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ブルガリ セルペンティのスタイリング 最も美しい、4つのスタイルを紹介。

スタイルエディターのマライカ・クロフォードが愛用の腕時計をより最高の状態にするための方法を紹介するHow To Wear Itへようこそ。このセクションではスタイリングのコツから現代におけるファッションの考察、歴史的な背景、ときには英国流の皮肉も織り交ぜて、その魅力をお伝えしていこう。

セルペンティに愛情を捧げている。それを考えるたびに、無条件の賞賛と目がくらむようなヒステリックな感覚に見舞われる。当然、最高で神聖な装飾品は、本能的な独特のよろこびを与えてくれる。個人的な満足度を求めないなら、なぜわざわざジュエリーや時計を身につける必要があるのだろうか? 私は指や手首に嵌められた、滑らかで光沢のある金のジュエリーを眺め、それぞれのアイテムが光を受け、身につけているものの色や質感が生み出すコントラストを見るのが好きだ。

私は機能的な服装ではなく、自身の気分を上げるために服を着ている。そしてセルペンティは、私をとてもいい気分にさせてくれる。

ファッションは今や民主的な領域である。以前はルールによって決められた制度だったが、若者と黒人文化が人々の着るものに大きな影響を及ぼし始めた、60年代後半のユースクエイク(若者たちの行動が社会や文化を動かす社会的変化)でそれは崩れた。もちろん、個々人は常にファッショナブルだったが、社会の要求やシーンに応じた服装をしていた。それが70年代に入るとファッションは方向を変え、上流階級が定めた服装の規範を放棄。ダイヤルもこれに伴い、いままで見られなかった自由なスタイルへとシフトしていった。

今日、私たちは快適さ、機能性、そして性的魅力のために、個々で選択をして服を着ている。一部の人にとってスタイリングは、個性を表現する方法となっているが、ほとんどの人にとっては常に従う方法であり続けているだろう。基本的には誰もがほかの人と同じように見られたいと思っているが、それについてはまた別の機会に話そう。なぜなら私のHow To Wear Itファンタジーの世界では、みんながよろこびを自由に表現するために服を着ているからだ。

セルペンティは私を自由な気持ちにさせてくれる。時計的な意味合いの重荷(そうだな、ラグからラグまでとかマイクロアジャスト機能とか)を背負うことなく身につけられるのだ。私は政治的には中立だと考えている。それを着用することで注目を集めるが、それは常に正しい理由と最高の賛辞のためである。直径やジェンダー政治、さらに悪いことに機械的な完璧さについて、議論を巻き起こすことはない。

ブルガリ セルペンティを身につけた女性
女性向け時計市場に伴う、創造性の欠如について考えると、私は多くの時間を憤りの渦のなかで過ごしている。実際のところ、女性が何を身につけたいのか、どのようにして製品を売り出す必要があるのか、真剣に理解しようとしてつくられた女性向けの時計はほとんどないのだ。だから自分が持っていた、時計学的な知識のかけらが突如として脳から流れ出たとしても、それでもなお魅力を感じるとわかっている数少ないモデルに引き寄せられてしまう。そのほうが簡単だからだ。私は本能ではなく直感で選んでいるのであって、傲慢なマニアによるニセモノの時計学を誇示しているわけではない。

セルペンティは基本的にジュエリーなので、自身のパーソナルスタイルに合っていると思う。アッパー・イースト・サイドやヨーロッパのさまざまな都市(いろんなところ)で、数人のスタイリッシュな女性がこれを着用しているのを見たことがある。それを見つけるといつもワクワクする。ベストな目撃例は、パリッとした白いシャツの袖口の下から、時計が控えめな輝きを放ったりのぞいたりすることだ。あるいは(まっさらな肌の)ブロンズ色の腕にセルペンティを巻き付けているのを見るのも好きだ。その人間工学に基づいた設計により着用者の腕と一体化しているが、彼女(セルペンティ)の重なったバングル、完璧なまでにくたっとしたスラウチーバッグ、ダメージ加工されたデニムによちカモフラージュされるも、彫刻のようなユニットとして際立っている。それがクールに見えるのは、カジュアルながら考え抜かれた、彼女が自分に合うと思った方法でスタイリングしたからである。

