オメガ×スウォッチのコラボレーションから生まれた、

オメガ(Omega)とスウォッチ(Swatch)のコラボレーションによって、2022年3月にスウォッチの時計コレクション“ムーンスウォッチ(MoonSwatch)”が誕生した。この時計が時計業界でも近年まれにみる大ヒットとなった理由は、高級時計ブランドとして知られるオメガの人気モデルであるスピードマスター ムーンウォッチ(以下、スピードマスター)のデザインを、スウォッチらしくクリエイティブにアレンジしたところにある。新開発のバイオセラミック製ケースにベルクロストラップを合わせたムーンスウォッチは、軽量でありながら耐久性と精度に優れ、高級ブランドのテイストを手軽に楽しめるクォーツ式クロノグラフとして世界の人々に腕時計の魅力を再認識させてくれた。

ムーンスウォッチに対する評判
ムーンスウォッチ発売当日の様子
初代ムーンスウォッチの広告戦略は極めて巧みでドラマチックだった。SNSやティザー広告、ニューヨーク・タイムズ紙への全面広告など、1週間ほど前から少しずつ情報を明らかにしていき、発売2日前にはじめて“ムーンスウォッチ”のコレクション名とビジュアルを公開。そして2022年3月26日(土)の発売当日は時計界にとってまさしく歴史的な1日となった。オンラインでは購入できないため、販売告知されたスウォッチストア前には世界中で熱狂的なファンが長蛇の列を作った。ニューヨークのタイムズスクエアには2000人近くが集まり、ロンドンでは安全確保のためイベントが中止された。また渋谷・原宿・心斎橋で販売される予定だった日本でも人が集まりすぎて近隣警察が出動し、3店とも発売延期の事態となった。

ムーンスウォッチ発売時の様子
社会現象ともなったこの世界的な熱狂により、スウォッチの2022年の売り上げは記録的なものとなった。ムーンスウォッチの販売数は100万本を突破し、スウォッチ グループ全体の売上高も前年比で4.6%アップ。スマートウォッチに押されぎみだった近年のスウォッチだが、新作発表のたびに繰り返される大行列は時計界全体にも自信を与え、業界の活性化にも寄与することになった。手ごろな価格と高感度なデザイン、良質なコンセプトと企画次第で、より多くの人々に時計の魅力を伝えられることをムーンスウォッチは証明したのである。

ムーンスウォッチのベースとなった時計、オメガの“ムーンウォッチ”とは
オメガ スピードマスター ムーンウォッチとは
オメガのスピードマスターは、1957年に誕生したクロノグラフ(ストップウォッチ機能付き)ウォッチである。堅牢性と視認性の高さが評価され、過酷な選抜テストを経て1965年にNASA(アメリカ航空宇宙局)の公式装備品に採用された。スピードマスターが“ムーンウォッチ”と呼ばれるようになったのは、何を隠そう1969年のアポロ11号による人類初の月面着陸に同行したことがきっかけだ。1970年には絶体絶命の危機にあったアポロ13号の乗組員たちを救い、その信頼性はさらに高まった。スピードマスターを装着することは、こうした人類史に残る偉業をオーナー自身が共有することと同義なのである。その歴史的背景と技術的な優位性から、時計愛好家が憧れる高級スポーツウォッチのひとつとなっている。

オメガ スピードマスター ムーンウォッチとは
ムーンスウォッチの成功は、スウォッチ グループの稼ぎ頭であるオメガの売上げにもポジティブな影響を与えた。同グループCEOのニック・ハイエック・ジュニア氏によると、ムーンスウォッチ発売後にオメガ ブティックでスピードマスターの売上げが50%増加したと報告されている。

ムーンスウォッチはスピードマスターのデザインコードを手ごろな価格に落とし込んだことで、多くの新規ユーザーを獲得した。この新しい顧客層がスピードマスターの伝説的ストーリーと機械式時計の魅力に興味を持つようになり、さらに知名度と人気を高めたわけだ。スピードマスター購入層がムーンスウォッチで満足し、スピードマスターを諦める事例はたとえあったとしても決して多くはなかったはずだ。

ムーンスウォッチを構成する3つの特徴
上記でも説明したように、ムーンスウォッチの記録的な成功の要因には、スピードマスターらしいデザインをスウォッチの価格帯に落とし込んだことが大きい。しかしそれ以外にも、スウォッチブランドならではの魅力もふんだんに盛り込まれている。ムーンスウォッチの特徴を順に見ていこう。

