッシーではないが、スポーティともいい難い時計だ。

それではこれらの新しいスポーツモデル、特にクロノグラフについて詳しく説明しよう。SS製の場合、価格は415万8000円だ。ただRGの場合、720万5000円(ともに税込)とかなり高くなる。ヴァシュロン・コンスタンタンが今年初めに発表した新作、パンダダイヤルのオーヴァーシーズ・クロノグラフが510万4000円(編集注記:発表時は税込で462万円)であるのと比べると、スティール製ウォッチとしては高額である。ただしパルミジャーニの時計は年間の生産本数がはるかに少ないため、個人の好みに左右される面もある。

価格に対する個人的な感情はおいておいて、この時計はトンダ PFコレクションが発展する興味深い姿を表しているように思う。いい製品が軌道に乗ったとき、ブランドが意識しているように見えるのだ。その優れたアプローチとは、このブランドが狙っているような複雑機構の開発(毎年、新しくて斬新なコンプリケーションを発表すること)であり、同時に拡大していく顧客層に幅広い選択肢を提供するために、ラインナップの隙間を静かに埋めているようだ。お金さえあれば、パルミジャーニはトンダ PFを欲しがるすべての人のために何かを用意しようと一生懸命努力している。これに腹を立てるのは難しいのだ。

針のない、まるで魔法使いの水晶玉のような時計をご紹介しましょう。

フランス発の独立系時計メーカー、トリローブ(Trilobe)が2018年のデビュー以来作り続けている、小さくて針のない不思議な時計に親近感を抱いています。回転するディスクとリングで時間を知らせるという彼らの試みは実にユニークで、それが理由で僕たちはこの時計を取り上げることになりました。あまりに気に入りすぎて、同ブランドのヌイ・ファンタスティック(Nuit Fantastique)のHODINKEE限定モデルでコラボレーションまで果たしたほどで、僕は妻に購入の許しを得ようと半ば強引に説得したのを覚えています(悲しいことに、僕がそのアイデアをほのめかすや、妻は冷ややかな視線を送ったわけですが)。その戦いに敗れたとはいえ、僕は幸運にも、より前衛的なモデルであるユヌ・フォル・ジュルネ(Une Folle Journéeはフランス語で“荒ぶる1日”の意味)と1週間ともに過ごし、このワイルドなデザインをまとう時計が日常をともに過ごすに相応しいか、動画に収めることができました。

ユヌ・フォル・ジュルネを見てまず気づくのは、多くの現代の時計とは異なり、針がないことでしょう。その代わり、スケルトンダイヤルに3つのエキセントリックなリングがあり、いちばん大きなリングが時、真ん中のリングが分、そしていちばん小さなリングが秒を表しています。慣れるのに少し時間がかかりましたが、これらはすべて反時計回りに回転しています。それらを支えるのは、リング下の歯車に取り付けられた異なる高さの軸です。

これらの浮遊するリングを保護するため、この時計はケースからなんと10.2mmも突き出た巨大なドーム状サファイアクリスタル風防を備えています。これは最近の時計ではあまり見られないレベルの、奥行きと立体感を演出しています。基本的なコンセプトは、よりフラットなニュイ・ファンタスティックと同じですが、このモデルではリングが実際に浮いているかのような錯覚を起こさせます。誰もこんなの見たことないと僕は断言できますよ。

ここまで聞けば、この時計はかなり変わり種に思えますが、グレード5のチタンケースは実のところ伝統的なデザインを踏襲しています。ポリッシュ仕上げでミドルケースにはサテン仕上げが施され、通常の3時位置にリューズを備え、厚さはわずか10mm(風防を除き)、直径は40.5mmです。現代の基準からすれば、このサイズは多くの人にとって着用可能なサイズであり、それこそがこのワイルドな時計がとても着用しやすい理由なのです。確かに、サファイアクリスタルは少し出っ張っていて、フラットなタイプに比べると物にぶつけやすいのですが、それ以外はほかの時計と同じようにレザーストラップで着用できます。また僕はいつも何かに時計をぶつけることを心配しているので、ユヌ・フォル・ジュルネを身につけているときはすべての時計と同程度の慎重さをもって扱いました。

