これらのクロノグラフこそが、ロレックスコレクターにとっての真の聖杯である。

この週末に、モナコ・レジェンド・グループはジョン・ゴールドバーガー氏のコレクションから、ロレックスのスプリットセコンド クロノグラフ8本(12本製造)のうちの1本、Ref.4113をオークションに出品すると発表した。この時計に聞き覚えがあるとすれば、それはロレックスのクロノグラフコレクションの最高峰に位置するからというだけではない。これは彼とのTalking Watchesで、ゴールドバーガー氏がチーズナイフを手に取り、自分のジャケットで拭いてから裏蓋を開けてムーブメントを見せたその時計である。今回市場に新しく出され、カバーロットのひとつなっている。エスティメートは280万ユーロから560万ユーロ(日本円で約4憶6120万~9億2240万円)だ。

Rolex 4113
Ref.4113は、人気のロレックススーパーコピー 代引き専門店がこれまでに製造した唯一のスプリットセコンドクロノグラフであり、ケース形状、デザイン、サイズは、以前にも以後にも見られない独特のものである。またロレックスらしく、この時計の起源に関する情報はブランドからほとんど提供されていない。1942年に製造されたこの時計は、当時としては比較的大きな44mm径のケースを持ち、ユニバーサル A.カイレッリ(この春、モナコ・レジェンド・グループでもそのうちのひとつが出品される)のような、ほかのスプリットセコンドクロノグラフでも見られるバルジュー55 VBRムーブメントを搭載していた。この時計は手首に乗せると非常にフラットで、わずかにドーム型の裏蓋は薄く、ラグは端が細くなった珍しい構造で、それにより着用感を高めている。すべてのロレックスのスプリットセコンドはすべて、051313から051324のシリアルナンバーの範囲に入る。このリファレンスの最高落札記録は、2016年のフィリップス・ジュネーブの“スタート・ストップ・リセット(Start-Stop-Reset)”オークションで落札された240万5000スイスフラン(当時の相場で約2億6455万円)だが、もしかしたら今週末に破られるかもしれない。

Rolex 4113
また、これらの55 VBR時計(ロレックス、ユニバーサルなど)の多くが1940年代にイタリア市場に登場したことも、当然といえば当然だが興味深い。ユニバーサルの時計はイタリア軍用に製造されたもので、イタリア政府が同様の理由で注文し、実際には手に入らなかったのではないかと想像できるが、それはあくまで推測に過ぎない。また、すでに知られている8本のRef.4113の各ダイヤルが、1942年にすべてケーシングされ、仕上げられたにもかかわらず、テキストや印刷において異なっていた理由も不明である。コロネット(王冠マーク)とロレックスのサインはわずかに異なり、テレメータースケール(ブルーで印刷されたとされる)はそれぞれ異なる色あせ方をしている。フィリップスのアーサー・トゥーショ(およびHODINKEEの同窓生)は、このRef.4113と、2019年にフィリップスでオークションにかけられた最後のものとの比較について詳しい分析を行っており、その内容はここで読むことができる。またスティールとローズゴールドのツートンカラーケースを持つRef.4113も確認されている(これはサンドロ・フラティーニ氏の『My Time』という書籍に掲載されている)。

Rolex 4113 John Goldberger
ジョン・ゴールドバーガー氏。彼のロレックス Ref.4113と、2019年にフィリップスで売却されたそれを手にしている。Photo courtesy Arthur Touchot/Phillips.

確かなことはふたつ。Ref.4113に関する公式情報がロレックスから少しずつ出てきた。ロレックスからの2通の手紙が、Ref.4113の真正性を確認しているのだ。1通目の手紙は1988年に書かれたもので、4年後にロレックスの社長およびハンス・ウィルスドルフ財団の会長となるパトリック・ハイニガーによって署名され、イタリアの小売業者に対してRef.4113の存在を確認したものだ。もう1通は1990年頃、同様の内容でドイツの小売業者に送られ、製造されたRef.4113の正式な製造数が12であることを示していた。

Rolex 4113
Stefano La Motta
ステファノ・ラ・モッタのRef.4113。

確認されているRef.4113のほとんどは、モータースポーツに縁のある一族を通じてシチリア島からもたらされたものである。当時は1万1000ものカーブを持つヨーロッパ最長のクローズド・サーキットレース、“ジロ・アウトモビリスティコ・デ・シチリア”の本拠地であった。同レースは戦時中に中断されたが、1948年に再開され、“タルガ・フローリオ”という別のレースと合併された。これらの時計が初めて公のオークションにかけられたのは、1991年5月15日、クリスティーズ・ジュネーブであり、著名なドライバー、ステファノ・ラ・モッタ、バローネ・ディ・サリネッラ(1920~1951)の家族から委託され、1940年代にラ・モッタがその時計を着用している写真とともに出品された。ゴールドバーガー氏の時計は、1990年代にディーラーを通じて入手され、そのディーラーはタルガ・フローリオにも参加したドライバーから時計を調達していた。イタリア発祥でない唯一の時計は、モータースポーツにゆかりがあるイギリスの家族からのものである。

