腕時計の選び方|自分にぴったりの1本を見つけるコツを紹介

腕時計は単なる時刻確認のツールを超えて、ファッションアイテムとしても大切な役割を果たします。しかし、数多くのブランドやモデルが存在する中で、どの腕時計を選べばよいか迷ってしまう人も多いでしょう。

この記事では、腕時計選びで重要となるポイントを詳しく解説します。使用シーンや価格帯、ケースサイズから素材選びまで、具体的な選び方のコツをお伝えするので、自分に最適な1本を見つける参考にしてください。

腕時計選びのポイント

腕時計を選ぶ際は、以下の7つのポイントを考慮することが大切です。

使用シーン
価格帯・ブランド
ケースサイズ・手首サイズ
重さ
ベルトの素材
ムーブメント
デザイン・機能
上記の7つの要素は相互に関連しており、1つだけを重視するのではなく、バランスよく検討することが満足度の高い腕時計選びにつながります。特に初めて腕時計を購入する場合は、どのような場面で着用するかを明確にしてから、他の要素を決めていくとスムーズに選択できるでしょう。

使用シーン
腕時計は、使用シーンによって適切なスタイルが大きく変わります。特に以下の4つのシーンに分けて考えるとよいでしょう。

ビジネス
フォーマル
カジュアル
スポーツ・アウトドア
ビジネス
ビジネスシーンでは、信頼感と品格を演出できる腕時計が求められます。ベルト素材は革やステンレスを選び、文字盤カラーは白、黒、ネイビーなどの落ち着いた色合いが適しています。ケースサイズは中程度から小さめを選ぶことで、スーツの袖口から上品に覗かせることができます。

フォーマル
フォーマルな場面では、よりエレガントさが重要になります。黒い革ベルトが推奨され、文字盤は白や黒といったシンプルなカラーを選びましょう。ケースは小さめで薄型のものが、ドレスコードにも適しています。

カジュアル
カジュアルシーンでは、自由度が高くなります。ナイロンやラバー、革など、さまざまな素材のベルトが選択でき、文字盤カラーやケースサイズも個人の好みに合わせて自由に選べます。

スポーツ・アウトドア
スポーツやアウトドアでは、機能性と耐久性が最優先です。ラバーや樹脂製のベルトは汗や水に強く、黒やカラフルな文字盤でも問題ありません。大きめのケースサイズでも機能性を重視した選択として適切です。

価格帯・ブランド

腕時計の価格帯は選択肢の幅を決める重要な要素です。予算に応じてアクセスできるブランドやモデルが変わってきます。

10万円前後
10万円前後の価格帯では、品質と手頃さのバランスが取れたブランドが豊富に揃っています。

ハミルトン
カシオ
シチズン
セイコー
グッチ
ガガミラノ
ティファニー
ハミルトンは1892年創業のアメリカ発祥ブランドで、クラシックなデザインと確かな品質で人気です。カシオやシチズン、セイコーは日本が誇る時計メーカーで、技術力の高さと信頼性で世界的に評価されています。

また、グッチやガガミラノ、ティファニーなどのファッションブランドからも、個性的なデザインの腕時計が展開されています。

10万〜30万円
約10万円から30万円の価格帯は、スタンダードから中堅クラスの腕時計が選択できます。

タグホイヤー
グランドセイコー
カルティエ
ブルガリ
シャネル
タグホイヤーはモータースポーツとの関連が深く、精密なクロノグラフで知られています。グランドセイコーは日本の最高級時計ブランドとして、極めて高い精度と美しい仕上げが特徴です。カルティエやブルガリ、シャネルなどの高級ブランドからも、エレガントで洗練されたモデルが展開されています。

30万〜80万円
約30万円から80万円の価格帯では、世界的に名高い高級時計ブランドが選択できます。

オメガ
IWC
ゼニス
フランクミュラー
ブライトリング
オメガは月面着陸で有名なスピードマスターやシーマスターで知られ、IWCはドイツ系スイスブランドとして高い技術力を誇ります。ゼニスやフランクミュラー、ブライトリングも、それぞれ独自の技術や美学で多くの愛好家に支持されています。

80万〜150万円
約80万円から150万円の価格帯は、真の高級時計の領域です。

ロレックス
パネライ
ブレゲ
ウブロ
ロジェ・デュブイ
ロレックスは圧倒的な知名度とステータス性を持ちます。パネライはイタリア海軍との歴史を持つユニークなデザインで人気です。ブレゲやウブロ、ロジェ・デュブイも、それぞれ独自の技術と芸術性で世界中で愛されています。

150万円以上
約150万円以上の価格帯は、世界最高峰の時計ブランドが揃います。

オーデマピゲ
ヴァシュロン・コンスタンタン
リシャール・ミル
オーデマピゲやヴァシュロン・コンスタンタン、リシャール・ミルは、時計製造の最高技術と芸術性を追求したブランドで、真の時計好きから愛され続けています。

