H.モーザーが一 新しいストリームライナー・センターセコンド スモークサーモン フュメダイヤルを発表した。

H.モーザーが一体型ステンレススティール製ブレスレットモデルを刷新し、新しいストリームライナー・センターセコンド スモークサーモン フュメダイヤルを発表した。同モデルは1年間のみ生産される限定モデルとなっている。文字盤には、ほかの限定ダイヤルでしか見られない縦縞のグリフェ仕上げを採用。この仕上げは光と調和すると、ライトブラウンからミラー効果のあるブラックへと表情が一変する。

Moser Streamliner
1920年代から1930年代で活躍した高速列車からインスピレーションを得たストリームライナーケースはそのままに、ラグを廃して一体型のSS製ブレスレットを採用。ミドルケースの側面が窪んでおり、サテン仕上げとブラッシュ仕上げ、そしてポリッシュ仕上げを交互に施している。この対照的な仕上げはブレスレットにも受け継がれており、非常に複雑な構造のリンクは垂直方向のサテン、ポリッシュを組み合わせた仕上げを取り入れている。スーパーコピー代引きダイヤル側のサファイアはドーム型風防、裏蓋はシースルーバック仕様となっていて、そこからモーザーのダブルストライプ仕上げを施したCal.HMC200ムーブメントが鑑賞可能だ。ソリッドゴールド製ローター、そして最低3日間のパワーリザーブを実現している。

H. Moser Streamliner Smoked Salmon brown dial
特別仕様のこのモデルは1年間限定の販売で、価格は312万4000円(税込)となっている。

我々の考え
まずH.モーザーのオーナーであるベルトラン・メイラン(Bertrand Meylan)氏は、同ブランド主力のストリームライナー・センターセコンド “グリーン・ドラゴン”モデルとの別れをほのめかした。そんななか、同氏の弟であるブランドCEO、エドゥアルド・メイラン(Edouard Meylan)氏が、自身のInstagramに釣り用のフライを投稿している。ふたりの兄弟、およびブランドは新たなリリースを予告し、我々を楽しませる方法を知っていたのだ。そして今回、最新カラーの“スモークサーモン”ストリームライナーは、かつての鮮やかなグリーンダイヤルと比べると、少し真面目で控えめな印象と言えるもので、いい気分転換にはなるだろう。

H. Moser Streamliner
ストリームライナーは私のお気に入りの腕時計のひとつで、あまり野暮ったいバリエーションでは見かけない。写真で見る限り、スモークサーモンダイヤルを強調したブラウン寄りのチョイスはいいと思うのだが、採用しているグリフェ仕上げにより“木目”調が強すぎないか、少々気になるところだ。だがモーザーの強みのひとつである、文字盤のセンスに疑いを持ったことはない。ということで、実際に見てみて光と色の遊びを存分に味わわないことには、想像の域を出ないと思う。

基本情報
ブランド: H.モーザー(H. Moser & Cie.)
モデル名: ストリームライナー・センターセコンド スモークサーモン(Streamliner Centre Seconds Smoked Salmon)
型番: 6200-1207

直径: 40.0mm
厚さ: サファイアクリスタルなしは10.3mm、ありは12.1mm。
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: スモークサーモングリフェ仕上げダイヤル
インデックス: アプライド
夜光: グロボライト製®の時分針
防水性能: 120m
ストラップ/ブレスレット: 一体型SS製ブレスレット、フォールディングクラスプ、3つのSS製ブレード、モーザーロゴの刻印

H. Moser Streamliner movement
ムーブメント情報
キャリバー: HMC200
機能: 時・分・センターセコンド
直径: 32.0mm
厚み: 5.5mm
パワーリザーブ: 約72時間
巻き上げ方式: 両方向巻き上げ式自動巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 27
追加情報: 独自のシュトラウマン®ヒゲゼンマイ、モーザーストライプ仕上げのムーブメント

価格 & 発売時期
価格: 312万4000円(税込)