このゲームの目的は、洋服、アクセサリー、時計を手に取り、それらを自分だけのサルトリア(仕立て)コードへと組み込むことである。既成概念にうまく溶け込ませることで、自分だけのスタイルへと変身できるのだ。

セルペンティはジュエリーであり、またデザインの一部であり、身につけられる彫刻でもある。事実セルペンティウォッチの歴史は1940年代後半、ブルガリで様式化されたトゥボガスウォッチまで遡る。トゥボガスはブランドにとって非常に重要なデザインコードであり、イタリアのインダストリアルルーツの一部だ。“ガス管を高級品に変えられるのはブルガリだけです”と、ブルガウォッチのクリエイティブ・ディレクターであるファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ(Fabrizio Buonamassa Stigliani)氏は言う。“私たちのインダストリアルデザインのルーツの一部なのです。イタリア流に言うと、機能に従った形です”。今年の初め、ボナマッサ・スティリアーニ氏は私にそう語った。

ミッドセンチュリーなセルペンティは、シークレットウォッチとするために、ヘビの頭を蝶番で取り付けたより自然主義的なものだった。これらの初期のセルペンティの多くは、しばしば本物のヘビ皮革の色、模様を真似たエナメル細工で作られていた。セルペンティはさまざまな紆余曲折を経て、多様な金属、サイズ、さらには複雑機構(小さいトゥールビヨンを搭載していたこともある!)を持つ、複数のバリエーションへと姿を変えていった。

私は最近、ニューヨークで開催されたブルガリのセルペンティ 75周年展を訪れた。そこには、神秘的なローマの骨とう品棚やブルガリの秘密の金庫から取り出されたお守りのように、何十年分ものセルペンティが終結していた。宝石で覆われた、光沢のある金色の彼らは、台座の上でとぐろを巻いて休み、私をじっと見つめていた。

幸運なことに、私は関係者たちを説得して、このHow To Wear Itセクションのためにいくつかのアーカイブを貸してもらった。エナメルに塗られたゴールドとペアシェイプのダイヤモンドに臆することなく酔いしれ、私が思う完璧なレディスウォッチを堂々と楽しむときが来た。

ルック1: 恥じない90年代ノスタルジー
ブルガリ セルペンティを身につけた女性
ジャケット/ヴィンテージ、タンクトップ/スタイリスト私物、パンツ/バレンシアガ、シューズ/セリーヌ。

バレンシアガのデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)、グレッグ・アラキ(Greg Araki)監督の『ドゥーム・ジェネレーション(原題:The Doom Generation)』で主役を務めたローズ・マッゴーワン(Rose McGowan)、マーティンローズのトリクルダウン理論(富裕層が富むと経済が回り、低所得者を含む広い層にもその恩恵が及ぶ経済理論)に基づいたモトクロスは、恥じない90年代ノスタルジーの衣装だ。ファッションの回想へのこだわりは、ときに表面的なものに感じられることもある。しかしジェラルド・ジェンタや1970年代のファンボーイ(マニア) / 不健康な熱狂クラブなどは似たり寄ったりなコンセプトだ!

この服装は、ダイヤモンドを身につけるのも好きな現代ファッションの信奉者のためのものである(基本的にこの時計を買う余裕があるかどうかを見極める方法である)。ハイジュエリーウォッチを、普段使いのパンテールやレベルソと同じように扱ってみたらどうだろう? それはロジックの究極の逆転である。いわば逆さまなのだ。理論上は意味をなさないが、効果はある。

いい心構えをしていれば、ベビーブルーのバイカージャケットに、1968年製のルビー入りプラチナ&イエローゴールドのセルペンティをつけることができる。人によっては大胆すぎると思うかもしれないが、私は遊び心があると思う。ジーンズに白いTシャツ、そして高級時計の組み合わせという単なるステップアップであり、同じ対照的なコンセプトなのだ。