ムーンスウォッチの特徴1:オメガ ムーンウォッチをベースとしたデザイン
ムーンスウォッチとオメガ スピードマスター “ムーンウォッチ”
左からムーンスウォッチとオメガ スピードマスター “ムーンウォッチ”

操作ボタン類のガード役を担う右に張り出た左右非対称ケースは、先端に向かって内側に流れるツイストラグや42mm径のサイズを含めてオリジナルと酷似。凹型のインダイヤルや夜光付きインデックス&時・分針などの文字盤デザイン、タキメーターベゼル、ドーム型風防も、スピードマスターの基本的なデザインコードを忠実に再現している。もちろん12時位置やリューズ先端のロゴはオメガとスウォッチの併記となり、オリジナルの手巻きムーブメントに対して電池で動くクォーツ式ムーブメントのためインダイヤルの配置や役割も異なるが、初代ムーンウォッチ(スピードマスター第4世代)と同じ“Dot Over 90”(90の上にドット)と呼ばれるタキメーターデザインを踏襲するなど実に芸が細かい。

ムーンスウォッチの特徴2:高い軽量性と耐傷性、環境への配慮まで実現したバイオセラミック
ムーンスウォッチのサイドビュー
高級時計でよく使用されるセラミックは耐傷性が高い一方、衝撃に弱いという欠点がある。それを補うために2021年、スウォッチはトウゴマの種から抽出したヒマシ油が原料のバイオプラスチックをセラミックに加え、環境負荷の少ないバイオセラミックを開発して特許を取得。セラミックの優れた硬度を保ちながらバイオプラスチックの柔軟性と耐衝撃性を兼ね備える、軽量な複合素材を作り上げた。ムーンスウォッチの各モデルにも同素材は使用されており、従来のプラスチックより高級感あるマットな質感がプロダクトとしての質感をアップさせている。

ムーンスウォッチの特徴3:それぞれにテーマが設けられた豊富なカラーバリエーション
ムーンスウォッチのカラーバリエーション
たとえば初代ムーンスウォッチには太陽系の惑星の特徴を反映した11種類のカラーバリエーションがあり、2023年から2024年にかけて一世を風靡したミッション トゥ ムーンシャイン ゴールドは満月に着想を得たテーマをクロノグラフ秒針に落とし込むことでそれぞれに特別な意味と魅力を持たせた。また、裏側の電池カバーまでテーマに合わせてデザインするなど、こだわりはディテールの隅々に行きわっている。1度逃せばもう手に入らないという希少性、その一方でコンプリートも可能な手の届きやすい価格設定と相まって、コレクター魂が強く刺激されるのだ。ここには、スウォッチブランド的なバリエーション展開のノウハウが生かされている。

ムーンスウォッチのケースバック
ムーンスウォッチのケースバック
ムーンスウォッチまとめ。初代からミッション トゥ アースフェイズまで
スウォッチ×オメガによる初代ムーンスウォッチ
2022年3月の初代コレクション誕生からわずか数年で、ムーンスウォッチのバリエーションは驚くほど増えた。太陽系の惑星をテーマにした初代コレクションに続き、ミッション トゥ ムーンシャイン・ゴールドやスヌーピーのムーンフェイズモデルなど、天体にまつわる魅力的な新作を次々と発表。オメガとスウォッチのコラボレーションの可能性は、宇宙のように無限に広げっている。

初代ムーンスウォッチ11モデル
ミッション トゥ ザ サン(Mission to the Sun)

ムーンスウォッチ ミッション・トゥ・ザ・サン
明るくイエローに輝く太陽をモチーフにしたモデル。太陽光線を模したサンレイ仕上げという伝統的な装飾を施したダイヤルには、鮮やかなゴールドカラーをあしらった。各指針やタキメーター目盛りにはオレンジを組み合わせ、強烈な太陽のエネルギーを表現した。インダイヤル、タキメーター、ストラップのスタイリッシュなホワイトが好相性。

ミッション トゥ ザ マーキュリー(Mission to Mercury)

ムーンスウォッチ ミッション・トゥ・ザ・マーキュリー
太陽に最も近い惑星・水星をテーマにした人気モデル。ディープグレーのケースにメタリックグレーのストラップを合わせ、グレー文字盤のインダイヤルとベゼルはブラック、クロノグラフ秒針とサブダイヤルの針、タキメーターの目盛りでホワイトを挿している。水星の表面をイメージしたモノトーンデザインが、シンプルながらも洗練された印象だ。

ミッション トゥ ザ ヴィーナス(Mission to the Venus)