パルミジャーニ・フルリエの新しいトリック クロノグラフ ラトラパンテの所感

最近、私は新しくデザインされたパルミジャーニ・フルリエのトリック プティ・セコンドを見てきた。この時計はブランドのオリジナルコレクションに属するタイムオンリーウォッチであり、今年のWatches&Wondersで再解釈されて復刻した。しかし、展示会で発表されたのはこのスモールセコンドバージョンだけではない。ブランドはラインナップをさらに充実させるために、新しいスプリットセコンドクロノグラフも発表した。

初期のトリックコンプリモデルは市場ではまだ過小評価されているが、中期のクロノグラフは2次流通市場で高い価格を維持しているのは事実である。トニー・トライナが、チャールズ国王の“コレクターズチョイス”としてゼニスのエル・プリメロムーブメントを搭載したトリック クロノグラフについて書いたときから、私はこれらの時計に注目し始めた。シャネル時計スーパーコピー 代引きつまりトリックをクロノグラフとして捉えるなら、“メモリータイム”(リッチ・フォードンの記事はこちら)と比較しても、この時計はぴったりなのだ。しかもこの時計はブランド外のムーブメントではなく、マニュファクチュールムーブメントを搭載しているのでさらに優れている。

Parmigiani Toric Chronograph Rattrapante
新しいトリック クロノグラフ ラトラパンテ ローズゴールドは、同ブランドのトンダ PF スプリットセコンドクロノグラフや以前のトンダ クロノール アニヴェルセールにも使用されているCal.PF361ムーブメントを搭載。このムーブメントは18Kローズゴールド製で、高振動数(3万6000振動/時)で動作し、スプリットセコンド用のダブルコラムホイールを備えている。ムーブメントのサイズは比較的スリムな30.6mm径×7.35mm厚で、約65時間のパワーリザーブを持ち、サテン仕上げのオープンワークと手作業で面取りされたブリッジが特徴だ。時計は3時位置に30分積算計、9時位置に12時間計、6時位置にスモールセコンドを配置している。

Parmigiani Toric Chronograph Rattrapante
以前ローガン・ベイカーは、“これは世界で最も過小評価されているスプリットセコンドムーブメントではないか”と尋ねたことがある。スプリットセコンドクロノグラフ自体非常に珍しいため、その評価は難しいところだ。資金不足のブランドにとって、トゥールビヨン、永久カレンダー、さらにはミニッツリピータームーブメントを購入することはスプリットセコンドクロノグラフよりもはるかに安価である。IWCはRef.3711 ドッペルから最新バージョンに至るまで、バルジュー7750を改良してスプリットセコンドクロノグラフに変えていた。ハブリング²も比較的手頃な価格のラトラパンテを実現している。しかしそれ以外での選択肢は少なく、どちらのクロノグラフムーブメントもパルミジャーニほど優雅にデザインされておらず、スケルトン化もされていない。

Parmigiani Toric Chronograph Rattrapante
トリックとトンダを区別するのは、そのデザイン哲学と系譜である。ブランドが今年トリックを復刻したと述べたが、“復刻”という言葉はパルミジャーニが行ったことを正確に表していない。過去の記事でも触れたように、パルミジャーニはトリックのデザインで過去を振り返るのではなく、ドーリア式円柱にインスパイアされたフルーテッドベゼルや“トーラス”ジオメトリーのような、いくつかの重要なデザイン要素だけを残している。

Parmigiani Toric Chronograph Rattrapante
ダイヤルはプティ・セコンドと同様に、手作業でグレイン加工された18Kゴールド製で、“ナチュラルアンバー”仕上げのバラ色がかったブラウンの色合いが特徴だ。またダイヤルはフラットではなくシェヴェ加工され、エッジに向かって傾斜し、ケースと風防の自然な形状にマッチしている。サブダイヤルも滑らかに面取りされ、18KRGのアプライドインデックスが手作業で植字されている。時・分・クロノグラフ秒針は18KRG製で、スプリットクロノグラフ秒針はロジウムメッキされており、カウンターにはスティールが使用されている。

Parmigiani Toric Chronograph Rattrapante
この時計のデザインには鋭いエッジが一切ない。私は一般的に、大胆なファセットを持つケースを好むが、ケースのデザインを滑らかにするのは難しい。それはしばしば、文字どおり過度に磨かれたようなデザインになりがちになるのだ。ただ新しいトリックは、20年前の時計のように、元の所有者が傷やへこみを取り除こうと過度に磨いたようには見えない。ただスリムでクリーンな印象を与える。

Parmigiani Toric Chronograph Rattrapante
18KRGのケースは、42.5mm径×14.4mm厚のサイズだ。スプリットセコンドクロノグラフは通常厚みがあり、このモデルも例外ではない。しかしやや短くなったラグにより、より多様な手首にフィットしやすく、またストラップがより鋭く下に落ちるようになっている。トリック プティ・セコンドと同様に、ラトラパンテもサンドゴールドカラーのハンドステッチが施されたヌバックアリゲーターレザーストラップを採用。“プント・ア・マーノ”ステッチというイタリアの裁縫技術のセンスが光る。