DB28の最新作は、時計の小型化というトレンドに沿った進化を遂げている。

ドゥ・べトゥーン DB28のダウンサイジング版となるDB28xs スターリーシーズを発表。

ドゥ・べトゥーン(De Bethun)のラインナップにおいて中核をなすDB28は、長きにわたって時計製造とデザインの両分野において特異かつ独特な視点を表現してきた。今回この一風変わったスイスのブランドは、DB28をより小さなケースに収めた最新進化形となるDB28xs スターリーシーズ(DB28xs Starry Seas)を発表した。美しい手巻きムーブメントと特別な文字盤を備えたドゥ・べトゥーンの“エクストラスモール(xs)”モデルは、ブランドが有するユニークな魅力をウェアラブルでモダンな存在へと昇華することを目的としている。

まずはケースについて話をしよう。DB28xs スターリーシーズは直径38.7mm、厚さ7.4mmで、ケースとヒンジ付きラグはいずれもグレード5のチタン製。表面には鏡面仕上げが施されていいる。文字盤にはブランドロゴらしいものがまったく見当たらず、外周部のシルバーのチャプターリングに時・分表示とロゴの両方が記されている。

ドゥ・ベトゥーンのDBシリーズの多くがそうであるように、文字盤はその時計の印象を大きく左右する。DB28xsの場合、文字盤にはブルーのポリッシュ仕上げを施したグレード5チタンを使用。“ランダムギヨシェ”パターン(ドゥ・ベトゥーンは世界初だと語っている)で表面を仕上げ、波打つような文字盤の表面に、ホワイトゴールドの星がまるで浮かび上がるように配置されている。ゆえにスターリーシーズ、星の海なのだ。

ブルーダイヤル上に星を模した装飾を施した外観は、DB28 スターリースカイ(DB28 Starry Sky)やDB25 スターリーバリアス(DB25 Starry Varius)といったブランドの過去の作品から派生したものだ。針は文字盤に表された静謐な空間の上に浮かんでおり、内部にはドゥ・ベトゥーンの手巻きCal.DB2005を搭載している。このキャリバーは過去にいくつかのDB25で確認されており、6日間のパワーリザーブと2万8800振動/時で時を刻む。

この時計がドゥ・べトゥーンブランドに属し、D28にラインナップしていることはいうまでもないだろう。DB28xs スターリーシーズは9万ドル(約1257万円)で販売予定であり、この値段に関しては少々驚きを覚えるかもしれない。

僕が時計に興味を持つようになってからこれまで、ドゥ・べトゥーンのパーソナリティ、遊び心、そして伝統的な時計製造のコンセプトや手法とネオフューチャリズムの要素を織り交ぜる能力(彼らの“ドリームウォッチ”を見てみて欲しい)を高く評価している。2013年に初めて行ったバーゼルワールドのハイライトがこのブランドで、それ以降、僕はこのブランドの時計、特にDB28をファンとして遠くから見守っている。

De Bethune DB28xs Starry Seas
そう考えると、直径39mmというサイジングは理にかなっていると思う。しかし、DB25QPのように40mm径の時計もあるものの、DB28シリーズのサイズは43〜44mmが中心だ。この手のサイズ感は2000年代半ばから後半にかけてドゥ・べトゥーンが注目を浴び始めたころ(ブランドの設立は2002年)に流行したものだ。しかし時代と人々の好みは常に変化するのである。フルサイズのDB28も、ラグがケースから分離して手首に沿うようになっているために不思議とうまくフィットするのだが、39mm径のDB28シリーズというアイデアは個人的に大歓迎だ。

もし新たにドゥ・べトゥーンを購入するにあたって実際にアドバイスを求めているのなら、僕に言えることは正規販売店に立ち寄った際にひとまわり大きなDB28とDB28xsを比較する機会を逃さないことだ。たとえそれがコントラストを確かめるだけだとしても意味がある。

De Bethune DB28xs Starry Seas
サイジングをのぞけば、DB28xs スターリーシーズにはDB28のすべての要素が詰め込まれている。高価だが美しく繊細で、個性に溢れた時計だ。初めて試着した2013年当時から変わらず、いまだ僕はDB28のオーナーになれそうな気配はない。だが、もしその状況が変わるようなことがあれば、DB28xsは間違いなく有力な候補になるだろう。