このキャラクターは、雑誌『Dutch』や『The Face』のバックナンバーを何度も読み返し、難解なファッションの参考資料の知識を蓄えていった歳月へのオマージュだ。これらのページは、ユースカルチャーがデジタルではなく有形であった時代を垣間見ることができた。しかしそれは過去と未来のどちらにも縛られることなく、両者のバランスを見つけることに尽きる。セルペンティも過去の“遺物”だが、アップデートが施され現代にも合っている。ただ最も重要なのは、これがクラシックであり続けているということだ。

ヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイト。

しばらくのあいだ、自身がニューヨークでアイスランドに行かなかった最後の人間のように思えた。というのも私の心の一部が、なぜほかの人たちと同じことをするのかと抵抗していたからだ。家族の出身地であるノルウェーか、ドラマチックな山岳風景があるパタゴニアに行きたい。でも私がアイスランドを訪れないのは、みんなが好きなテレビ番組を見るのを我慢するようなものだった。アイスランドは大げさに宣伝されていて、期待に応えられないのではないか? と。

アイスランドにあるクヴェルヌフォスの滝は、国内で最も有名な滝のひとつからそう遠くないところにあるが、そこはより静かで、人里離れた体験ができる世界が広がっている。

時計ではよくある話だ。熱狂という列車が街中を疾走し、誰もが乗車できる。ほかの誰もが疎外感に苛まれる。金銭的な理由の場合もあれば(誰もが今話題の時計を買えるわけではない)、自分が遅すぎるということもある。いずれにせよ、時計収集の悲しみの段階のようなもの、つまり否定、怒り、駆け引き、憂鬱、そして受け入れを経験する。しかし長い目で見ることができないのは、時計収集の世界において最大の敵である。熱狂が薄れていくと、最初に物事を偉大にしたものだけが残されるのだ(そして価格が必然的に下がり、時計が小売店から入手できるようになり始める)。

基本的にヴァシュロン・コンスタンタンのオーヴァーシーズのどのブルーダイヤルも、ここしばらくのあいだは入手が困難だった。パテックやオーデマ ピゲのアイコンと同様、オーヴァーシーズはスティールブレスレット一体型の高級スポーツウォッチとして、独自に細かい工夫を施しながら成功を収めてきた。ヴァシュロンのプレスチームは、腕時計を“バンドル”(何かとセットにして売る)していないし、もっとお金をかければブルーオーヴァーシーズを早く手に入れられるわけではないとも断言している。しかし、もし手に入れることができなければ、過剰な宣伝だと自分自身を納得させることができる時計のひとつであることは確かだ。

ヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイト。

ただ不思議なことに、これは高級スポーツウォッチのラインナップのなかでも、言葉は悪いが、実際に“使える”と感じる時計のひとつでもある。ほかの主流であるロイヤル オークは、ケースの打痕や傷の摩耗を考えると登山に携行したい時計ではない。ノーチラスは美しくエレガントだが、実際にはスポーティさを強調するには程遠い。その点、オーヴァーシーズの3針モデルは358万6000円(税込)と高額だが、少なくとも150mの防水性能を備えている(どちらの競合モデルよりも防水性が高い)。さらにこのパッケージは薄くて快適に装着できるほか、レザーやラバーストラップにすぐに付け替えられるクールなブレスレットも備えている。そして、サンバーストのブルーダイヤルは今でも素晴らしいものであり、それがそもそも人々が欲しがる理由でもある。

そこで私は、手首に新しいヴァシュロンのオーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイトをつけて、アイスランドに赴いた。ただこれは、防水性わずか50mであり、オーヴァーシーズのなかで最も頑丈な時計ではない。実際、3月の時点で私はこれをヴァシュロンの“象徴する複雑機構”と呼んでおり、スポーツをする上で特に役立つものではない。価格も629万2000円(税込)と3針よりかなり高い。しかし、私がやろうとしていたことではそれは相応しかった。何よりも私の大きな疑問は、“スポーツウォッチ”がどこまで“ラグジュアリー”に近づけば、そのふたつの考え方が衝突するのかということだった。