Parmigiani Toric Chronograph Rattrapante
新しいトリック ラトラパンテは、予想どおり限定生産モデルである。このレベルのラトラパンテウォッチを作成する技術的な挑戦は非常に高いものだろう。2024年9月に発売される際には、新しいトリック ラトラパンテを手に入れるチャンスはわずか30回しかない。価格は2128万5000円(税込)であり、RG製のトンダ PF ラトラパンテの962万5000円(税込)と比較しても妥当なラインに思える。正直なところ選ぶとしたら、毎回トンダ ラトラパンテよりも新しいトリックを選ぶだろう。おそらくそのダイヤルの品質と独自性のためだが、過去数年間のトンダ PFラインの賞賛を考慮しても、トンダは注意が必要だ。トリックが再び登場したのだから。

Parmigiani Toric Chronograph Rattrapante
パルミジャーニ・フルリエ トリック クロノグラフ ラトラパンテ。Ref.PFH951-2010001-300181。直径42.5mm、厚さ14.4mmの18Kローズゴールド製ケース、30m防水。18KRG製ハンドグレイン仕上げのナチュラルアンバーカラー文字盤、18KRG製インデックスと時・分・クロノグラフ秒針、6時位置にスモールセコンド、30分積算計と12時間計、スプリットセコンドクロノグラフ。サテン仕上げのオープンワーク、手作業による面取りが施されたブリッジ、約65時間パワーリザーブ。サンドゴールド製ハンドステッチ入りヌバックアリゲーターストラップ。世界限定30本。価格は2128万5000円(税込)

ブライトリングは創立140周年を記念し、プレミエ、ナビタイマー、クロノマットに専用のCal.B19を搭載して発表した。

ブライトリングは、プレミエ、ナビタイマー、クロノマットの3つの人気モデルに、同社初の永久カレンダークロノグラフムーブメントを搭載し、発表した。これらのモデルはすべてブライトリング専用の永久カレンダームーブメントである新Cal.B19によって駆動する。このムーブメントは、ブランドにとって技術的に大きな進歩であり、同社のマニュファクチュールムーブメントにおける15年の進歩を象徴している。

上から順に、プレミエ B19 ダトラ 42、ナビタイマー B19 クロノグラフ 43 パーペチュアルカレンダー、スーパークロノマット B19 44 パーペチュアルカレンダー。いずれも140周年記念の限定モデルである。

Cal.B19はブライトリング初の永久カレンダークロノグラフムーブメントであり、2009年のCal.01で始まった同社のマニュファクチュールムーブメントの系譜に基づいている。それ以来、ブライトリングはGMTやスプリットセコンドなどのキャリバーを導入し、コレクションを強化してきた。Cal.B19は、フルカレンダー(月・日・曜日表示)とムーンフェイズを搭載した独自の永久カレンダームーブメントで、約96時間ものパワーリザーブを誇り、2万8800振動/時(4Hz)で動作する。また同ムーブメントはCOSC認定を受けており、クロノグラフはコラムホイールと垂直クラッチを採用している。これによりクロノグラフの精密なスタート、ストップ、リセットが可能となる。22Kゴールド製の自動巻きローターには、スイスのラ・ショー・ド・フォンにあるブライトリングの歴史的な工場が刻まれている。

人気のブライトリングスーパーコピー代引き専門店は創立140周年を記念して、Cal.B19を搭載した3つの限定モデルであるプレミエ、ナビタイマー、クロノマットを発表した。共通して18Kレッドゴールド(通常は5Nゴールド)のケースを備えており、各140本限定、メーカー希望小売価格は各777万7000円(税込)となっている。さらにこれらの限定モデルは、サファイア製のシースルーバックをとおしてCal.B19を鑑賞できるようになっている。

breitling premier perpetual calendar chronograph
 プレミエ B19 ダトラ 42は、42mmの直径と15.6mmの厚さを持ち、ラグからラグまでの長さは50mmとなっている。RG製ケースのほか3つの限定モデルには同じムーブメントが搭載されているため、ダイヤルレイアウトも共通している。3時位置のインダイヤルには日付とクロノグラフのミニッツカウンター(内側に配された目盛り)が、6時位置には月とうるう年表示(赤い針)が表示される。そして9時位置のインダイヤルには曜日表示とスモールセコンドが表示され、12時位置にはムーンフェイズが配置されている。このデザインはミッドセンチュリーのインスピレーションに基づいており、ムーンフェイズにはスタイリッシュな月面の人が描かれている。ダイヤルはブラックでアラビア数字のインデックスが施され、ブラックのインダイヤルには同心円状の装飾が施されている。外周にあるゴールドの秒目盛りはブラッシュ仕上げだ。ストラップはブラックのアリゲーターで、ゴールドのフォールディングバックルが付属する。

navitimer perpetual calendar chronograph
 ナビタイマー B19 クロノグラフ 43 パーペチュアルカレンダーは直径43mm、厚さ15.6mm、ラグからラグまでの長さは49mmで、プレミエとほぼ同じサイズである。ダイヤルレイアウトもプレミエと類似しているが、これはケースと合わせたRGのダイヤルとインデックスが特徴となっている。またナビタイマーならではのクラシックな計算尺付きベゼルが装備されており、ムーンフェイズはよりリアルな月の描写が施されている。これはナビタイマーがもともと科学的なツールとして設計されたことへのオマージュともいえる。