基本情報
ブランド: ドゥ・べトゥーン(De Bethune)
モデル名: DB28xs スターリーシーズ(DB28xs Starry Seas)
型番: DB28XsTIS3

直径: 38.7mm
厚み: 7.4mm
ケース素材: グレード5チタン
文字盤色: ブルーチタンの文字盤にランダムなギヨシェパターン
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: チタン製ピンバックル付きアリゲーターレザーストラップ

db28xs
ムーブメント情報
キャリバー: DB2005
機能: 時・分
直径: 30mm
パワーリザーブ: 6日間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 27
追加情報: 自動調整ツインバレル パワーリザーブ、フラットターミナルカーブ巻き上げヒゲゼンマイ、シリコン製ガンギ車

価格 & 発売時期
価格: 9万ドル(約1257万円)

ファンに人気のある時計にいくつか手を加えたことで、

パルミジャーニ・フルリエは今絶好調だ。その理由は、パルミジャーニが2週間前にスティール製と18Kローズゴールドの両方で発表した、新しい42mmのトンダ PF スポーツ クロノグラフ(それと3針のトンダ PF スポーツ オートマティック)を見れば一目瞭然だ。このクロノグラフはトンダ GTシリーズよりも薄いが、ほかのトンダ PF クロノグラフよりも(12.4mmに対して)12.9mmとわずかに厚い。このラインの真髄ともいえるケースシェイプとラグは、これまでのPF クロノグラフによく似ている。全体的な変化はかなり小さいが、せっかくうまくいったその成功になぜ手を加えてしまうのか?

グイド・テレーニ(Guido Terreni)氏がパルミジャーニ・フルリエのCEOとして指揮を執りはじめたこの数年のあいだで、ブランドに新しい息吹が吹き込まれたように思える。まあ今や時が経っても色あせないブルガリ オクト フィニッシモが発売されたとき、テレーニ氏がブルガリの指揮をとっていたのだからそれほど驚かないが、それでも2回やって2回とも成功するのは当たり前ではない。

どういうわけか、テレーニ氏とチーム(自身の名を冠したミシェル・パルミジャーニ氏を含む)の手により元の地位へと返り咲き、ブランドは再び脚光を浴びることになった。テレーニ氏はブランドが一本調子にならないよう、ブランド全体のラインナップを充実させることを意識していると話してくれたが、トンダコレクションは最もポテンシャルが高いゆえに改善が急務だった。

彼は間違っていなかった。2020年にトンダ GTを、2021年にトンダ PFとしてトンダシリーズを再デザイン・再発売させたことで、パルミジャーニに対する市場の関心を再び高めた。その理由は、新しいスポーツモデルのようにリリースされるたびに明らかになっている。

トンダ PF スポーツ クロノグラフに焦点を当てると、一見して最も明らかな変更点はストラップで、これはトンダとトンダ GTモデル(および少数の変わったトンダ PF)で最もよく見られるオプションである。この場合、時計には手作業で縫い合わせたコーデュラ加工のラバーとデプロワイヤントクラスプが付属。ストラップはケースのラグのあいだにシームレスに収まっているが、ストラップを交換するために必要に応じて裏側から取り外すことができる。

夏にメタルブレスレットからラバータイプに交換するのが好きな人にとっては、このオプションはかなりうれしいものだろう。一方、私は夏のベタベタした時期を金属製のブレスレットで過ごしているため、パルミジャーニチームに質問をしてみた。新しい時計にトンダ PFのメタルブレスレットを付けることはできるか? と。はい、と言われたが、でもそれは彼らが目指していたスポーティさのポイントに合っていたのだと思う。