ユヌ・フォル・ジュルネと過ごした1週間について、まだまだお伝えしたいことがあるのですが、この時計について説明を聞くよりも、実際に時計を眺めることほど楽しいものはありません。ですから、この魔法使いの水晶玉のような不思議な動きを動画でぜひ確かめて欲しいのです。

ブリュー ヴィンテージにインスパイアされたふたつの時計で対決。

手頃な価格のハイブリッドメカクォーツウォッチが、ふたつのヴィンテージの価値を味わわせてくれるが、どちらに軍配が上がるだろう?

私はカッコいい“ハイ/ロー”スタイルが好きだ。本当に大好きなのだ。ジーンズにTシャツ、そしてゴールドのクロノグラフ(欲を言えばパテック 5004Jのようなコンプリケーションがいい)。5004を所有することはないだろうが、男には夢がある。

リストのもうひとつにはロレックス Ref.6263 デイトナのイエローゴールドか、あるいは金無垢のRef.6239がある。正直に言おう。私の史上最高の憧れの時計リストトップ5にはRef.6264 “ジョン・プレイヤー・スペシャル”が入っている。本当に、ゴールドのクロノグラフにブラックギルト文字盤の組み合わせに勝るものはない。

その好例が、PVDゴールドコーティングの316Lステンレススティール製ケースにブラックダイアル、そしてハイブリッドメカクォーツムーブメントを搭載したブリュー・メトリックだ。もちろん本物の18Kゴールドではないが、475ドル(約6万8000円)という価格は、ここ1週間ほど私にとっては痒いところに手が届く値段であり、予算内でなんとかやりくりすることができるものだった。また、この時計はオマージュを適切な方法で表現しており、愛すべきデザインのよさを示唆しながらも独自の個性を放っている。

私はブリューの本拠地であるニューヨークに住んでおり、創業者のジョナサン・フェラー(時計愛好家のあいだでは有名人だ)に会っていたこともあって、ブリューウォッチは以前からよく目にしていた。このブランドが目指している大きなポイントのひとつは、手の届きやすい価格もさることながら、似たような美的感覚に流されがちな時計のなかでブリューを際立った存在としている、まとまりのある独特のデザイン言語にある。それは外部からのインスピレーションを取り入れた場合であっても同様だ。

ブリューの初期のレトログラフは、ジェームズがOne to Watch記事で取り上げたように、エスプレッソショットタイマーという目的に特化したツールだった。(ジェームズがハンズオンで取り上げた)メトリックは、1970年代のヴィンテージオメガの“ジェダイ”クロノグラフに近いモデルだが、ケースとブレスレットの継ぎ目のないデザインで、ヴィンテージゼニスのエル・プリメロ “TVケース”のような丸い文字盤のデザインでもある。ケースは幅36mm、長さ41.5mm、厚さ10.75mmとバランスがいい。理論的には横から見ると“小さい”のだが、これはそうしないとブレスレットとケースの形状が手首を支配しすぎてしまうため必要なのだ。

内部にはセイコーインスツルメンツ(SII)のCal.VK64A メカクォーツムーブメントを搭載している。スムーズなスイープを実現するメカニカルクロノグラフモジュールと、時計全体を駆動するクォーツムーブメントが組み合わされたものだ。

特にヴィンテージ・ゴールドクロノグラフの雰囲気を楽しみたいが、本物には手が出ないという人には、この価格でこの時計に勝るものはないだろう。それとも、この時計に打ち勝つことのできるものがあるだろうか?