ムーンスウォッチ ミッション・トゥ・ヴィーナス
英名で愛の女神(ヴィーナス)と呼ばれる金星をモチーフにした、女性にも人気の高いモデル。ケースと指針はパステルピンク、ダイヤルがアイボリーで、ストラップはホワイトというフェミニンな色使いで金星の美しさと魅力を表現。エッジにダイヤモンドのようなあしらいを乗せた楕円形のインダイヤルが、女性らしいエレガントさを添える。

ミッション オン アース(Mission on Earth)

ムーンスウォッチ ミッション・トゥ・ヴィーナス
水と緑の惑星、かけがえのない母なる地球をテーマにしたモデル。アースグリーンのケースにネイビーブルーのダイヤルとホワイトのインダイヤル、ブラウンのクロノグラフ秒針&インダイヤル針を組み合わせ、大地や海、漂う雲といった地球の自然を表現した。ストラップは文字盤やベゼルと同じネイビーブルーでコーディネートして統一感を生み出している。

ミッション トゥ ザムーン(Mission to the Moon)

ムーンスウォッチ ミッション・トゥ・ザ・ムーン
オメガの伝統的なスピードマスター ムーンウォッチに最も近いモノトーンデザインは、もちろん月がモチーフ。SSの色味に似たスチールグレーのケースに、ダイヤルとストラップは精悍なブラックで統一。全ての指針とタキメーター目盛りをホワイトとし、クラシックなムーンウォッチの雰囲気と瞬時の視認性を両立している。

ミッション トゥ マーズ(Mission to Mars)

ムーンスウォッチ ミッション・トゥ・マーズ
燃えるようなレッドが鮮烈な、火星をテーマにしたモデル。ダイヤルとタキメーター、ストラップはホワイトとし、鮮やかな赤色で火星の荒々しい風景を表現。インダイヤルの宇宙船の形をしたレッド針と中央の赤いクロノグラフ針は、1972年の“スピードマスター アラスカプロジェクII”へのオマージュだ。

G-SHOCK初号機にオマージュを捧げたDW-5000Rが登場。

G-SHOCKというブランド、そしてその愛好家にとってDW-5000Cは特別な存在だ。“オリジン”の名でも知られるこのモデルは1983年のブランドデビュー時に記念すべき1作目として発表され、その後に続くG-SHOCKのあり方を決定づけた。シルエットを見ればひと目でG-SHOCKとわかるそのフォルムは、2023年6月26日に特許庁によって“立体商標”に認定。長きに人々に長く愛され、認知されてきたこと如実に示すエピソードである。

そしてこの冬、カシオ時計製造50周年を締めくくるかのようにスペシャルなモデルが発表された。DW-5000Cのデザインを現代のG-SHOCKに求められるスペックを満たしたうえで再現した、DW-5000R。オリジンの持つ精神性も強く打ち出した、非常に意義深い1本だ。

DW-5000Cが生まれた1983年当時と現在では、G-SHOCKが実施している品質試験のハードルは大きく異なる。そのため、DW-5000Rにおいては単純にDW-5000Cのフォルムをトレースすることが許されなかった。特に、これまでのオリジンモチーフのモデルにおいてブランドのファンが求めてきたフラットなベゼル(現在、12時方向のPROTECTION、6時方向のG-SHOCK部分は段差が設けられ盛り上がっている)を実現するためには、DW-5000Cの41.6mm径では十分な耐衝撃性を確保することができない。この問題を解決するために、カシオは本作のケース径を42.3mmまで拡張。オリジンの雰囲気を崩さず、要件を満たすためにギリギリの調整を行った。

また、当時のデジタル表示を再現するために最新のモジュールにアレンジを施している。現代的なスペックを持たせつつ、顔立ちはノスタルジーを感じさせるものとした。微細な調整ではあるが、根強いファンに応えたいというカシオの意気込みを感じさせる。

もっと細かな点を挙げれば、サイドのボタンを押しやすいようにとボタンの下半分側が1段低くなっていたり、環境に配慮したバイオマスプラスチックの採用などアレンジは各所に見られる。しかしカシオは、それらの現代的な需要を踏まえつつもその外観を限りなくオリジンに近く寄せてみせた。そしてSNS上での予想を裏切り、本作は限定ではなく通常モデルとして展開される。初回ロットで購入できなくても、いつかは手に入れられるということだ。価格は3万3000円(税込)となっている。