時計内部にはCOSC認定ムーブメントのPF070を搭載する。このムーブメントは、これまでのトンダ PFクロノグラフに搭載されていた時・分・スモールセコンド、日付表示、クロノグラフを備えた完全一体型のクロノグラフであるパワーリザーブは従来どおり(約65時間)で、振動数(3万6000振動/時)、直径、厚さ、石、部品点数なども以前のものと同様だ。手作業で仕上げられたエッジの面取り、コート・ド・ジュネーブ装飾の見栄えも美しい。クロノグラフのプッシャーは均等な押し心地で、作動が成功したことがわかる満足感がある。実際のところ、(厳密にこれはPF070/6710だが)唯一の違いは(フェラーリ・250GTOにインスパイアされた)異なるローターであり、それ以外はすべて同じである。

外装の仕上げも素晴らしく、ポリッシュ仕上げとサテン仕上げがされたSSまたは18KRGを用意。しかしブレスレットがもたらす“輝き”がないストラップのほうが、そのすべてがもう少し静かでエレガントに感じられる。

もうふたつある大きな変化は、ダイヤル側から見てよくわかるものだ。おそらく、この時計の最も“スポーティ”な要素は、パンダダイヤルへの移行だろう。文字盤のメイン部分にはブランドのクル・トリアンギュレールパターンのギヨシェを施しているが、インダイヤル(ランニングセコンド、30分積算計、12時間積算計)はよりマットなブラックを採用している。一方、ベゼルのローレット加工には65カ所の切り込みがある。ブランドはこの切り込みが光をより効果的に演出し、時計を少し大胆にしていると述べている。正直にいうと、私自身は気づかなかった。オリジナルのトンダ PFベゼルの切り込みの正確な数や美的感覚まで知っている人がどれだけいるだろう?

針はケースの色と一致しているが、実際にはSSバージョンと同じ金属ではない。実際には、18Kゴールド製ロジウムメッキのスケルトンデルタ針を使用しており、上部にブラックの夜光塗料を塗布している。またクロノグラフ針にはロジウムメッキのSSが使われている。RG製ケースの場合は針もRG製だが、クロノグラフ針はRGメッキのSS製となっている。すべての夜光はブラックのスーパールミノインデックスと調和している。

おそらくいちばん目立つのは、残念ながら日付表示窓だろう。私の好みでは、このブランドは日付ウィンドウの色を文字盤に合わせて、よりよいバランスを保つことができたはずなのだ。

ここで少し触れておきたいのは、このブランドがリリースした3針のトンダ PF スポーツ オートマティック 40mmの日付が、ダイヤルの6時位置にあるということだ。仕上げは同様に全体的に素晴らしいが、クロノグラフ特有のスポーティさが欠けている。ドレッシーではないが、スポーティともいい難い時計だ。

それではこれらの新しいスポーツモデル、特にクロノグラフについて詳しく説明しよう。SS製の場合、価格は415万8000円だ。ただRGの場合、720万5000円(ともに税込)とかなり高くなる。ヴァシュロン・コンスタンタンが今年初めに発表した新作、パンダダイヤルのオーヴァーシーズ・クロノグラフが510万4000円(編集注記:発表時は税込で462万円)であるのと比べると、スティール製ウォッチとしては高額である。ただしパルミジャーニの時計は年間の生産本数がはるかに少ないため、個人の好みに左右される面もある。

価格に対する個人的な感情はおいておいて、この時計はトンダ PFコレクションが発展する興味深い姿を表しているように思う。いい製品が軌道に乗ったとき、ブランドが意識しているように見えるのだ。その優れたアプローチとは、このブランドが狙っているような複雑機構の開発(毎年、新しくて斬新なコンプリケーションを発表すること)であり、同時に拡大していく顧客層に幅広い選択肢を提供するために、ラインナップの隙間を静かに埋めているようだ。お金さえあれば、パルミジャーニはトンダ PFを欲しがるすべての人のために何かを用意しようと一生懸命努力している。これに腹を立てるのは難しいのだ。