私の黒塗り時計好きはよく知られているし、そのことについてとやかく言うつもりもない。だが、そのなかの最高峰はオルフィナが製作したポルシェデザイン クロノグラフ1であることは言っておこう。ヴィンテージの“コーティング時計”コレクションを作ることを夢見ながら、この1年間、何度もそのオリジナルウォッチの購入を検討した。価格はロレックスのどのデイトナよりも、ましてやヴィンテージのゴールドデイトナよりも遥かに手が届きやすいが、ここ数年、私は大きな買い物をするために貯金をしていて手に取ることはなかった。しかしブラックコーティングが施された逞しいスティールケース、経年変化したイエローの夜光、そして印象的なオレンジのクロノグラフ針への思いは変わっていない。

ここで私は問題に直面している。というのも、ブリューがブラックPVD加工を施したメトリックで、オマージュデザインと同じ思慮深いタッチを与え、素晴らしい仕事をしてくれたからだ。コピーではなく模倣がお世辞の最たるものであるならば、ポルシェデザインは顔を赤らめるはずだろう。この時計は豪華装備の新型ポルシェデザイン クロノグラフ1の市場と共食いすることはないだろうが、世の中には新作やヴィンテージのポルシェデザインウォッチには手が届かないものの、私と同じようなものを愛する人は大勢いる。

このふたつのどちらかを選ばなければならないのは、確かに難問だ。公平に見て、ブリュー・メトリックの5つのデザインはどれもしっかりしているが、今回は真っ向勝負で、私は好きなほうを選ぶつもりだ。正直なところ、この原稿を書いている時点でもどちらが勝つかわからない。

というわけで、以下のようにひとつの時計が単体としてどれだけ素晴らしいかはさておき、ディテールのいくつかに取り組んで、地球上で最も分析麻痺に悩まされる人間のひとりある私が勝者を選べるかどうか見てみよう。

まずは私が最も注目する文字盤から見ていこう。ブラックPVDのメトリックでは、深みのあるマットブラックの文字盤に真っ白な文字が浮かび上がり、ポルシェデザインのクロノグラフ1のフォントに似た印象的な印象を与える。また、オレンジの秒針と積算計は、インスピレーションの源となった象徴的なオレンジのクロノグラフ針とマッチしている(すべてのオリジナルモデルがインダイヤルにこれらの針を備えていたわけではないが、それは些細なことだ)。針とアワーマーカーに施された蛍光塗料もヴィンテージウォッチに見られるようなクリーミーな色合いだ。

黒の文字盤はメトリックの全体的なデザインには合うが、ヴィンテージのデイトナにインスパイアされた時計には必ずしも合わない同じフォントが使われている。この場合、それはいいことかもしれないし悪いことかもしれない。私はブリューが独自のデザイン言語を体系化したことに評価しているが、ブラックのメトリックを見たあとにこのフォントを見ると、この時計がアイコンの引用をいかにうまく成し遂げたかを考えさせられる。しかし文字盤はブラックとゴールドのツートンカラーで、それほど煩雑な印象はない。“ジョン・プレイヤー・スペシャル”の雰囲気を出すために外側のトラックをゴールドかシャンパンにしたらどうだろうか。もしかしたら窮屈すぎるかもしれない。いずれにせよ、私は勝者を手に入れた。ブラックに1点だ。

ブレスレットはどちらも素晴らしい。デザインは同じで、ブリューではピンを押し出してリンクを簡単に外すための工具と説明書まで付属している。 これは時計コミュニティに初めて参加する人が購入する可能性のある手頃な価格の時計にはありがたい機能だ。私はいつも工具を置き忘れてしまうので、これも助かる。残念なことに腕毛がブレスレットに絡まるというトラブルがあったが、これは生まれ持ってのことであるし、ほかの時計でもよくあることだ。どちらのブレスレットもサテン仕上げとPVDコーティングが施されている。

ブラックPVDは指紋が目立ちやすく、私はブラックの時計が大好きなのだが、ゴールドモデルのサテン仕上げのブレスレットは光を楽しく受け止めてくれる。そう、これは本物のゴールドではないのだが、いいものを台無しにするつもりはない。ゴールドに1点だ。

着用感に関しては、何よりも“雰囲気”で選ぶのがいちばんだ。理論的には、どちらの時計も同じように着用できる。ケースも同じ。ムーブメントも同じ。文字盤のレイアウトも同じ。だから、自信と威勢のよさが問われるような気がする。私にはそれがあるだろうか?