ケースサイズ・手首サイズ
腕時計のケースサイズ選びは、見た目のバランスと装着感に大きく影響します。手首のサイズに対して適切なケースサイズを選ぶことが重要です。

メンズ
メンズ腕時計では、一般的に以下のようにサイズが分類されます。

35mm以下:小さめ
36〜40mm:普通
41mm以上:大きめ
日本人男性の手首周りは150〜200mmほどが一般的で、腕時計のケースが実際に乗る「上から見た手首幅」は50〜70mm程度です。この手首幅に対して、バランスよく見えるケースサイズは6〜7割程度とされています。

具体的には、手首幅が50mmの人なら35mmまでのケースサイズ、60mmの方なら42mmまでのケースサイズがちょうどよい大きさに見えます。これより小さすぎると貧弱な印象を与え、大きすぎると重厚感が強すぎて不自然な印象になってしまいます。

ビジネスシーンでは38〜40mm程度、カジュアルシーンでは40〜42mm程度が人気のサイズ帯となっています。ケースサイズを選ぶ際は、実際に試着して手首とのバランスを確認することをおすすめします。

レディース
レディース腕時計は、メンズ用と比較してより繊細でエレガントなサイズ感が求められます。

19mm以下:小さめ
20〜30mm:普通
31mm以上:大きめ
女性の手首周りは男性と比較すると細めで、130〜150mm程度が一般的です。上から見た手首幅も40〜50mmほどとなるため、腕時計のケースサイズは26mmから35mmくらいが最適とされています。実際に、各ブランドのレディース向けモデルもこの範囲のケースサイズが主流となっています。

ビジネスシーンでは24〜28mm程度の控えめなサイズ、パーティーなどのフォーマルシーンでは22〜26mm程度の小ぶりでエレガントなサイズ、カジュアルシーンでは28〜32mm程度のやや大きめのサイズが人気です。

また、ブレスレットタイプの腕時計を選ぶ際は、他のアクセサリーとのバランスも考慮すると、より洗練されたコーディネートが楽しめます。

関連記事:自分に合う腕時計のサイズは?大きさに影響を与える要素や手首の測り方

重さ

腕時計の重さは、装着感に直結する重要な要素です。軽すぎると存在感に欠け、重すぎると疲労感を感じてしまいます。

メンズ
メンズ用腕時計の重さは、使用する素材やケースサイズによって大きく変わります。一般的な重さの目安は以下です。

80g以下:軽い
81〜116g:やや軽い
117〜152g:普通
153〜188g:やや重い
189〜224g:重い
軽い腕時計(116g以下)は、長時間着用しても疲れにくく、日常使いに適しています。チタン製のケースやナイロンベルトの組み合わせなどで実現できます。一方で、軽すぎると高級感に欠ける場合もあるため、バランスが重要です。

普通の重さ(117〜152g程度)の腕時計は、多くの人にとって最も違和感なく着用できる範囲です。ステンレス製のケースに革ベルトやステンレスブレスレットを組み合わせた一般的な腕時計がこの重量帯に入ります。

重い腕時計(189g以上)は存在感があり、高級感を演出できますが、長時間の着用では疲労感を感じる場合があります。金やプラチナなどの貴金属を使用した高級時計や、大型のケースを持つスポーツウォッチがこの重量帯になることが多いです。

日常的に着用する場合は、実際に店頭で試着して重さに慣れるかどうか確認することをおすすめします。

レディース
レディース用腕時計は、メンズ用と比較して軽量に作られているのが一般的です。重さの目安は以下です。

30g以下:軽い
31〜48g:やや軽い
49〜66g:普通
67〜84g:やや重い
85〜102g:重い
軽い腕時計(30g以下)は、小ぶりなケースに革ベルトを組み合わせたものが多く、長時間着用しても疲れにくいのが特徴です。ビジネスシーンでの長時間着用や、アクセサリー感覚で楽しみたい人に適しています。

普通の重さ(49〜66g程度)の腕時計は、女性にとって最もバランスの取れた重量帯です。ステンレス製のケースとブレスレット、または中型のケースに革ベルトを組み合わせたモデルがこの範囲に入ります。適度な重量感があることで高級感も感じられ、多くのシーンで活用できます。

重い腕時計(85g以上)は、大きめのケースやゴールドなどの重い素材を使用したモデルに見られます。存在感のあるアクセサリーとして楽しめますが、日常使いには向かない場合もあります。

ベルトの素材
腕時計のベルト素材は、見た目の印象だけでなく、装着感や耐久性にも大きく影響します。それぞれの素材の特徴を理解して選ぶことが大切です。

ブルガリ セルペンティのスタイリング 最も美しい、4つのスタイルを紹介。

スタイルエディターのマライカ・クロフォードが愛用の腕時計をより最高の状態にするための方法を紹介するHow To Wear Itへようこそ。このセクションではスタイリングのコツから現代におけるファッションの考察、歴史的な背景、ときには英国流の皮肉も織り交ぜて、その魅力をお伝えしていこう。