ファースト・インプレッション
これまでにもオリジンモチーフのモデルはいくつか発表されてきた。しかし、樹脂製ケースでここまでG-SHOCKファンの要望に応えたモデルはかつて存在していない。フラットなベゼルに、当時に忠実な時刻表示。そして本作は海外の提携工場ではなく、山形カシオで製造されている。熱烈なファンのなかには初号機のレンガパターン右下に配された“JAPAN”の文字を覚えている人もいるだろう。日本初の日本製タフネスウォッチとしての誇りを示すこの表記は、過去のオリジンモチーフモデルには見られなかったものだ。カシオによると、DW-5000Rは決して山形カシオでしか作れないモデルではないという。だが、その精神性を示すうえでは名実ともに日本製であることが重要だったのだろう。

そのこだわりは、外装からは判別できないインナーケースにまで及んでいる。現在でこそカーボン素材を使用した軽量かつ対衝撃性を意識した構造が取られているが、DW-5000Rでは当時と同じステンレススティール(SS)製のインナーケースを採用した。正直この時計のオーナーは、意図的にバイオマスプラスティック製のベゼルを取り払わない限りインナーケースを拝むことはないだろう。しかしカシオはこの点においても誠実であった。多少重量は増したかもしれないが、ファンが求めるものを理解し、きちんと本作に落とし込んだのだ。

DW-5000Rはオリジンの意匠を投影しつつ、ただ原作をなぞる以上の価値を有したプロダクトに仕上がってたと個人的に思っている。G-SHOCKは進化し続けるブランドだ。皆が求めるスペックを高密度実装技術をはじめとしたテクノロジーでカバーし、常に僕たちの予想を上回ることを目的に開発されてきた。そのフィロソフィーは本作にも確かに継承されている。カシオがDW-5000Rを通常モデルとして展開したところには、G-SHOCKの原点たる精神性を定め、それを店頭で実感して欲しいという意図があったのだという。僕個人としてももちろん本作を手に入れたいが、初期ロットにこだわらずゆっくり様子を見たい。1983年に伊部菊雄氏が立ち上げたG-SHOCKのあり方は揺るぎなく、そう簡単に移り変わるものではないのだから。

基本情報
ブランド: G-SHOCK
型番:DW-5000R

直径: 42.3mm
ケース素材: バイオマスプラスチック、インナーケースはSS製
文字盤色: ブラック
夜光: LEDバックライト(スーパーイルミネーター)
防水性能: 20気圧
ストラップ/ブレスレット:バイオマスプラスチック
追加情報: 100分の1秒ストップウォッチ、タイマー、マルチアラーム、報音フラッシュ機能

ウェブ上で販売されている注目の時計を厳選して紹介する。

おそらくプライベートメッセージで直接取引が成立し、時計は現在の市場価格である6000~8000ドル(日本円で約95万〜126万円)の範疇で新たな持ち主の元へ渡ったのだろう。最後にもうひとつだけお知らせがある。ブシュロンのトラベルアラームクロックが、1月11日土曜日(米東部標準時)にTennants Auctioneersで競売にかけられる予定だ。

それでは、今週の注目時計を見ていこう。

ロレックス バブルバック Ref.3372 ピンクゴールド&スティールのツートンモデル 1944年製
A Rolex ref. 3372 Bubbleback
市場でロレックススーパーコピー時計n級品 代引き バブルバックがようやく活気を取り戻しつつあることを報告できるのは、喜ばしいことだ。このモデルは数十年前に非常に人気を博し、多くのコレクターに収集されたが、近年ではヴィンテージ時計市場のなかであまり注目されなくなっていた。その理由はいくつかある。ケースサイズの小ささ、良好な状態の個体を見つける難しさ、そして再塗装(リダン)された文字盤が多すぎることなどだ。そのため特に熱心なヴィンテージウォッチのコレクターでさえ、ここ10~20年はバブルバックを敬遠してきた。

しかし最近小振りなケースサイズが“クール”とされるトレンドがあり、さらにカルティエが人気を集めるなかで20世紀初頭の時計デザインへの関心が高まっていることで、市場におけるバブルバック需要を高めている。2024年11月のジュネーブでのオークションシーズン中、TikTokで人気のディーラーであるマイク・ヌーヴォー(Mike Nouveau)氏と会った際、彼が素晴らしいローズゴールド(RG)のバブルバックを見せてくれた(ちなみに、その時計は私のYear In Reviewのメイン画像にも登場している)。ヌーヴォー氏はその時計を午前中に別のディーラーから購入し、数時間後には別のオーナーに売却していた。つまり、彼がその時計を所有していたのはほんの数時間だったというわけだ。

A Rolex ref. 3372 Bubbleback
トレンドというのは、1本の時計がディーラーを介して瞬時に売れるだけでは生まれない。先日、Loupe Thisが別の素晴らしいバブルバックを出品していた。それは無垢のイエローゴールド(YG)製Ref.3372で、Giudici Milanoのダブルネームとツートンのサーモンダイヤルを特徴としていた。説明が長くなってしまったが、これは本当に素晴らしい1本だった。私自身も隠れたバブルバック支持者だが、落札価格が3万3000ドル(日本円で約520万円)になったことには驚かされた。この結果を見て、私のトレンド予測センサーが反応している。