私のコレクションにはもうひとつ、カシオのワールドタイムというフルゴールドトーンの(ゴールドではない)時計がある。むかしは気に入っていたのだが、所有してから数週間後にはあまり身につけなくなった。50ドル程度なら大きな損失ではないが、派手なゴールドの時計に対する私の理論的な愛がここで試されることになった。私はゴールドのロイヤル オークを毎日身につけ、ブレスレットとケースの強い“しなり”を金属の塊として手首につけると信じたい。だが、この時計を身につけてみるとそうとは思えない。残念ながら黒に1点だ。

そのほかにも検討する価値のある小さなディテールがたくさんある。各ダイヤルには3時位置に小さなレリーフロゴがあり、さりげないが、私はゴールドメトリックのツートーンダイヤルのほうが好きだ。ブラックメトリックのシルバーのサンドブラスト仕上げのプッシャーとリューズはユニークな方法で視覚的なコントラストを高めている。どちらの時計も表面はサテン仕上げとポリッシュ仕上げのコンビネーションだが、ゴールドメトリックはゴールドコーティングのおかげで光をよりよく受け止め、本当に輝いている(文字盤のインデックスも同様だ)。一方、ブラックのコーティングも周囲の環境を少し拾って色を照り返すが、タフで精悍な印象は変わらない。

しかし時計の全体的なベースが同じであるため、ディテールからこのふたつの勝者を選ぶことはできなかった。私はこれを引き分けとし、ブラックメトリックに軍配を上げたい。

金無垢腕時計は、高級時計の世界において最高峰。

金無垢腕時計の魅力と注意点を解説|おすすめ・人気モデルも紹介。

金無垢腕時計は、高級時計の世界において最高峰のステータスシンボルとして位置づけられています。ステンレスやチタン製の腕時計とは一線を画す輝きと重量感は、身につける人の品格を格段に引き上げてくれます。

しかし、高額な投資となる金無垢腕時計を選ぶ際は、素材の特性や資産価値、メンテナンス方法など、知っておくべきポイントが数多くあります。

本記事では、金無垢腕時計の魅力や人気モデル、購入前に押さえておきたい注意点などを解説します。特に初めて金無垢時計の購入を検討している人は、ぜひ参考にしてください。

金無垢腕時計とは?

金無垢腕時計とは、時計のケース(本体)やブレスレット(バンド)部分に、金の含有率が75%以上(18金)の金合金を使用した時計を指します。表面だけに金メッキを施したものとは異なり、素材自体が金で構成されているため、「無垢」という表現が使われています。

一般的に高級時計メーカーでは、18金(75%)の金を使用することが多く、これは純金(24金)よりも硬度が高く、時計の素材として適しているためです。金の純度が高いほど価値は上がりますが、同時に柔らかくなるため、実用性とのバランスを考慮して18金が選ばれています。

金無垢モデルは、多くのブランドで最高級ラインに位置づけられており、限定生産されることも多いため、希少性の高いアイテムとなっています。

金無垢腕時計が人気の理由
金無垢腕時計は、単なる時計を超えた多面的な価値を持つアイテムとして、世界中の人から支持されています。ここでは、金無垢腕時計が人気の理由を紹介します。

高級感がある
金無垢腕時計は、他にはない圧倒的な高級感があります。金特有の輝きと重みは、身に着ける人に確かなステータスをもたらします。

この高級感は見た目の美しさだけではなく、金という貴金属が持つ歴史的価値や希少性によってさらに高められています。そのため、多くの経営者や著名人にとって金無垢時計は「成功の象徴」として選ばれてきました。