セルペンティに愛情を捧げている。それを考えるたびに、無条件の賞賛と目がくらむようなヒステリックな感覚に見舞われる。当然、最高で神聖な装飾品は、本能的な独特のよろこびを与えてくれる。個人的な満足度を求めないなら、なぜわざわざジュエリーや時計を身につける必要があるのだろうか? 私は指や手首に嵌められた、滑らかで光沢のある金のジュエリーを眺め、それぞれのアイテムが光を受け、身につけているものの色や質感が生み出すコントラストを見るのが好きだ。

私は機能的な服装ではなく、自身の気分を上げるために服を着ている。そしてセルペンティは、私をとてもいい気分にさせてくれる。

ファッションは今や民主的な領域である。以前はルールによって決められた制度だったが、若者と黒人文化が人々の着るものに大きな影響を及ぼし始めた、60年代後半のユースクエイク(若者たちの行動が社会や文化を動かす社会的変化)でそれは崩れた。もちろん、個々人は常にファッショナブルだったが、社会の要求やシーンに応じた服装をしていた。それが70年代に入るとファッションは方向を変え、上流階級が定めた服装の規範を放棄。ダイヤルもこれに伴い、いままで見られなかった自由なスタイルへとシフトしていった。

今日、私たちは快適さ、機能性、そして性的魅力のために、個々で選択をして服を着ている。一部の人にとってスタイリングは、個性を表現する方法となっているが、ほとんどの人にとっては常に従う方法であり続けているだろう。基本的には誰もがほかの人と同じように見られたいと思っているが、それについてはまた別の機会に話そう。なぜなら私のHow To Wear Itファンタジーの世界では、みんながよろこびを自由に表現するために服を着ているからだ。

セルペンティは私を自由な気持ちにさせてくれる。時計的な意味合いの重荷(そうだな、ラグからラグまでとかマイクロアジャスト機能とか)を背負うことなく身につけられるのだ。私は政治的には中立だと考えている。それを着用することで注目を集めるが、それは常に正しい理由と最高の賛辞のためである。直径やジェンダー政治、さらに悪いことに機械的な完璧さについて、議論を巻き起こすことはない。

ブルガリ セルペンティを身につけた女性
女性向け時計市場に伴う、創造性の欠如について考えると、私は多くの時間を憤りの渦のなかで過ごしている。実際のところ、女性が何を身につけたいのか、どのようにして製品を売り出す必要があるのか、真剣に理解しようとしてつくられた女性向けの時計はほとんどないのだ。だから自分が持っていた、時計学的な知識のかけらが突如として脳から流れ出たとしても、それでもなお魅力を感じるとわかっている数少ないモデルに引き寄せられてしまう。そのほうが簡単だからだ。私は本能ではなく直感で選んでいるのであって、傲慢なマニアによるニセモノの時計学を誇示しているわけではない。

セルペンティは基本的にジュエリーなので、自身のパーソナルスタイルに合っていると思う。アッパー・イースト・サイドやヨーロッパのさまざまな都市(いろんなところ)で、数人のスタイリッシュな女性がこれを着用しているのを見たことがある。それを見つけるといつもワクワクする。ベストな目撃例は、パリッとした白いシャツの袖口の下から、時計が控えめな輝きを放ったりのぞいたりすることだ。あるいは(まっさらな肌の)ブロンズ色の腕にセルペンティを巻き付けているのを見るのも好きだ。その人間工学に基づいた設計により着用者の腕と一体化しているが、彼女(セルペンティ)の重なったバングル、完璧なまでにくたっとしたスラウチーバッグ、ダメージ加工されたデニムによちカモフラージュされるも、彫刻のようなユニットとして際立っている。それがクールに見えるのは、カジュアルながら考え抜かれた、彼女が自分に合うと思った方法でスタイリングしたからである。

このゲームの目的は、洋服、アクセサリー、時計を手に取り、それらを自分だけのサルトリア(仕立て)コードへと組み込むことである。既成概念にうまく溶け込ませることで、自分だけのスタイルへと変身できるのだ。

セルペンティはジュエリーであり、またデザインの一部であり、身につけられる彫刻でもある。事実セルペンティウォッチの歴史は1940年代後半、ブルガリで様式化されたトゥボガスウォッチまで遡る。トゥボガスはブランドにとって非常に重要なデザインコードであり、イタリアのインダストリアルルーツの一部だ。“ガス管を高級品に変えられるのはブルガリだけです”と、ブルガウォッチのクリエイティブ・ディレクターであるファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ(Fabrizio Buonamassa Stigliani)氏は言う。“私たちのインダストリアルデザインのルーツの一部なのです。イタリア流に言うと、機能に従った形です”。今年の初め、ボナマッサ・スティリアーニ氏は私にそう語った。