今回、Loupe Thisが同じRef.3372をさらにピンクゴールド(PG)&ステンレススティール(SS)のツートンモデルで出品している。これは夜光を塗布したインデックスと24時間表示のインナートラックを備えた、よりスポーティな文字盤を持つモデルだ。同じオークションサイトで立て続けに2本のRef.3372が登場するのは珍しいことだが、ここで強調しておきたいのは、このようなオリジナルの文字盤を持つバブルバックを見つけるのは今やほぼ不可能に近いということだ。特に夜光文字盤の場合、ラジウムが経年劣化することで文字盤が損傷することが多く、その過程で所有者が“修復”するために再塗装してしまうケースが少なくない。しかし今回の出品物に関してはそのような手が加えられておらず、非常にいい状態で残っている。もし私の言葉を信じ、トレンドが本格的に到来する前にバブルバックを手に入れたいのであれば、これは絶好の機会だ。

A Rolex ref. 3372 Bubbleback
オークションを主催するLoupe Thisはロサンゼルスに拠点を置いている(現地の皆さんの安全を祈る)。この記事を書いている時点での現在の入札価格は1万501ドル(日本円で約166万円)だ。このロレックス バブルバックのオークションは、1月15日(水)正午(米東部標準時、日本では1月16日の午前2時)に終了予定である。詳細はこちらから確認してほしい。

ロレックス オイスター パーペチュアル Ref.6332 ブルーエナメルダイヤル 1954年製
A Rolex ref. 6332 Bubbleback with enamel dial
厳密に言えば、この時計もバブルバックに分類される。しかし誤解のないように言っておくが、これを“バブルバックだから”と紹介しているわけではない。今回のBring A Loupeにこの時計を取り上げた理由は、バブルバックであることは二次的な要素でしかないのだ。正直に言おう。私は火曜日の夜、マイアミでMomentum Dubaiのターリク・マリク(Tariq Malik)氏と夕食を共にした。6人のグループディナーで、勘定はきっちり均等に割った。ディナーの場所はToni’s Sushi Barだったが、料理の印象は“まあまあ”だった。一方で、ターリクがその夜につけていた時計のほうが、ずっと記憶に残っていた。もちろん、それがこのブルーエナメルダイヤルの1954年製オイスター パーペチュアルだった。

A Rolex ref. 6332 Bubbleback with enamel dial
エナメルダイヤルのロレックスは、常に私の心を掴んで離さない。しかし完全なクロワゾネエナメル(例えば先月、フィリップスニューヨークのオークションに出品されたRef.6100のようなもの)は、100万ドル(日本円で約1億6000万円)近い価格になるだろう。一方でこのRef.6332は、その価格の数十分の1でありながら私にとって心躍る感情を同じように呼び起こしてくれる。特に気に入っているのは、6時位置の“OFFICIALLY”という文字列に赤い文字が加えられていることだ。この文字盤全体のデザインはアメリカやフランス、イギリスなど、どこかの国旗の色あせたトリコロールを思わせる。販売者は文字盤の製造元について明記していないが、12・3・6・9の独特なフォントから判断して、おそらくこれはスターン・フレール社(Stern Frères)によるものだろう。この会社は、ロレックスのクロワゾネダイヤルをてがけたことで知られている。例えばRef.8171 パデローネの文字盤にも同じフォントが使われており、スターン・フレールがそれを製造したことは分かっている。

A Rolex ref. 6332 Bubbleback with enamel dial
確かに厳密な意味では、この34mm径ケースのオイスターはバブルバックに分類される。しかし初期のバブルバックに見られる象徴的なケースと滑らかに一体化したラグがないため、この1950年代の個体は一般的なスクリューバックのモデルに見間違えられたとしても不思議ではない。実際、私もその間違いを犯していた。火曜日にターリク氏の時計を見たとき、それがバブルバックだと気づかず、この記事を書くために販売情報を確認するまで気づかなかった。

販売者であるMomentum Dubaiはその名の通りドバイに拠点を置いているが、この時計は現在マイアミにあることを私は知っている。このロレックスの販売価格は3万8116ドル(日本円で約600万円)だ。詳細はこちらで確認して欲しい(編注:すでに売却済み)。