さらに、金の温かみを帯びた光沢はどんな光の下でも美しく映え、手元を上品に演出します。この輝きはメッキでは再現できない、天然素材ならではの特別な存在感です。

資産価値が高い
金無垢腕時計は、時計としての実用性だけでなく、素材そのものが資産価値を持つ点でも注目されています。金は世界的に通用する価値基準とされ、経済状況に左右されにくい安定した需要を誇る貴金属です。そのため、金無垢時計は単なる高級品ではなく、資産としての側面も備えています。

とりわけ有名ブランドの金無垢モデルは生産数が限られており、中古市場でも高値で取引される傾向があります。中には新品価格を上回る値段で売却される例も少なくありません。

近年は現物資産への投資意識が高まっていることから、美しさを楽しみつつ資産形成もできる金無垢時計を投資目的で購入する人も増えています。まさに「身に着けられる資産」としての魅力が評価されているのです。

ファッション性が高い
金無垢腕時計は、その美しさからファッションアイテムとしても高い価値を持ちます。

イエローゴールドは華やかで格調高い印象を与え、商談やパーティーといった特別な場面で存在感を放ちます。ホワイトゴールドは都会的で洗練された雰囲気を演出し、現代的なビジネススタイルにもしっくりと馴染みます。ピンクゴールドは温かみと優雅さを兼ね備え、カジュアルな装いにも上品さを添えてくれるのが魅力です。

どのカラーを選んでも、金無垢時計は着用者のファッションセンスを一段引き上げてくれます。さらに、幅広いスタイルに合わせられるため、1本持っていれば多彩なシーンで活躍できる頼もしい存在です。

希少性が高い
金無垢腕時計は、素材コストが高く、製造工程も複雑です。そのため、多くの時計ブランドにおいて、金無垢モデルは限られた数しか製造されません。

特に人気ブランドの代表的なコレクションでは、金無垢仕様は特別なラインとして扱われることが多く、入手困難になることも多くあります。この希少性が、金無垢腕時計の価値を一層高めているのです。

さらに、ヴィンテージモデルや限定版の金無垢時計は、時間が経つほど希少性が増し、コレクターズアイテムとしての魅力も高まります。

長期的に楽しめる
金無垢腕時計は、使い込むほどに独自の風合いが増し、年月とともに愛着が深まっていきます。金は経年変化によって購入時とは異なる落ち着いた輝きを帯び、持ち主だけが味わえる特別な魅力を生み出します。

さらに、適切なメンテナンスを施せば数十年にわたり使用でき、次の世代へ受け継ぐことも可能です。単なる道具にとどまらず、人生を共に歩むパートナーとして長く寄り添える点も、金無垢時計ならではの価値といえるでしょう。

金無垢腕時計の人気モデル
金無垢腕時計には、各ブランドが誇る名作や革新的なモデルが数多く存在します。中でも特に注目度が高く、多くの人から長く支持されている代表的なモデルを厳選して紹介します。

ロレックス コスモグラフ デイトナ (16523)

ロレックスのコスモグラフ デイトナは、世界的に最も知られるクロノグラフの1つです。その名はアメリカ・フロリダ州で開催される「デイトナ24時間レース」に由来し、モータースポーツと深い結びつきを持っています。

コスモグラフ デイトナ (16523)は、18Kイエローゴールドのケースにステンレススチールブレスレットを組み合わせたコンビモデルです。ケース部分に贅沢なゴールドを採用しており、白い文字盤とのコントラストがスポーティーさと上品さを兼ね備えた印象を与えます。

このモデルの魅力は、レーシングクロノグラフとしての高い実用性と、ゴールドならではの高級感が絶妙に調和している点にあります。すでに生産終了となっており、中古市場でのみ流通していますが、希少性の高まりとともに価格も上昇傾向を示しています。