針のない、まるで魔法使いの水晶玉のような時計をご紹介しましょう。

フランス発の独立系時計メーカー、トリローブ(Trilobe)が2018年のデビュー以来作り続けている、小さくて針のない不思議な時計に親近感を抱いています。回転するディスクとリングで時間を知らせるという彼らの試みは実にユニークで、それが理由で僕たちはこの時計を取り上げることになりました。あまりに気に入りすぎて、同ブランドのヌイ・ファンタスティック(Nuit Fantastique)のHODINKEE限定モデルでコラボレーションまで果たしたほどで、僕は妻に購入の許しを得ようと半ば強引に説得したのを覚えています(悲しいことに、僕がそのアイデアをほのめかすや、妻は冷ややかな視線を送ったわけですが)。その戦いに敗れたとはいえ、僕は幸運にも、より前衛的なモデルであるユヌ・フォル・ジュルネ(Une Folle Journéeはフランス語で“荒ぶる1日”の意味)と1週間ともに過ごし、このワイルドなデザインをまとう時計が日常をともに過ごすに相応しいか、動画に収めることができました。

ユヌ・フォル・ジュルネを見てまず気づくのは、多くの現代の時計とは異なり、針がないことでしょう。その代わり、スケルトンダイヤルに3つのエキセントリックなリングがあり、いちばん大きなリングが時、真ん中のリングが分、そしていちばん小さなリングが秒を表しています。慣れるのに少し時間がかかりましたが、これらはすべて反時計回りに回転しています。それらを支えるのは、リング下の歯車に取り付けられた異なる高さの軸です。

これらの浮遊するリングを保護するため、この時計はケースからなんと10.2mmも突き出た巨大なドーム状サファイアクリスタル風防を備えています。これは最近の時計ではあまり見られないレベルの、奥行きと立体感を演出しています。基本的なコンセプトは、よりフラットなニュイ・ファンタスティックと同じですが、このモデルではリングが実際に浮いているかのような錯覚を起こさせます。誰もこんなの見たことないと僕は断言できますよ。

ここまで聞けば、この時計はかなり変わり種に思えますが、グレード5のチタンケースは実のところ伝統的なデザインを踏襲しています。ポリッシュ仕上げでミドルケースにはサテン仕上げが施され、通常の3時位置にリューズを備え、厚さはわずか10mm(風防を除き)、直径は40.5mmです。現代の基準からすれば、このサイズは多くの人にとって着用可能なサイズであり、それこそがこのワイルドな時計がとても着用しやすい理由なのです。確かに、サファイアクリスタルは少し出っ張っていて、フラットなタイプに比べると物にぶつけやすいのですが、それ以外はほかの時計と同じようにレザーストラップで着用できます。また僕はいつも何かに時計をぶつけることを心配しているので、ユヌ・フォル・ジュルネを身につけているときはすべての時計と同程度の慎重さをもって扱いました。

ユヌ・フォル・ジュルネと過ごした1週間について、まだまだお伝えしたいことがあるのですが、この時計について説明を聞くよりも、実際に時計を眺めることほど楽しいものはありません。ですから、この魔法使いの水晶玉のような不思議な動きを動画でぜひ確かめて欲しいのです。

ブリュー ヴィンテージにインスパイアされたふたつの時計で対決。

手頃な価格のハイブリッドメカクォーツウォッチが、ふたつのヴィンテージの価値を味わわせてくれるが、どちらに軍配が上がるだろう?

私はカッコいい“ハイ/ロー”スタイルが好きだ。本当に大好きなのだ。ジーンズにTシャツ、そしてゴールドのクロノグラフ(欲を言えばパテック 5004Jのようなコンプリケーションがいい)。5004を所有することはないだろうが、男には夢がある。

リストのもうひとつにはロレックス Ref.6263 デイトナのイエローゴールドか、あるいは金無垢のRef.6239がある。正直に言おう。私の史上最高の憧れの時計リストトップ5にはRef.6264 “ジョン・プレイヤー・スペシャル”が入っている。本当に、ゴールドのクロノグラフにブラックギルト文字盤の組み合わせに勝るものはない。