 最後にスーパークロノマット B19 44 パーペチュアルカレンダーについてだ。RGのケースは直径44mm、厚さ15.3mm、ラグからラグまでの長さは53.5mmである。クォーツ時計が主流だった1983年、ブライトリングはその流れに逆らってクロノマットを発表した。この時計はイタリアのフレッチェ・トリコローリ(アクロバット飛行部隊)のために設計された自動巻きモデルである。ベゼルには15分ごとに刻まれた特徴的なライダータブがあり、ひと目でそれと分かる。数カ月前にブライトリングのヴィンテージウォッチの巡回展を見に行った際、ブランドのヘリテージ部門責任者であるジャンフランコ・ジェンティーレ(Gianfranco Gentile)氏は、イタリアで育った彼にとってクロノマットがすべてであったと語っていた。

breitling chronomat perpetual calendar chronograph
 このシンプルなコメントがクロノマットに対する考えを改めさせた。この時計はよくも悪くも1980年代の象徴だ。少し目立つデザインだが、そのライダータブやルーローブレスレットによって多くの人がすぐに識別できる存在となっている。今回のクロノマット パーペチュアルクロノは、そのルーローブレスレットにインスパイアされたラバーストラップで提供される。

 最後に、各アニバーサリー限定モデルはスエード張りの木製ウォッチボックスに収められ、収納用の引き出しやトラベルポーチ、さらには特別版の書籍『Breitling: 140 Years in 140 Stories(リッツォーリ社、2024年)』が付属する。この書籍はオーナーが購入したアニバーサリーモデルの画像が表紙にデザインされた特別版となっている。

我々の考え
Cal.B19はブライトリングにとって技術的に大きな進歩であり、これを3つの異なるデザインで展開するのは理にかなっている。プレミエはまるで、大きな現代版ユニバーサル・ジュネーブ トリコンパックスのように純粋なミッドセンチュリースタイルのようだ(パーペチュアルカレンダーとして仕上げられているが)。一方でスーパー クロノマットは、スケルトンダイヤルによって現代的で最先端のデザインが強調されている。そしてもちろん、ブランドの象徴であるナビタイマーにもこれは搭載されているのだ。それぞれのモデルは異なるアプローチで仕上げられており、各モデルラインの目的に忠実なデザインがなされている。どのモデルも大振りだが過度に主張しすぎることはなく、まさにブライトリングのパーペチュアルカレンダークロノグラフに求められる特性を体現しているといえるだろう。

breitling navitimer perpetual calendar chronograph
breitling navitimer perpetual calendar chronograph
 一方でパテック フィリップを除くと、永久カレンダークロノグラフの競合はあまり多くない。IWCも過去に同様の価格帯で永久カレンダークロノグラフをリリースしており、さらにハブリング²は約2万5000ドル(日本円で約360万円)でSS製の永久カレンダークロノグラフを製造している(驚くべきことにハブリング²は3万ドル、日本円で約430万円未満でラトラパンテをつくっている)。

 ブライトリングがSS製の永久カレンダークロノグラフを展開するのをぜひ見てみたいと思う。そして、それが140周年記念のあとに登場するかもしれないという期待もある。

 確かにプレミエの限定モデルを見たとき、ユニバーサル・ジュネーブのトリコンパックスを思い浮かべずにはいられなかった。またブライトリングが最近このブランドを買収したことも頭をよぎった。今年の初め、CEOのジョージ・カーン(George Kern)氏が私たちに語ったように、復活したUG(ユニバーサル・ジュネーブ)からの製品発表はまだ少し先の話である。しかしもしプレミエのようなリリースが、ユニバーサル・ジュネーブからのよりエレガントなモデルの基礎を築いているのだとしたら、たとえそれがもっと小さく厚さ15mm以下のモデルであっても、私は文句は言わないだろう。

 だが今のところ、ブライトリングがその印象的な製造能力をさらに強化し続けているのは素晴らしいことだ。

breitling 140th anniversary watch
基本情報
ブランド: ブライトリング(Breitling)
モデル名: プレミエ B19 ダトラ 42 140周年アニバーサリー(Premier B19 Datora 42 140th Anniversary)
型番: RB19401A1B1P1

直径: 42mm
厚さ: 15.6mm
ラグからラグまで: 50mm
ケース素材: 18Kレッドゴールド
文字盤: ブラック
インデックス: アプライドアラビア数字
夜光: あり、スーパールミノバの時・分針
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: ブラックアリゲーター、18Kゴールド製フォールディングバックル