ロレックス コスモグラフ デイトナ (16523)の商品詳細

ロレックス ヨットマスター (126621)

ヨットマスター (126621)は、ロレックスが独自に開発した18ctエバーローズゴールドを採用したモデルです。従来のピンクゴールドが抱えていた「経年による変色」という課題を克服した革新的な合金であり、長い年月を経ても購入時の美しい色合いを保ち続けます。

ケース径は40mmと現代的でスポーティーなサイズ感ながら、ゴールドの素材感が上品さを漂わせます。さらに、ブラウンのサンレイダイアルとの組み合わせは非常に洗練されており、カジュアルからビジネスまで幅広いシーンに対応できるのも魅力です。

ロレックス ヨットマスター (126621)の商品詳細

IWC ポルトギーゼ クロノグラフ (IW371482)

IWCのポルトギーゼ クロノグラフは、1930年代にポルトガルの時計商の依頼を受けて誕生した歴史あるコレクションの現代版です。中でもポルトギーゼ クロノグラフ (IW371482)は、18Kレッドゴールドケースを採用した金無垢モデルで、クラシックな魅力と最新技術が融合した1本といえます。

グレーの文字盤とレッドゴールドケースの組み合わせは非常に上品で、存在感のあるケースサイズながら薄型設計により装着感も快適です。シンプルで視認性の高いダイアルデザインは、ビジネスシーンにも自然に溶け込みます。

ムーブメントにはIWC自社製Cal.89361を搭載し、68時間のパワーリザーブを実現しています。高い精度と信頼性を誇り、実用性と美しさを兼ね備えた完成度の高いモデルです。

IWC ポルトギーゼ クロノグラフ (IW371482)の商品詳細

オーデマ ピゲ ジュール オーデマ (15056OR.OO.A067CR.02)

オーデマ ピゲのジュール オーデマは、創業者の1人ジュール・ルイ・オーデマの名を冠したクラシックなドレスウォッチです。ジュール オーデマ (15056OR.OO.A067CR.02)は、18Kローズゴールドケースを採用した金無垢モデルで、伝統的な手巻きムーブメントを搭載しています。

12時位置に配されたAPロゴの美しさと、ケース全体の洗練されたフォルムが最大の特徴です。39mmという控えめなサイズながら、薄型設計によってエレガントな存在感を放ちます。

搭載されるCal.2120/2800は、オーデマ ピゲの技術力を示す精緻な手巻きムーブメントです。自動巻きにはない巻き上げの感触や、薄型ならではのドレッシーな外観は、機械式時計好きにとって格別の魅力です。クロコダイルレザーストラップとの組み合わせも上品で、フォーマルなシーンにふさわしい1本といえるでしょう。

オーデマ ピゲ ジュール オーデマ (15056OR.OO.A067CR.02)の商品詳細

金無垢腕時計の注意点
金無垢腕時計は、素材の特性ゆえに注意すべき点も少なくありません。購入を検討する際には、あらかじめ注意点を理解しておくことで、長く満足して使い続けられます。

傷がつきやすい
金は比較的柔らかい金属であるため、ステンレスやチタンに比べて表面に傷がつきやすい特徴があります。日常のちょっとした動作や、机にぶつけたりドアノブに触れたりするだけでも細かな傷が増えていきます。特にブレスレット部分は擦れやすく、着脱時の摩擦でも徐々に傷が蓄積します。

また、金は衝撃にも弱く、強い力が加わるとケースのラグ(ストラップ取り付け部)やブレスレットのリンクが変形する恐れがあります。こうした損傷は見た目の劣化だけでなく、時計の機能面に影響を及ぼすこともあります。

さらに、金は熱伝導率が高いため、夏場の直射日光下では表面温度が上がりやすく、肌に触れる部分が熱を持ちすぎて火傷のリスクにつながることもあります。屋外で長時間着用する際には注意が必要です。