ミッドセンチュリーなセルペンティは、シークレットウォッチとするために、ヘビの頭を蝶番で取り付けたより自然主義的なものだった。これらの初期のセルペンティの多くは、しばしば本物のヘビ皮革の色、模様を真似たエナメル細工で作られていた。セルペンティはさまざまな紆余曲折を経て、多様な金属、サイズ、さらには複雑機構(小さいトゥールビヨンを搭載していたこともある!)を持つ、複数のバリエーションへと姿を変えていった。

私は最近、ニューヨークで開催されたブルガリのセルペンティ 75周年展を訪れた。そこには、神秘的なローマの骨とう品棚やブルガリの秘密の金庫から取り出されたお守りのように、何十年分ものセルペンティが終結していた。宝石で覆われた、光沢のある金色の彼らは、台座の上でとぐろを巻いて休み、私をじっと見つめていた。

幸運なことに、私は関係者たちを説得して、このHow To Wear Itセクションのためにいくつかのアーカイブを貸してもらった。エナメルに塗られたゴールドとペアシェイプのダイヤモンドに臆することなく酔いしれ、私が思う完璧なレディスウォッチを堂々と楽しむときが来た。

ルック1: 恥じない90年代ノスタルジー
ブルガリ セルペンティを身につけた女性
ジャケット/ヴィンテージ、タンクトップ/スタイリスト私物、パンツ/バレンシアガ、シューズ/セリーヌ。

バレンシアガのデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)、グレッグ・アラキ(Greg Araki)監督の『ドゥーム・ジェネレーション(原題:The Doom Generation)』で主役を務めたローズ・マッゴーワン(Rose McGowan)、マーティンローズのトリクルダウン理論(富裕層が富むと経済が回り、低所得者を含む広い層にもその恩恵が及ぶ経済理論)に基づいたモトクロスは、恥じない90年代ノスタルジーの衣装だ。ファッションの回想へのこだわりは、ときに表面的なものに感じられることもある。しかしジェラルド・ジェンタや1970年代のファンボーイ(マニア) / 不健康な熱狂クラブなどは似たり寄ったりなコンセプトだ!

この服装は、ダイヤモンドを身につけるのも好きな現代ファッションの信奉者のためのものである(基本的にこの時計を買う余裕があるかどうかを見極める方法である)。ハイジュエリーウォッチを、普段使いのパンテールやレベルソと同じように扱ってみたらどうだろう? それはロジックの究極の逆転である。いわば逆さまなのだ。理論上は意味をなさないが、効果はある。

いい心構えをしていれば、ベビーブルーのバイカージャケットに、1968年製のルビー入りプラチナ&イエローゴールドのセルペンティをつけることができる。人によっては大胆すぎると思うかもしれないが、私は遊び心があると思う。ジーンズに白いTシャツ、そして高級時計の組み合わせという単なるステップアップであり、同じ対照的なコンセプトなのだ。

このキャラクターは、雑誌『Dutch』や『The Face』のバックナンバーを何度も読み返し、難解なファッションの参考資料の知識を蓄えていった歳月へのオマージュだ。これらのページは、ユースカルチャーがデジタルではなく有形であった時代を垣間見ることができた。しかしそれは過去と未来のどちらにも縛られることなく、両者のバランスを見つけることに尽きる。セルペンティも過去の“遺物”だが、アップデートが施され現代にも合っている。ただ最も重要なのは、これがクラシックであり続けているということだ。

ヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイト。

しばらくのあいだ、自身がニューヨークでアイスランドに行かなかった最後の人間のように思えた。というのも私の心の一部が、なぜほかの人たちと同じことをするのかと抵抗していたからだ。家族の出身地であるノルウェーか、ドラマチックな山岳風景があるパタゴニアに行きたい。でも私がアイスランドを訪れないのは、みんなが好きなテレビ番組を見るのを我慢するようなものだった。アイスランドは大げさに宣伝されていて、期待に応えられないのではないか? と。

アイスランドにあるクヴェルヌフォスの滝は、国内で最も有名な滝のひとつからそう遠くないところにあるが、そこはより静かで、人里離れた体験ができる世界が広がっている。

時計ではよくある話だ。熱狂という列車が街中を疾走し、誰もが乗車できる。ほかの誰もが疎外感に苛まれる。金銭的な理由の場合もあれば(誰もが今話題の時計を買えるわけではない)、自分が遅すぎるということもある。いずれにせよ、時計収集の悲しみの段階のようなもの、つまり否定、怒り、駆け引き、憂鬱、そして受け入れを経験する。しかし長い目で見ることができないのは、時計収集の世界において最大の敵である。熱狂が薄れていくと、最初に物事を偉大にしたものだけが残されるのだ(そして価格が必然的に下がり、時計が小売店から入手できるようになり始める)。