その好例が、PVDゴールドコーティングの316Lステンレススティール製ケースにブラックダイアル、そしてハイブリッドメカクォーツムーブメントを搭載したブリュー・メトリックだ。もちろん本物の18Kゴールドではないが、475ドル(約6万8000円)という価格は、ここ1週間ほど私にとっては痒いところに手が届く値段であり、予算内でなんとかやりくりすることができるものだった。また、この時計はオマージュを適切な方法で表現しており、愛すべきデザインのよさを示唆しながらも独自の個性を放っている。

私はブリューの本拠地であるニューヨークに住んでおり、創業者のジョナサン・フェラー(時計愛好家のあいだでは有名人だ)に会っていたこともあって、ブリューウォッチは以前からよく目にしていた。このブランドが目指している大きなポイントのひとつは、手の届きやすい価格もさることながら、似たような美的感覚に流されがちな時計のなかでブリューを際立った存在としている、まとまりのある独特のデザイン言語にある。それは外部からのインスピレーションを取り入れた場合であっても同様だ。

ブリューの初期のレトログラフは、ジェームズがOne to Watch記事で取り上げたように、エスプレッソショットタイマーという目的に特化したツールだった。(ジェームズがハンズオンで取り上げた)メトリックは、1970年代のヴィンテージオメガの“ジェダイ”クロノグラフに近いモデルだが、ケースとブレスレットの継ぎ目のないデザインで、ヴィンテージゼニスのエル・プリメロ “TVケース”のような丸い文字盤のデザインでもある。ケースは幅36mm、長さ41.5mm、厚さ10.75mmとバランスがいい。理論的には横から見ると“小さい”のだが、これはそうしないとブレスレットとケースの形状が手首を支配しすぎてしまうため必要なのだ。

内部にはセイコーインスツルメンツ(SII)のCal.VK64A メカクォーツムーブメントを搭載している。スムーズなスイープを実現するメカニカルクロノグラフモジュールと、時計全体を駆動するクォーツムーブメントが組み合わされたものだ。

特にヴィンテージ・ゴールドクロノグラフの雰囲気を楽しみたいが、本物には手が出ないという人には、この価格でこの時計に勝るものはないだろう。それとも、この時計に打ち勝つことのできるものがあるだろうか?

私の黒塗り時計好きはよく知られているし、そのことについてとやかく言うつもりもない。だが、そのなかの最高峰はオルフィナが製作したポルシェデザイン クロノグラフ1であることは言っておこう。ヴィンテージの“コーティング時計”コレクションを作ることを夢見ながら、この1年間、何度もそのオリジナルウォッチの購入を検討した。価格はロレックスのどのデイトナよりも、ましてやヴィンテージのゴールドデイトナよりも遥かに手が届きやすいが、ここ数年、私は大きな買い物をするために貯金をしていて手に取ることはなかった。しかしブラックコーティングが施された逞しいスティールケース、経年変化したイエローの夜光、そして印象的なオレンジのクロノグラフ針への思いは変わっていない。

ここで私は問題に直面している。というのも、ブリューがブラックPVD加工を施したメトリックで、オマージュデザインと同じ思慮深いタッチを与え、素晴らしい仕事をしてくれたからだ。コピーではなく模倣がお世辞の最たるものであるならば、ポルシェデザインは顔を赤らめるはずだろう。この時計は豪華装備の新型ポルシェデザイン クロノグラフ1の市場と共食いすることはないだろうが、世の中には新作やヴィンテージのポルシェデザインウォッチには手が届かないものの、私と同じようなものを愛する人は大勢いる。

このふたつのどちらかを選ばなければならないのは、確かに難問だ。公平に見て、ブリュー・メトリックの5つのデザインはどれもしっかりしているが、今回は真っ向勝負で、私は好きなほうを選ぶつもりだ。正直なところ、この原稿を書いている時点でもどちらが勝つかわからない。

というわけで、以下のようにひとつの時計が単体としてどれだけ素晴らしいかはさておき、ディテールのいくつかに取り組んで、地球上で最も分析麻痺に悩まされる人間のひとりある私が勝者を選べるかどうか見てみよう。