パテック フィリップ ホワイトゴールド製Ref.3445 ギュブランとのダブルネーム 1960年代製
A Patek ref. 3445G Calatrava with Gübelin retailer stamp
一見するとパテック フィリップのRef.3445は、“退屈なカラトラバ”のひとつかもしれない。しかし実物を見るか、あるいは所有する機会があれば、このモデルが日常使いのヴィンテージウォッチとして最高レベルの1本であることに気づくはずだ。オンラインでよく見る“ソルジャー”ショット(時計単体の直立写真)では、この時計のラグの鋭いエッジや、一見単調に見えるラグの微妙な曲線美、そしてカラトラバの文字盤が持つ洗練されたシンプルさを十分に感じ取ることはできないだろう。ただシンプルと言い切るのは少々語弊がある。このRef.3445は日付表示機能を備えており、カラトラバとしてはかなり複雑な機能を搭載しているのだ。さらに特筆すべきは、このモデルがパテック フィリップにおける最初の量産型自動巻き防水腕時計であり、日付表示機能を持つ初のシリーズ生産モデルであるという点だ。知れば知るほど、興味が湧いてくる時計である。

とりわけこの時計について話すと、ヴィンテージのパテック フィリップをeBayで購入するには覚悟が必要だ。しかしこの個体は写真を見る限り、状態は悪くないようだ。写真から判断する限り、この時計が“ファーストシリーズ”の盛り上がったロゴを持つハードエナメルダイヤルのモデルなのか、“セカンドシリーズ”のフラットな文字盤のモデルなのかははっきりしない。しかしホワイトゴールド(WG)ケースで、ギュブランのダブルネーム付きであることを考えると、この価格は非常に魅力的である。もちろんリスクもある。出品者のフィードバックスコアは8と高くはない。しかし、私はこの時計の価格は市場価格を下回っていると踏んでいる。

この時計はフランスのレ コンタミン モンジョワに拠点を置くeBay出品者によって、1万2061ドル強(日本円で約190万円)の即決価格で出品されている。詳細情報や写真はこちらから確認してほしい。

ギュブラン トリプルカレンダー 1940年代製
引き続き、ギュブランをテーマにした時計を紹介しよう。プライベートレーベルのトリプルカレンダーであり、非常にお買い得な1本だ。このコラムを長く読んでいる読者であれば、私がギュブランの名が入った時計に目がないことはすでにご存じだろう。私は、販売店名が刻印された時計を非常に興味深い存在だと感じている。だがこうした販売店のロゴが入ったプライベートレーベル時計は、ヴィンテージ市場において評価が難しい。なぜなら、どのブランドが製造したのかが不明なケースが多いためだ。その結果、ほかのヴィンテージ時計と価格を比較するのが難しく、適切な相場を見極めにくい。

このギュブランのトリプルカレンダーについても、どこが製造したのか特定するのは難しい。正直に言えば、私もこのトリプルカレンダーがどのメーカーによるものかはわからない。しかし、それでも販売価格に対して十分に価値があると評価できる要素はいくつもある。この時計は1940年代のスイス製であり、バルジュー製キャリバーを搭載している。この時代のバルジュー製ムーブメントを使用した複雑時計で5000ドル(約79万円)以下で手に入るものは、非常に少ない。私は個人的にバルジュー 90に特別な愛着がある。それはトリプルデイトカレンダーの時計に目がないということもあるが、このムーブメントが伝説的なバルジュー 72のファミリーに属しているためだ。基本設計はヴァルジュー 72に基づいているが、このキャリバーをじっくり見てみると、オーデマ ピゲが使用していた初期の13リーニュ ヴァルジュー“VZ”ムーブメントの面影も感じ取れる。

この時計の状態は非常に良好だ。オーバーサイズの38mm径ケースは未研磨と見られ、しっかりとした存在感がある。文字盤にはラジウム塗料が使用されており、経年変化による色褪せが見られる。しかし変色は均一であり、こうしたヴィンテージらしい風合いが好みの人には魅力的だろう。

このギュブランの時計は、イギリスのルイスに拠点を置くeBayの出品者が即決価格2475ポンド(日本円で約39万円)で販売している。詳細はこちらから確認してほしい。

モバード 1966年サンボウル記念モデル 1960年代製
私がヴィンテージのモバードを愛していることは、読者諸君のあいだでもよく知られているだろう。しかしカレッジフットボールに対する私の熱意については、あまりご存じでないかもしれない。実は先日もマイアミでの時計イベントの合間を縫って、オレンジボウルでノートルダム・ファイティングアイリッシュがペンシルバニア州立大学に勝利する試合を観戦し、ナショナルチャンピオンシップへの出場権を手にする瞬間を目の当たりにしてきた。