基本的にヴァシュロン・コンスタンタンのオーヴァーシーズのどのブルーダイヤルも、ここしばらくのあいだは入手が困難だった。パテックやオーデマ ピゲのアイコンと同様、オーヴァーシーズはスティールブレスレット一体型の高級スポーツウォッチとして、独自に細かい工夫を施しながら成功を収めてきた。ヴァシュロンのプレスチームは、腕時計を“バンドル”(何かとセットにして売る)していないし、もっとお金をかければブルーオーヴァーシーズを早く手に入れられるわけではないとも断言している。しかし、もし手に入れることができなければ、過剰な宣伝だと自分自身を納得させることができる時計のひとつであることは確かだ。

ヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイト。

ただ不思議なことに、これは高級スポーツウォッチのラインナップのなかでも、言葉は悪いが、実際に“使える”と感じる時計のひとつでもある。ほかの主流であるロイヤル オークは、ケースの打痕や傷の摩耗を考えると登山に携行したい時計ではない。ノーチラスは美しくエレガントだが、実際にはスポーティさを強調するには程遠い。その点、オーヴァーシーズの3針モデルは358万6000円(税込)と高額だが、少なくとも150mの防水性能を備えている(どちらの競合モデルよりも防水性が高い)。さらにこのパッケージは薄くて快適に装着できるほか、レザーやラバーストラップにすぐに付け替えられるクールなブレスレットも備えている。そして、サンバーストのブルーダイヤルは今でも素晴らしいものであり、それがそもそも人々が欲しがる理由でもある。

そこで私は、手首に新しいヴァシュロンのオーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイトをつけて、アイスランドに赴いた。ただこれは、防水性わずか50mであり、オーヴァーシーズのなかで最も頑丈な時計ではない。実際、3月の時点で私はこれをヴァシュロンの“象徴する複雑機構”と呼んでおり、スポーツをする上で特に役立つものではない。価格も629万2000円(税込)と3針よりかなり高い。しかし、私がやろうとしていたことではそれは相応しかった。何よりも私の大きな疑問は、“スポーツウォッチ”がどこまで“ラグジュアリー”に近づけば、そのふたつの考え方が衝突するのかということだった。

魅力的な滝を追いかける筆者。

これは正統なHands-On記事ではないだろう。実際にこのモデルのスペック(41mm径×10.48mm厚のSS製ケース、約40時間のパワーリザーブ、122年先まで修正の必要がないムーンフェイズという事実以外)を詳しく知りたい人は、こちらのIntroducing記事を参照して欲しい。その代わりこれから先の記事では、スポーツウォッチはどこまでラグジュアリーになり得るのかという問いに(そっと)答えるので、これは視覚的な口直しだと思って欲しい。でもその前に、なぜ私がアイスランドにまで来たのか、その理由を説明しよう。

ヴァシュロンは先週、アーティストのザリア・フォーマン(Zaria Forman)氏をブランドの新しいパートナーとして発表した。ほとんどの場合、ブランドパートナーには著名人が起用されるが、彼らがイベントに参加できるのは年に数回、数時間に限られる。しかしフォーマン氏は、ヴァシュロンが彼女に注目するきっかけとなった、気候を意識した彼女のアートワークを深く理解して欲しいと、娘と夫から離れてアイスランドに1週間滞在する予定だった。彼女の大規模なパステル調の風景画や、氷が溶ける様子を細部まで描いた繊細なアートは、“写真のようにリアル”なのではなく、リアルで気候変動が起きているのを見ているような気分にさせる。そして、その作品にさらに命を吹き込むために私たちはアイスランドを横断し、彼女の最新作のインスピレーションの源泉となった風景を見に行く旅に出た。私たちはアイスランドの首都、レイキャビクにあるハルパ(コンサートホール&会議センター)から出発し、ザリア氏の作品を見てこれからの旅に備えることにした。

アイスランドにて、ザリア・フォーマン氏のアートが展示されたハルパ会議センターとコンベンション・センターからの眺め。

ザリア・フォーマン氏のアートは大規模なパステル画が中心だ。長年にわたり、気候変動の最前線にある風景に焦点を当てており、現在は融解する氷の細部にこだわった作品を手掛けている。

ザリア氏が作品に使うパステルは絵画の一種であり、軽くて柔らかい色を表現するのに使用される。

ヴァシュロン・コンスタンタンのアーティストであり、ブランドパートナーであるザリア・フォーマン氏が登壇した。

ハルパで夢を見よう。そしてしばらくのあいだ、都会の風景を見るのはこれが最後となる。

最初の目的地はクヴェルヌフォスの滝だ。友人たちがアイスランドで下手な写真は撮れないよと言っていたので、それがプレッシャーになった。しかし間近へと近づくたびに、いいアングルへと変わっていった。

しかし私としては風景と同じくらい時計のためにそこにいたので、できる限り急いで、この時計を撮影する時間を設けなければならなかった。

私の好きなアングルは、太陽に向かって影を作りながら撮影する“ショートライト”だ。しかし、それは多くの場合、少し遠くへ行って自身(それと時計)を不安定な状況に身を置くことを意味する。いちばん上のオーヴァーシーズの写真で、時計が濡れているのがわかると思うが、本物のスポーツウォッチでは問題ないはずだし、この時計でも問題はなかった。