モデル名: ナビタイマー B19 クロノグラフ 43 パーペチュアルカレンダー 140周年アニバーサリー(Navitimer B19 Chronograph 43 Perpetual Calendar 140th Anniversary)
型番: RB19101A1H1P1

直径: 43mm
厚さ: 15.62mm
ラグからラグまで: 49.07mm
ケース素材: 18KRG
文字盤: 18KRG
インデックス: アプライドバー
夜光: あり、スーパールミノバの時・分針
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ブラックアリゲーター、18Kゴールド製フォールディングバックル

モデル名: スーパークロノマット B19 44 パーペチュアルカレンダー 140周年アニバーサリー(Super Chronomat B19 44 Perpetual Calendar 140th Anniversary)
型番: RB19301A1G1S1

直径: 44mm
厚さ: 15.35mm
ラグからラグまで: 53.5mm
ケース素材: 18KRG
文字盤: グレースケルトン、ブラックサファイア製クロノグラフカウンター
インデックス: アプライドバー
夜光: あり、スーパールミノバの時・分針
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: ルーローブレスレットから着想を得たラバーストラップ、18Kゴールド製フォールディングクラスプ

breitling caliber b19 perpetual calendar chronograph
breitling caliber b19 perpetual calendar chronograph
ムーブメント情報
キャリバー: ブライトリングB19
機能: 時・分・スモールセコンド、永久カレンダー(月・日・曜日・うるう年表示)、ムーンフェイズ、クロノグラフ(30分積算計)
直径: 30mm
厚さ: 8.53mm
パワーリザーブ: 約96時間
巻き上げ方式: 自動巻き(22KRG製ローター)
振動数: 2万8800振動/時
部品点数: 374
クロノメーター: あり、COSC認定
追加情報: コラムホイール、垂直クラッチ式クロノグラフ

価格 & 発売時期
価格: 各777万7000円
限定: あり、世界限定各140本

タグ・ホイヤー モナコ クロノグラフ レーシンググリーン 限定モデル

昨年、タグ・ホイヤーはフランスのリバリーカラー(レーシングカラー、チームカラー)にオマージュを捧げたモナコ クロノグラフ レーシングブルー 限定モデルを発表したが、今年はイギリスにおいて象徴的なレーシンググリーンが採用された。リバリーカラーの使用について簡単におさらいすると、20世紀初頭から1960年代にかけて、レーシングドライバーたちは国ごとのリバリーカラーで競い合っていた。イタリアはもちろん赤、ドイツは白や銀、フランスは青を使用していた。そしてイギリスが緑を使用するきっかけとなったのは、1902年のゴードン・ベネット・カップ(Gordon Bennett Cup)で、セルウィン・エッジ(Selwyn Edge)がイギリス代表として優勝した際に、国の車両を区別するために緑が選ばれたことに由来する。緑色は時代とともにその色調が変化してきたものの、今なおブリティッシュレーシングの象徴として認識されている。“ブリティッシュレーシンググリーン”という概念は、特定の緑色を連想させる用語として、さまざまな産業で頻繁に使われるほどのアイコニックなカラーなのだ。今年タグ・ホイヤーはこのカラーと、歴史的なブリティッシュレーシングカーに見られる白と黄色のアクセントにインスパイアされた新しいモナコを、満を持して発表した。

シルバーのサンレイ仕上げが施された文字盤には、タグホイヤースーパーコピー代引き 口コミ第1位ブランドが“グリーンオパーリン”と称する鮮やかなサブダイヤルが配置されている。アワートラックにはライトグリーンのスーパールミノバが施され、クロノグラフ秒針と12時位置のバトン型インデックスには黄色のラッカーが塗布されている。6時位置にはデイト表示窓があり、ポリッシュ仕上げのシルバーの時・分針がダイヤル全体を引き締めている。

 昨年のレーシングブルー 限定モデルと同様に、このモデルは39mm径のグレード2チタンケースに全面サンドブラスト加工が施されており、面取りされたドーム型のサファイアクリスタル風防とサファイアクリスタルのケースバックが装備されている。ラグからラグまでの長さは47.4mm、厚さは14.35mmと大型のスクエアケースであり、ほかのモナコモデルと同様のサイズ感だ。防水性能は100mを誇り、レーシング仕様でパンチングが施されたグリーンカーフストラップとチタン製のデプロワイヤントバックルが付属している。

monaco side profile
 1969年のオリジナルバージョンへのオマージュとして、ケースの9時位置にリューズが配置されている。内部にはタグ・ホイヤーの信頼性の高いキャリバー11が搭載されており、これはセリタのSW-300をベースにデュボア・デプラ製のクロノグラフ用モジュールを組み合わせたムーブメントである。

monaco caseback shot
 タグ・ホイヤー モナコ クロノグラフ レーシンググリーンは1000本限定となっており、ケースバックには“One of 1000”と刻印されている。現在発売中で、価格は130万3500円(税込)である。