重量感があって疲れやすい
金は比重が高いため、金無垢腕時計はかなりの重量があります。同じサイズのステンレスモデルと比べると、2倍以上重くなることも珍しくありません。この重さは最初こそ高級感として魅力的に感じられますが、長時間の着用では手首に負担がかかります。

重量による快適さの感じ方には個人差があるため、普段軽い時計に慣れている人は、購入前に実際に試着して確かめるのがおすすめです。また、ブレスレットタイプよりも革ストラップのほうが総重量を抑えられる場合もあり、選び方次第で負担を軽減できます。

メンテナンスコストが高い
金無垢腕時計のメンテナンスは、一般的なステンレスモデルに比べて高額になる傾向があります。特に、オーバーホール時の部品交換費用は高くなりやすいです。金製の部品は材料費そのものが高いため、修理代も自然と上がります。

また、金は柔らかい金属のため、ポリッシュ(磨き直し)を繰り返すと徐々に素材が薄くなり、最終的には時計の寿命に影響を与える可能性もあります。

加えて、金無垢モデルは生産数が限られているため、交換部品の確保が難しいケースがあります。特にヴィンテージモデルでは部品がすでに製造されておらず、修理自体が困難になるリスクも考慮しなければなりません。

このような理由から、金無垢腕時計を購入する際には、本体価格だけでなく、将来的なメンテナンスや修理体制まで見据えて検討することが重要です。

カルティエが自身のウォッチメイキングについて伝えるイベントを世界巡回展として開催中。

カルティエ ウォッチ 時を超える」は、カルティエ・ウォッチメイキングにおいて重要な4つのビジョンについて体験できるというもの。
それは、「パイオニア精神」「フォルム」「デザイン」「美を支える技術」であり、4つに区切られたそれぞれのスペースで各ビジョンにまつわる理解を深めることが可能だ。
すでに予約がスタートしている本イベントは、完全予約制であるためゆとりのある空間で心ゆくまでカルティエ ウォッチの世界に浸ることができる。
カルティエ・ウォッチメイキングを4つのスペースで堪能
先述した4つのビジョンに対応したスペースは、まず最初にムービーエリアから始まる。カルティエ ウォッチのフォルムを学べるこのムービーは、ベルエポックのパリからスタートし、タイムトラベルするかのようにカルティエというメゾンの黎明期を垣間見ることができる。その次のエリアでは、カルティエが生み出してきた数々のシェイプを通して歴史も学べるという。
続く3つめのエリアでは、カルティエの代表的なアイコンウォッチが文化としてのデザインを語る。こうして様々なシェイプやデザイン、哲学を知ったのちに、それを可能にするサヴォアフェール(職人技)について体感できるエリアが最後に待っている。
僕が過去に書いたこの記事でも触れていることだが、カルティエのウォッチメイキングとはデザインやシェイプがまず先にあり、それを実現するために時計製造やサヴォアフェールの技術が高められたという背景がある。どこよりもウォッチメーカーでありながら、そのアプローチは真逆であるという唯一無二のメゾンがカルティエなのだ。その一端を体感できる本イベントは僕も何度か足を運んでしまうかもしれない。皆さんの枠を圧迫しないように気をつけるので、会場であったらぜひ気軽にお声がけください。
「TIME UNLIMITED – カルティエ ウォッチ 時を超える」
住所:東京都渋⾕区神宮前6-35-6
最寄駅 – JR⼭⼿線「原宿」駅徒歩2分、東京メトロ千代⽥線・副都⼼線「明治神宮前」駅直結
営業時間:12:00〜20:00(最終⼊場 19:30)
※9⽉21⽇(⽊)の12:00~16:00は貸し切りのためクローズ
⼊場料:無料(予約制)
※ご⼊場にはカルティエLINE公式アカウントより事前予約が必要。