これもショートライトでの撮影だ。

私たちはフャズラオルグリューブル近くにあった、曲がりくねった川で昼食をとった。ほとんどの人が食事をしているあいだ、写真を撮るのをやめられなかった。

ひび割れ、苔の生えた風景の上からの眺め。

アイスランドで最も象徴するもののひとつが馬だ。彼らは2000年代初頭のエモーショナルなルックス、がっしりした体格、特異な歩き方をしている。もしアイスランドの馬が島から輸出されたら、歩き方を覚えて2度と戻ってこないかもしれない。

普通のクォーターホースよりかなり背が低く、表向きは私が乗るつもりだった。6フィート7インチ(約2m)の私は馬に申し訳ないような気がしたが、彼らはこれ以上馬が悪くなることはないと保証してくれた。

馬のオーナーたちは、私が時計を撮影しているのを見て興奮し、撮影用にモデルまでしてくれた。彼が着ていたセーターは、ロパペイサまたは“ロピ”セーターとして知られている、アイスランドのウールを使った伝統的なニットで、アイスランドにて手作りされているそうだ。アイスランドのウールを使い、アイスランドで手編みされてこそ、真のロピセーターと呼べるという。まさにシャンパンのようなものだ。

毎晩、オーロラの予報をチェックしたが、ムーンフェイズの星や雲の切れ間から覗くわずかな星を眺めるのが精一杯だった。

後ろに見えるのはフャズラオルグリューブル。

Icelandic horses
アイスランドの馬はでこぼこした地形にぴったりだが、私のような観光客にも当然適している。彼らはお互いに鼻を突き合わせるのが好きなようで、仲間外れにされると寂しくなる。だからこの馬は誰も乗っていない状態にもかかわらず、乗馬に出てかけていた。

ウブロ×ダニエル・アーシャムによる新作を発表した。

今週、ウブロはアーティストのダニエル・アーシャム(Daniel Arsham)氏との継続的なコラボレーションをさらに推し進め、MP-17 メカ-10 アーシャム スプラッシュ チタニウム サファイアという斬新な新作を発表した。モデル名には素材名がそのまま使われているが、素材自体は業界で一般的なものだ。それにもかかわらず、その造形はウブロにとってまったく新しいものだ。

中身には、今年初めに発表された小型化、かつ仕上げ面で大きく改良された新メカ-10を搭載。シャイニーマイクロブラスト仕上げのチタニウム製ケースは直径42mm、ケース厚15.35mmとなっている。外観だけを見ると、ケースは一見クラシカルな印象を与える。ブラックラバーの一体型ストラップのあいだに、ラウンドケースが浮かぶように配置されているからだ。だがダイヤルとベゼルの造形は、その印象を一変させるほど独創的である。

アーシャム氏とウブロの初コラボレーション作、アーシャム ドロップレットから直接デザインDNAを受け継ぎ、ベゼルはレーザー加工によるフロスト仕上げのサファイアクリスタルで成形。その造形は水しぶきから着想を得た流麗なフォルムだ。ウブロの象徴であるH形ビスで固定され、その内側には同じスプラッシュ形状を取り入れた見返しリングが広がり、オープンワークのメカ-10 ブリッジを縁取ることで独特なダイヤルデザインを構成している。本作はスモールセコンド、ラック&ピニオン式のパワーリザーブインジケーター、そしてテンプがすべて見える構造となっており、アーシャム氏を象徴するアーシャムグリーンの差し色と夜光が全体をまとめ上げている。

裏返すと、ダイヤルと呼応する形状のサファイアクリスタルを組み合わせたチタン製の裏蓋が現れ、手仕上げによるアングラージュを含む、大幅に改良されたCal.HUB1205の姿を鑑賞できる。MP-17 メカ-10 アーシャム スプラッシュ チタニウム サファイアは世界限定99本で、価格は904万2000円(税込)だ。

我々の考え
アーシャム ドロップレットのポケットウォッチと同様に、このMP-17もきわめてニッチな市場を狙ったモデルだと感じる。彼のデザインタッチを楽しみつつ、どこへでも身につけていける時計を求める人々に向けられているのだ。

第一印象としては、どこか(カルティエ)クラッシュをほうふつとさせるので、クラッシュしたウブロとも言えるかもしれない。これほど流動的で液体的なフォルムを持つ新作を見ると、あのアイコンを思い出さずにはいられない。だがアーシャム氏とのコラボレーションにおいては、アーシャム ドロップレットのポケットウォッチで確立されたデザイン言語とのつながりがしっかりと感じられ、その結果本作は独自の個性をしっかりと保ちながらも、ウブロらしさを堂々と打ち出している。