そんなこともあって、1月10日のコットンボウルでシーズンが正式に終了することを考えていたときに、1966年サンボウルの記念モデルとして作られたこのモバードが目に留まったのだ。この時計は基本的には一般的な防水ケースを備えたモバードの腕時計だが、文字盤の中央に大きく描かれたサンボウルのロゴが非常に印象的だ。もし先日のアンティークショーで購入する時計を見つけていなければ、私自身がこの時計を買っていただろう。だが私が購入しなかったことで、この時計を手に入れるチャンスが読者諸君に訪れたというわけだ。

このモバードはメリーランド州ヘルソープに拠点を置くeBayの出品者が、即決価格350ドル(日本円で約5万5000円)で出品している。詳細はこちらから確認してほしい(編注:すでに売却済み)。

トリー バーチ 2025年秋の新作ウィメンズバッグ「キラ ターンロック」が登場。

シャープなフォルムの新作秋バッグ
キラ ターンロック ショルダーバッグ トレンチ ブラック 92,400円
キラ ターンロック ショルダーバッグ トレンチ ブラック 92,400円
「キラ ターンロック」は、ブランドを象徴するダブルTモチーフのターンロックと、角度を付けたシャープなシルエットが特徴のバッグ。クラシカルで洗練された佇まいながら、カジュアルなスタイルにも合わせやすいデザインに仕上げた。今回は、実用性にも優れたショルダーバッグとトートバッグを展開する。

スーパーコピー 代引き大ぶりチェーンが魅力のショルダーバッグ
キラ ターンロック ショルダーバッグ 84,700円
キラ ターンロック ショルダーバッグ 84,700円
ショルダーバッグは、スタイリッシュで存在感のあるシルバーチェーンがポイント。チェーンはクロスボディとして使用できるほか、二重にして肩掛けスタイルでも楽しめる。また、バッグ内部には3つのコンパートメントを備えているため、スマートフォンや財布、サングラスなどの小物を整理して収納することができる。

キラ ターンロック ショルダーバッグ 84,700円
キラ ターンロック ショルダーバッグ 84,700円
カラーごとに異なる質感も魅力の1つ。光沢感のあるレザーを使用したブラック、ダークグリーン、アイボリーのほか、ファー素材でレオパード柄を表現したトレンチ ブラック、温かみのあるスエード素材で仕立てたダークココアを展開する。

収納力も備えるレザートートバッグ
キラ ターンロック スモール トートバッグ 79,200円
キラ ターンロック スモール トートバッグ 79,200円
一方の「スモール トートバッグ」は、縦長のラインがすっきりとした印象。サイドに備えたファスナーで容量を広げることができるため、荷物が増えてもしっかりと収納することができる。カラーは、ダークココアのスエードとブラックレザーの2色を展開する。

【詳細】
新作「キラ ターンロック」バッグ
発売日:2025年7月9日(水)
取扱店舗:全国のトリー バーチ店舗、公式オンラインストア
アイテム:
・キラ ターンロック ショルダーバッグ 84,700円、レオパードのみ92,400円
カラー/素材:ブラック/レザー、ウォームティール/レザー、プラリネ/レザー、トレンチ ブラック/ファー、ダークココア/スエード
サイズ:高さ 14.8cm、幅 28cm、マチ 8cm
・キラ ターンロック スモール トートバッグ 79,200円
カラー/素材:ブラック/レザー、ダークココア/スエード
サイズ:高さ 27.5cm、幅 22cm、マチ 9cm

【問い合わせ先】
トリー バーチ ジャパン
TEL:0120-705-710

ウブロは同社でもっともユニークなキャリバーのひとつ、メカ-10を発表した。

このムーブメントはスケルトン仕様の手巻き式で、独特な構造に加えて驚異の約10日間パワーリザーブを誇り、文字盤には個性的なパワーリザーブインジケーターが搭載されている。当時のウブロのトレンドを象徴するようメカ-10は45mmの大型ケースに収められており、この革新的な技術は主に手首の大きな顧客層に向けられていた。

それから約10年が経ち、同ブランドはメカ-10の新しく、より洗練されたバージョンを発表した。今回は自社製Cal.HUB1205を搭載し、42mmのビッグ・バンケースに収められている。しかし単にムーブメントスペースを小型化しただけではない。同ムーブメントは、この新バージョンのために全面的に改良を施しているのだ。旧Cal.HUB1201を搭載した45mmバージョンと比較すると、その構造がいくつか異なっていることがわかる。