我々の考え
モナコはすべての人の好みに合う時計ではないかもしれないが、この時計が持つ歴史や文化的な意義を否定することはできない。タグ・ホイヤーがモナココレクションの歴史に深く敬意を払いながら、必ずしもオリジナルを忠実に復刻しただけではないモデルを引き続き展開しているのは喜ばしいことだ。サンドブラスト加工が施されたチタンケースは従来の限定モデルとの素晴らしい区別要素であり、またほかのモナコには多く見られる赤がこのカラーバリエーションには一切使われていない点も注目に値する。個人的には、この色の組み合わせは非常によくまとまっていると思う。昨年のフランスエディションに見られた青と黄色のコントラストよりも、このグリーンとイエローの組み合わせのほうがしっくりくるように感じる。グリーンとイエローがセットになることでどこか20世紀中ごろのネオンサインのようなユニークな雰囲気を醸し出していて、遊び心がありながらもインダイヤルの落ち着いたグリーンのおかげで控えめな印象を持つ。

 この時計がチタン製であることは確かだが、130万3500円(税込)という価格がその価値に見合うかどうかは最終的には購入者次第である。私は新しいカレラ グラスボックスの大ファンであり、そのクロノグラフがおおむね40万円ほど安く、自社製のクロノグラフムーブメントを搭載していることを考えると、このモナコをすすめるのは少々難しいかもしれない。ただしモナコのストーリーやアイコニックなケース形状に魅力を感じるなら話は別だ。加えてこのモナコの新バージョンは素晴らしいルックスをしている。特にグリーンが好きな私としては、このモデルがラインナップのなかで最も身につけたいモナコであることは間違いない。確かにこれはカラーバリエーションの変更に過ぎないかもしれないが、非常に洗練された仕上がりとなっていることは確かだ。

基本情報
ブランド: タグ・ホイヤー(TAG Heuer)
モデル名: モナコ クロノグラフ レーシンググリーン 限定モデル
型番: CAW218E.FC6565

直径: 39mm(ラグからラグまでは47.4mm)
厚さ: 14.35mm
ケース素材: グレード2チタン(サンドブラスト仕上げ)
文字盤色: サンレイが施されたシルバーダイヤルにグリーンのサブダイヤルとイエローのアクセント
インデックス: ポリッシュが施されたアプライドインデックス
夜光: スーパールミノバ
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: チタン製フォールディングクラスプが付いたグリーンのカーフスキン

ムーブメント情報
キャリバー: タグ・ホイヤー自社製キャリバー11
機能: 時・分・秒表示、デイト表示、クロノグラフ
パワーリザーブ: 40時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 59

価格 & 発売時期
monaco front
価格: 130万3500円(税込)
発売時期: 発売中
限定: 1000本限定

複雑機構が増えるほど時計はよくなるのか?

MB&FのLM シーケンシャル フライバックに搭載されたムーブメントは、現代時計界の天才が生み出したGPHG受賞作をも凌ぐ、客観的に見て優れたものだ。しかし、MB&FがLM シーケンシャルの後継モデルにおいて変えたのは、それだけではない。これによって、何が時計をよくするのか、成功したモデルとは、魅力的な時計とは、そして自分にとってぴったりの時計とは何かという興味深い議論への扉が開かれるのだ。このような話題は、21万8000ドル(日本円で約3360万円)という高価な時計に限らず、さらに広い範囲にも応用可能なテーマである。

MB&F LM Sequential Flyback and LM Sequential EVO
もしこれが、少し難解な専門用語の羅列に聞こえるなら、もう少しわかりやすく説明しよう。2022年、MB&FはLM シーケンシャル EVOを発表した。このクロノグラフは時計界において、かつて見たことも考えられたこともないデザインであり、MB&Fだけでなく業界全体にとっての転換点となるムーブメントだったことは明白だった。この時計のムーブメントを手がけたのは、ベルファストを拠点とする複雑機構のスペシャリスト、スティーブン・マクドネル(Stephen McDonnell)氏で、MB&F創業者のマックス・ブッサー(Max Büsser)氏は彼のことを“人生で会った唯一の天才”と称した。昨年のドバイ・ウォッチ・ウィークでマクドネル氏に会い、口コミ第1位のカルティエスーパーコピー代引き専門店Hicopy.jp彼が行ったウォッチメイキングに関する最も興味深いプレゼンテーションを目の当たりにしたが、その評価に異論を挟む余地はないと感じた。

MB&F LM Sequential EVO
ブッサー氏は常に、“ほかと同じようなクロノグラフはつくらない”と言っていたが、これほど革新的なものになるとは予想していなかった。LM シーケンシャル フライバックは、本質的にふたつのクロノグラフをひとつの時計に収めたような構造だ。ケースの左側と右側には、それぞれ通常のクロノグラフ用プッシャーが備わっており、文字盤の9時位置付近には動作状態を表示するインジケーターがあり、その上の11時位置には30分積算計が配置されている。