基本情報
ブランド: ウブロ(Hublot)
モデル名: MP-17 メカ-10 アーシャム スプラッシュ チタニウム サファイア(MP-17 Meca-10 Arsham Splash Titanium Sapphire)
型番: 917.NJ.6909.RX

直径: 42mm
厚さ: 15.35mm
ケース素材: チタン
文字盤: アーシャムグリーンのスーパールミノバを塗布したロジウム、シャイニー仕上げのマイクロブラスト加工
インデックス: アプライド
夜光: あり、スーパールミノバ
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: アーシャムモノグラムの装飾を施した一体型ラバーストラップ

ムーブメント情報
キャリバー: HUB1205
機能: 時・分表示、スモールセコンド、パワーリザーブインジケーター
直径: 33.5mm
厚さ: 6.8mm
パワーリザーブ: 約240時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 29
クロノメーター: なし

価格&発売時期
価格: 904万2000円(税込)
発売時期: 11月12日(水)から11月18日(火)まで、伊勢丹新宿店 本館1階 ザ・ステージにて先行販売。11月19日より、ウブロブティックで発売予定
限定: あり、世界限定99本(ウブロブティック限定販売)

1951年に輝ける星をイメージした時計ブランド、オリエントスターを誕生させた。

自社製ムーブメントを用いた機械式時計を作り続け、2017年からはセイコーエプソンと統合。国産では珍しい機械式ムーンフェイズ機構やシリコン製のガンギ車などを開発し、趣味性と機能性を両立させる時計づくりを進めてきた。

そして2023年からはブランド哲学を深める一方でコレクションの整理・統合を推進し、時計愛好家に向けて新たに“Mコレクション”をスタートさせた。この“M”とはフランスの天文学者シャルル・メシエが製作した星雲・星団・銀河のカタログに収められた天体表記からの引用で、M1はカニ星雲、M31はアンドロメダ銀河など有名な天体を識別するために使われている。

新たに始動したMコレクションは、3つのコレクションでスタートした。もっとも普遍的でフォーマルなデザインをもつのが“M45”で、肉眼でも星が密集している様子がわかることから、太古の時代から世界中で愛されてきた星団“すばる/プレアデス”の名を冠している。時代性を機敏に取り入れるのは“M34”だ。“ペルセウス座”の語源であるギリシャ神話の勇者ペルセウスを思わせるシャープなラインを特徴とする。そしてアクティブなスポーツウォッチの“M42”は、“オリオン座”のこと。オリオンの父である海神ポセイドンにちなんで高い防水性を備えたアクティブなモデルとなる。

これまでの日本の時計は技術的には世界レベルであったものの、モデル名と顔やスタイルが一致しにくかった。すなわちそれはブランド戦略が曖昧だったということでもある。そこで前述の通り、オリエントスターではすでに確立した技術をベースにしつつ、宇宙をイメージさせるロマンティックな時計としてそれぞれ基本デザインを明確に規定をしコレクションを整理・統合。“星々”や“宇宙”など各モデルに名称にちなんだストーリーとデザイン、そして機能を与えることで、モデルごとの個性を明確化させた。それは長期的な視点に立った時計づくりを行なっていくという決意表明であり、技術力だけでなく変わらない価値をも提供しようという、これまでになかった新しい戦略をオリエントスターは打ち出したのである。

神秘的なオーロラを表現した色の揺らめき

M34 F7 セミスケルトンブルーグリーングラデーションダイヤル

Ref.RK-BY0001A 14万3000円(税込)
SSケース、SSブレスレット。ケース径40mm×ケース厚13mm(全長47.3mm)。10気圧防水。自動巻き(手巻き付き) Cal.F7F44:24石、2万1600振動/時、約50時間パワーリザーブ。本ワニ革ストラップ付きのRef.RK-BY0003Aは15万4000円(税込)で、オリエントスター プレステージショップにて販売。

“M34”はオリエントスターの中核をなすコレクションだ。コレクション名になっている“M34”は約100個の恒星で構成されるペルセウス座の星団のことで、毎年8月に流星群が出現するため天体ファンからも人気が高い。ちなみにこのペルセウスとは、ギリシャ神話における全能の神ゼウスの息子ペルセウスのことであり、ここにも宇宙や星の世界観を取り入れている。

新作のM34 F7 セミスケルトンは、ダイヤルに工夫を凝らしたモデルだ。9時位置からムーブメントを見せるスケルトンデザインも気になるが、何といってもポイントとなるのはダイヤルの色調である。これは神秘的なオーロラを表現したもので、その表現には白蝶貝にグラデーション塗装を重ねるという手法が取られた。ダイヤルのベースとなる白蝶貝の中央部分にはグリーン、12時位置と6時位置へと変化していくようにブルーのグラデーションを施した。

ある角度では白蝶貝の班の模様とグラデーションが際立ち、またある角度で見ると班の模様が控えめになる代わりに落ち着いた色味が際立つ。それはまさに空の上で不思議に揺らぐ光のカーテンが織りなすオーロラの色であり、美しい夜空の情景を巧みに表現している。