正面から見ると、12時位置にはラック・アンド・ピニオンシステム(直線運動と回転運動を相互に変換するためのギア)が引き続き全面的に表示されている。この仕組みは約10日以上のパワーリザーブを担う、直列接続のふたつのゼンマイ香箱と、差動式パワーリザーブインジケーターとのつながりを直接的に視覚化している。このパワーリザーブインジケーターもきわめてユニークであり、2枚のディスクが互いに反対方向に回転しながら重なり合う仕組みとなっている。

メカ-10やウニコ クロノグラフといった、ウブロのスケルトンムーブメントで見過ごされがちなポイントとして、これらのデザインは装着時に正面から構造の美しさを堪能できるよう工夫されている。たとえばウニコだとコラムホイールを文字盤側に配置し、クロノグラフの動きが直接視認できるようになっている。メカ-10の場合、バランスホイールを反転してブリッジの上部に配置することで、その動きがひと目でわかるようになっているのだ。時計を裏返してみると、メカ-10の構造、とりわけブリッジデザインが以前と比べて大幅に洗練されていることがわかる。前モデルの3つのブリッジは魅力的な仕上げでありながら、ベーシックで工業的な印象が強かった。一方この小型キャリバーでは、縦方向のサテン仕上げや手作業による大胆な面取り加工が施され、高級感が格段に向上している。またシリコン製の耐磁性脱進機を採用したことで、機能性も際立っている。

新しい42mmのメカ-10は3種類の素材が用意された。18Kキングゴールド、チタニウム、そしてウブロが鍛造カーボンに独自のアレンジを加えたフロステッドカーボンだ。このフロステッドカーボンは、標準生産ラインとして初の採用となる。現在、3つのバージョンはすべて購入可能であり、価格は18Kキングゴールドが586万3000円、チタニウムが315万7000円、カーボンブラックが376万2000円(すべて税込)だ。

我々の考え
この新キャリバーに施された改良はブランドにとって大きな前進であり、今後の展開に期待が膨らむ。全体としては画期的とまではいかないものの、これらのブリッジに手作業で面取り加工を施したのは、ウブロの伝統的なシンプルで工業的な(技術的には非常に優れているが)キャリバーのなかで、この製品をより高級感のあるものに引き上げる素晴らしい方法だ。

こうした細部へのこだわりは、もしムーブメントの仕上げ全体が向上していく兆しであるならウブロにとって非常によいサインだと言える。3つのモデルのなかだとフロステッドカーボンが私のお気に入りだ。この記事を読んでいる方のなかには“またカーボンケースか”と思う方もいるだろうし、特にウブロのカーボンケースにはうんざりしている人もいるかもしれない。それでも私は、このモデルは非常によくできていて、ビッグ・バンのケースシェイプにも非常にマッチしていると感じる。42mmのケースサイズであればおそらく超軽量で、身につける楽しさを存分に味わえるはずだ。

この42mmのメカ-10に搭載されたキャリバーアップデートは称賛に値するものの、私がこの時計に対して抱く最大の懸念は、むしろ哲学的な側面にある(これはほかのブランドにも共通する問題だ)。技術的な成果は素晴らしいが、個人的にはこれほど長いパワーリザーブにどれほどの価値があるのか正直疑問だ。実際、私はパワーリザーブはそこまで重要ではないと考えており、キャリバーの価値を測る基準として多くの人がこのスペックに過度に注目し過ぎているのではないかと思う。

このような時計は、最終的には時刻を表示するだけのものであることを考えると非常に高価だ。複雑機構を持たない時計に対して、私はこれほどのお金を払うことはおそらくないだろう。しかし、小売価格が以前の45mmモデルと変わらないままである点や仕上げが改善されたことを考えると、より価値のある製品にはなっていると言える。それでもこの時計が本当の意味で“お買い得”と呼べるには、まだ程遠い。

hublot meca-10
基本情報
ブランド: ウブロ(Hublot)
モデル名: ビッグ・バン メカ-10 42MM(Big Bang MECA-10 42mm)
型番: 444.OX.1180.RX(18Kキングゴールド)/444.NX.1170.RX(チタニウム)/444.QN.1170.NR(カーボンブラック)

直径: 42mm
厚さ: 13.9mm
ケース素材: キングゴールド、チタニウム、カーボンブラック
文字盤: マットブラックスケルトン
インデックス: アプライド
夜光: あり
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: ライン入りブラックストラクチャードラバーストラップ(キングゴールド、チタン)、ブラックベルクロファブリック(カーボン)

ムーブメント情報
キャリバー: HUB1205
機能: 時・分表示、スモールセコンド、パワーリザーブインジケーター
パワーリザーブ: 約10日間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 29