まずは私が最も注目する文字盤から見ていこう。ブラックPVDのメトリックでは、深みのあるマットブラックの文字盤に真っ白な文字が浮かび上がり、ポルシェデザインのクロノグラフ1のフォントに似た印象的な印象を与える。また、オレンジの秒針と積算計は、インスピレーションの源となった象徴的なオレンジのクロノグラフ針とマッチしている(すべてのオリジナルモデルがインダイヤルにこれらの針を備えていたわけではないが、それは些細なことだ)。針とアワーマーカーに施された蛍光塗料もヴィンテージウォッチに見られるようなクリーミーな色合いだ。

黒の文字盤はメトリックの全体的なデザインには合うが、ヴィンテージのデイトナにインスパイアされた時計には必ずしも合わない同じフォントが使われている。この場合、それはいいことかもしれないし悪いことかもしれない。私はブリューが独自のデザイン言語を体系化したことに評価しているが、ブラックのメトリックを見たあとにこのフォントを見ると、この時計がアイコンの引用をいかにうまく成し遂げたかを考えさせられる。しかし文字盤はブラックとゴールドのツートンカラーで、それほど煩雑な印象はない。“ジョン・プレイヤー・スペシャル”の雰囲気を出すために外側のトラックをゴールドかシャンパンにしたらどうだろうか。もしかしたら窮屈すぎるかもしれない。いずれにせよ、私は勝者を手に入れた。ブラックに1点だ。

ブレスレットはどちらも素晴らしい。デザインは同じで、ブリューではピンを押し出してリンクを簡単に外すための工具と説明書まで付属している。 これは時計コミュニティに初めて参加する人が購入する可能性のある手頃な価格の時計にはありがたい機能だ。私はいつも工具を置き忘れてしまうので、これも助かる。残念なことに腕毛がブレスレットに絡まるというトラブルがあったが、これは生まれ持ってのことであるし、ほかの時計でもよくあることだ。どちらのブレスレットもサテン仕上げとPVDコーティングが施されている。

ブラックPVDは指紋が目立ちやすく、私はブラックの時計が大好きなのだが、ゴールドモデルのサテン仕上げのブレスレットは光を楽しく受け止めてくれる。そう、これは本物のゴールドではないのだが、いいものを台無しにするつもりはない。ゴールドに1点だ。

着用感に関しては、何よりも“雰囲気”で選ぶのがいちばんだ。理論的には、どちらの時計も同じように着用できる。ケースも同じ。ムーブメントも同じ。文字盤のレイアウトも同じ。だから、自信と威勢のよさが問われるような気がする。私にはそれがあるだろうか?

私のコレクションにはもうひとつ、カシオのワールドタイムというフルゴールドトーンの(ゴールドではない)時計がある。むかしは気に入っていたのだが、所有してから数週間後にはあまり身につけなくなった。50ドル程度なら大きな損失ではないが、派手なゴールドの時計に対する私の理論的な愛がここで試されることになった。私はゴールドのロイヤル オークを毎日身につけ、ブレスレットとケースの強い“しなり”を金属の塊として手首につけると信じたい。だが、この時計を身につけてみるとそうとは思えない。残念ながら黒に1点だ。

そのほかにも検討する価値のある小さなディテールがたくさんある。各ダイヤルには3時位置に小さなレリーフロゴがあり、さりげないが、私はゴールドメトリックのツートーンダイヤルのほうが好きだ。ブラックメトリックのシルバーのサンドブラスト仕上げのプッシャーとリューズはユニークな方法で視覚的なコントラストを高めている。どちらの時計も表面はサテン仕上げとポリッシュ仕上げのコンビネーションだが、ゴールドメトリックはゴールドコーティングのおかげで光をよりよく受け止め、本当に輝いている(文字盤のインデックスも同様だ)。一方、ブラックのコーティングも周囲の環境を少し拾って色を照り返すが、タフで精悍な印象は変わらない。

しかし時計の全体的なベースが同じであるため、ディテールからこのふたつの勝者を選ぶことはできなかった。私はこれを引き分けとし、ブラックメトリックに軍配を上げたい。