白蝶貝とグラデーション仕上げでオーロラを表現したM34 F7 セミスケルトンだが、華やかなデザイン表現だけが魅力ではない。マニュファクチュールブランドの時計として確かな性能を秘めている。時を告げる実用品であるからには視認性を犠牲にすることはできない。そこで針をしっかり読み取るために、ダイヤルのブルー系とは補色の関係になる金色の針やインデックスを使用。しかも上面は筋目仕上げ、斜面をポリッシュ仕上げにすることでメリハリのある輝きをみせる。

12時位置にはパワーリザーブインジケーターが収まる。連続駆動時間は約50時間だが、必要にして十分なレベルであろう。そしてケースデザインの特徴は、ケースサイドやラグに現れる。キレのある斜面を複数組み合わせることで美しい稜線を作り、美しい陰翳を作りだす。

そして搭載するムーブメントには自社製のCal.7F44を採用する。日差+15~-5秒の精度を確保、リーズナブルな価格帯のモデルでありながら、自動巻きローターには筋目模様を入れており、シースルーバックから見える姿にもこだわる。

M34 F7 セミスケルトン

同じ白蝶貝のダイヤルベースでありながら、グラデーションを巧みに扱ったバリエーションモデルもラインナップする。ブルーグラデーションダイヤルよりも柔らかな表情を作るブラウンダイヤルは、公式オンラインストア「with ORIENTSTAR」にて販売される。そしてシックな印象のチャコールグレーダイヤルは金色針が際立ち、より華やかに見せる。こちらは300本の数量限定モデルだ。

先鋭的なスタイルと力強いディテールを与えて日常的に幅広いシーンでつけることを想定したM34に対して、オリエントスターの歴史的なモデルにも見られるディテールを持ち、ブランドの伝統を継承するのがM45だ。伸びやかな長めのラグと広く取られたダイヤルをデザイン上の大きな特徴とし、特に新作のM45 F7 メカニカルムーンフェイズにおいてはローマン数字のインデックスとリーフ針、そして細いベゼルがドレッシーな雰囲気を作り出している。

M45 F7 メカニカルムーンフェイズは文字どおり、国産では珍しい機械式のムーンフェイズウォッチであり、M34以上に凝ったダイヤル表現が見どころだ。白蝶貝にブラウンのグラデーション仕上げを施して表現したのは、秋田県の山奥にある神秘的な湖として知られる田沢湖。晩秋の日沈直後、湖面が赤く輝く一瞬の静寂と叢雲(むらくも)のなかに見える美しいシルバーの月という、日本の秋の情景を時計で表現しているのだ。しかもベゼルにもブロンズ色のメッキを施しており、ダイヤルのなかの情景は、そのまま時計の外へと繋がっていく……。宇宙や星を軸とした美しいストーリーを紡ぐオリエントスターらしい時計だ。

こうした凝ったダイヤルをより一層美しく見せるためには、技術的な進化も欠かせない。例えばサファイアクリスタル風防には、多層膜コーティングで耐傷性を高め、さらに表面の防汚膜によって汚れにくく撥水性も高める特許技術の“SARコーティング”を施している。もともとは光の反射を抑えることで風防の存在感を感じさせないほどの優れた視認性を与えるための技術だが、これが美しいダイヤルを際立たせるのにもひと役買っている。さらに⽇付け⾞と月齢⾞のあいだと上にそれぞれ押さえ板を設け、さらに⽇付け回し車を4時位置側に配置する特許技術は、6時位置に日付とムーンフェイズの同軸表示を実現させるためのものだが、結果としてダイヤルスペースを確保することにつながり、機能的でありながら多彩なダイヤル表現を可能にした。どちらもこの新作から導入された技術ではないが、新生オリエントスターが掲げる“人の感動を呼び起こすものづくり”には欠かせないものである。

日本人は古来より季節の移ろいを風や自然、月や星などで感じる感性がある。そんな日本ならではの時間の流れを技術力で表現したM45 F7 メカニカルムーンフェイズは、極めて日本的な時計といえよう。

太古の人々は太陽や月、星を観察することで時間の概念を生み出し暦を作った。自然のなかで空を見上げることこそが、もっとも純粋に時間と向き合うことなのかもしれない。

オリエントスターの時計たちは、モデル名の由来やダイヤルの表現、そしてムーンフェイズのようなメカニズムのおかげで、日常的なシーンのなかでも美しい自然を感じることができる。そして時計を眺めるその時間さえも楽しめるような、そんなロマンティックな魅力を持っている。

暑かった夏がようやく終わり、夜風を感じながら散歩をする気持ちよい季節がやってくる。ビルの谷間から見える月に心を奪われ、夜空に瞬くすばるやオリオン座の変わらぬ美しさに心をいやす。そんなちょっとした瞬間を幸せな時間に変えることができる時計、それこそがオリエントスターが持つ最大の魅力なのである。