このふたつのクロノグラフは独立して操作可能だが、それだとスプリットセコンドクロノグラフとして使うには少々不便だ。しかし、9時位置にある“ツインバーター”と呼ばれるプッシャーを押すことで、両方のクロノグラフの状態を同時に切り替えられる。一方が動作中で他方が停止中ならばスイッチし、両方が停止中であれば同時にスタートできる(その逆も然りだ)。

MB&F LM Sequential EVO
6時位置には小さな時刻表示があり、2本の小さな夜光針が配置。その上には大きなテンプが鎮座している。しかしクロノグラフはテンプの安定性に大きな影響を与える。クロノグラフを起動すると、振幅が30°も低下し、精度に悪影響を及ぼす。さらに、この時計のふたつのクロノグラフはひとつのテンプで動作するため、通常ならば60°の低下が見込まれ、正確な時刻の維持は不可能になるはずだ。だがマクドネル氏はこの問題を見事に解決した。技術的な話がお好きな方は、この革新について詳しく解説した過去のIn-Depthを参照するといいだろう。

MB&F LM Sequential EVO
LM シーケンシャル EVOの開発であまり語られない側面のひとつは、これが“EVO”であったという事実だ。EVOとは、MB&Fがスポーティなケースを指す際に使う用語で、一体化したラバーストラップ、ガルバニックブラックの文字盤にスーパールミノバ、衝撃吸収システムの“フレックスリング”、高い防水性能を備えている。パテックのようなメーカーがてがけるドレスクロノグラフ(たとえば5004なら、時計から手を引く覚悟もできるほどだ)も魅力的だが、ブランド初のクロノグラフとしてスポーティなケースを採用したのは理にかなっていた。しかし、発表当時からブッサー氏とそのチームは、これが最終形ではないと考えていたのだ。

今年6月、EVOの発表から2年余りを経て登場したのがLM シーケンシャル フライバックだ。変化がある一方で、変わらない部分もある。巨大なテンプやツインバーターシステムはそのままだ。そして今回、このモデルにはさらなる新機能が追加された。それが、両クロノグラフに対応した新しいフライバック機構である。

MB&F LM Sequential Flyback
しかし、LM シーケンシャル フライバックにはEVOケースは採用されていない。代わりに、オリジナルのLM(レガシー・マシン)デザインに立ち戻っている。MB&Fのオロロジカル・マシンがブランドのアバンギャルドな象徴である一方で、レガシー・マシンはほんのわずかに伝統的な時計製造の歴史に寄り添っている。ドーム型の形状やダイヤルプレート上に露出したメカニズムを備えながらも、インディペンデントウォッチ製造の伝統に影響を受けたデザイン要素が随所に見られるのだ。それらは時計を裏返すとよりはっきりとわかる。

MB&F LM Sequential Flyback
このような巨大なギアを備えた時計をほかに知っているだろうか。たとえばオメガのCal.321と比べてみると、この中間車(輪列の一部)のサイズは滑稽なほど大きい。しかし、この時計にはジャン-フランソワ・モジョン(Jean-Francois Mojon)氏とカリ・ヴティライネン(Kari Voutilainen)氏がてがけたLM1から受け継がれた、ジュネーブストライプやアングラージュ(面取り)といった伝統的なウォッチメイキング技術の特徴が数多く詰まっている。さらにクロノグラフならではの興味深く複雑な要素が加わっている点も特に目を引く。

MB&F LM Sequential Flyback and LM Sequential EVO
LM シーケンシャル フライバック(左)とLM シーケンシャル EVO(右)。

新しいムーブメントは、石数が59石から63石に増えている。この数は一見“品質”を誇示するための過剰な装飾のようにも思えるが、決してただの見せかけではない。石が多いことが必ずしも優れたムーブメントを意味するわけではなく、単に多くの石が組み込まれているムーブメントということに過ぎないからだ。

このケースでは、1930年代にパイロット向けに設計されたフライバック(即時リセット機能)を組み込むために、スティーブン・マクドネル氏がムーブメントのレバーやハンマーの機構を大幅に改良する必要があった。LM シーケンシャル EVOの時点で、すでにこの改良に取り組んでいたが、その時点ではふたつあるクロノグラフのうちひとつの輪列だけが完成していた。

MB&F LM Sequential Flyback movement
そのほかにも微妙な変更が施されており、その最もわかりやすい例がパワーリザーブ表示だ。具体的には満タンから空までを指す矢印が変更されている。新しいLM シーケンシャル フライバックでは、ソフトでクラシックな針が採用されているのに対し、EVOではアロー針が使われている。これが時計全体の性能に大きな影響を与えるわけではないが、MB&Fがふたつのモデルを差別化するために細部まで配慮していることが伝わる工夫である。

MB&F LM Sequential Flyback movement
LM シーケンシャル フライバック

MB&F LM Sequential Flyback
わずかに異なるパワーリザーブインジケーターが備わった、LM シーケンシャル EVO。

次に文字盤側の美学に触れていこう。LM シーケンシャル EVOは、2020年に登場したLM パーペチュアル EVOに続く形でデザインされた。EVOモデルの開発では、衝撃吸収機構のフレックスリングシステムに加え、“ダークサイド”な外観が採用されているのが特徴だ。これは、カラフルなダイヤルプレートを保ちながらも、ブラックガルバニック加工のディスクとサンセリフ体のフォントを使用し、すべてを同一平面上にフラットに配置している。また、必要な部分には夜光針が使われている点も興味深い。さらにLM シーケンシャル EVOはMB&Fが“定番”とする、通常のLMシリーズを発表する前にEVOモデルを先行させた初めてのケースでもあった。

新しいLM シーケンシャル フライバックはホワイトラッカー仕上げのダイヤルに回帰。リングにはドーム型の立体感が施されている。フォントもセリフ体に戻り、時刻表示用のダイヤルのローマ数字も復活した。

MB&F LM Sequential Flyback
この時刻表示用ダイヤルには再び傾斜がつけられており、斜めからでも時間が読み取りやすくなっている。また、大きな時刻表示がクロノグラフ表示の邪魔をしないように配慮されている。文字盤側に複雑な機構が搭載されているにもかかわらず、スポーティさを抑えたことで、全体の印象が大きく変わる点が非常に印象的だ。

MB&F LM Sequential Flyback
ほかにもいくつか小さな違いがある。EVOのツインバーターには、プッシュしやすさを向上させるための突起が設けられており、操作の際に視認せずとも触感でプッシャーの違いがわかるようになっている。一方フライバックでは、下部のプッシャーに“Flyback”の文字がエンボス加工されている。ただし、ケースを横から見ると、両モデルの最大の違いがよりはっきりとわかるだろう。

MB&F LM Sequential Flyback
EVOケースは、MB&Fがこれまでに達成してきたデザインのなかでも最も成功したもののひとつかもしれない。ケースをスリムにすることで手首にしっかりとフィットするデザインを実現しており、44mm×18.2mmという大きさながらも、7.25インチ(約18.4cm)以下の細めの手首にも収まる。素材にはステンレスより軽くチタンよりも耐久性が高いジルコニウムを採用。一体型ストラップ付きで、現在の市場で言う“ビッグ”ウォッチのなかでも、抜群の装着感を誇るモデルと言えるだろう。防水性能も80mあるため、少なくともプール程度であれば気兼ねなく使用できるはずだ。

MB&F LM Sequential EVO
新しいLM シーケンシャル フライバックのサイズはEVOと同じだが、今回はプラチナケースにビス留めのラグというより伝統的なケース形状を採用。手首に乗せた際の見た目がまったく異なり、実際につけた感じもかなり重量感がある。防水性能は30mのため、プールに持ち込むのは難しい(修理費に糸目をつけないのでなければ)。確かに、機能的には“優れている”が、物理的にはそうではない面もある。技術的に多くを成し遂げる一方で、実用性はやや控えめなこの時計が、自分にとってはEVOの改良されたムーブメント以上に重要な問いを呼び起こした。それは、“どちらがこの時計のデザインにとって最も真の体験を与えてくれるか?”という問いだ。

MB&F LM Sequential Flyback
MB&F LM Sequential Flyback
答えはひとつではない。確かにクロノグラフにはスポーティさが求められるものであり、EVOはその点で期待に応えている。もしもアメリカの一部で家が買えるほどの高価な時計を購入すると考えるなら、さまざまな場面で“使える”時計を求めるだろう。

夏休みでのビーチや時計愛好家との集まり、大切な人たちとのフォーマルなディナー(さらにはそれ以上のシチュエーション)まで、幅広い場面で着用できる時計かどうかがポイントになる。そう考えるとEVOはより適した選択だといえるかもしれないが、いくつかの場面では実用性に少し無理があるようにも感じる。その点はフライバックも同様であり、ケース形状や文字盤の種類がどれほど上品であっても、ドレスウォッチとしては使いづらいだろう。

MB&F LM Sequential Flyback
ある人が教えてくれたのだが、こういった特別な時計を購入できる幸運な人々には、まったく異なる購入の考え方があるらしい。つまり、EVOならスポーティでアバンギャルドな時計を、フライバックならクラシックで価値のある時計を、といったように、用途を特定して選ぶのだ。すべての場面で使えることを期待せず、特定のシーンで輝く1本を選ぶという考え方である。そうすることで、毎日同じ時計に手が伸びるのではなく、あえて違う時計を選ぶ理由ができるのだ。

MB&F LM シーケンシャル フライバック。44mm径、18.2mm厚のプラチナ製ケース、30m防水。ブルーのダイヤルプレートにホワイトラッカーのサブダイヤル、ブルー仕上げの針。シーケンシャルダブルクロノグラフ機能、“ツインバーター”機能、時・分表示。スティーブン・マクドネル氏が設計した手巻きムーブメントを搭載、619点の部品、63石、パワーリザーブ約72時間。レザーストラップ仕様。価格は21万8000ドル(日本円で約3360万円)。