魅力的な滝を追いかける筆者。

これは正統なHands-On記事ではないだろう。実際にこのモデルのスペック(41mm径×10.48mm厚のSS製ケース、約40時間のパワーリザーブ、122年先まで修正の必要がないムーンフェイズという事実以外)を詳しく知りたい人は、こちらのIntroducing記事を参照して欲しい。その代わりこれから先の記事では、スポーツウォッチはどこまでラグジュアリーになり得るのかという問いに(そっと)答えるので、これは視覚的な口直しだと思って欲しい。でもその前に、なぜ私がアイスランドにまで来たのか、その理由を説明しよう。

ヴァシュロンは先週、アーティストのザリア・フォーマン(Zaria Forman)氏をブランドの新しいパートナーとして発表した。ほとんどの場合、ブランドパートナーには著名人が起用されるが、彼らがイベントに参加できるのは年に数回、数時間に限られる。しかしフォーマン氏は、ヴァシュロンが彼女に注目するきっかけとなった、気候を意識した彼女のアートワークを深く理解して欲しいと、娘と夫から離れてアイスランドに1週間滞在する予定だった。彼女の大規模なパステル調の風景画や、氷が溶ける様子を細部まで描いた繊細なアートは、“写真のようにリアル”なのではなく、リアルで気候変動が起きているのを見ているような気分にさせる。そして、その作品にさらに命を吹き込むために私たちはアイスランドを横断し、彼女の最新作のインスピレーションの源泉となった風景を見に行く旅に出た。私たちはアイスランドの首都、レイキャビクにあるハルパ(コンサートホール&会議センター)から出発し、ザリア氏の作品を見てこれからの旅に備えることにした。

アイスランドにて、ザリア・フォーマン氏のアートが展示されたハルパ会議センターとコンベンション・センターからの眺め。

ザリア・フォーマン氏のアートは大規模なパステル画が中心だ。長年にわたり、気候変動の最前線にある風景に焦点を当てており、現在は融解する氷の細部にこだわった作品を手掛けている。

ザリア氏が作品に使うパステルは絵画の一種であり、軽くて柔らかい色を表現するのに使用される。

ヴァシュロン・コンスタンタンのアーティストであり、ブランドパートナーであるザリア・フォーマン氏が登壇した。

ハルパで夢を見よう。そしてしばらくのあいだ、都会の風景を見るのはこれが最後となる。

最初の目的地はクヴェルヌフォスの滝だ。友人たちがアイスランドで下手な写真は撮れないよと言っていたので、それがプレッシャーになった。しかし間近へと近づくたびに、いいアングルへと変わっていった。

しかし私としては風景と同じくらい時計のためにそこにいたので、できる限り急いで、この時計を撮影する時間を設けなければならなかった。

私の好きなアングルは、太陽に向かって影を作りながら撮影する“ショートライト”だ。しかし、それは多くの場合、少し遠くへ行って自身(それと時計)を不安定な状況に身を置くことを意味する。いちばん上のオーヴァーシーズの写真で、時計が濡れているのがわかると思うが、本物のスポーツウォッチでは問題ないはずだし、この時計でも問題はなかった。

これもショートライトでの撮影だ。

私たちはフャズラオルグリューブル近くにあった、曲がりくねった川で昼食をとった。ほとんどの人が食事をしているあいだ、写真を撮るのをやめられなかった。

ひび割れ、苔の生えた風景の上からの眺め。

アイスランドで最も象徴するもののひとつが馬だ。彼らは2000年代初頭のエモーショナルなルックス、がっしりした体格、特異な歩き方をしている。もしアイスランドの馬が島から輸出されたら、歩き方を覚えて2度と戻ってこないかもしれない。

普通のクォーターホースよりかなり背が低く、表向きは私が乗るつもりだった。6フィート7インチ(約2m)の私は馬に申し訳ないような気がしたが、彼らはこれ以上馬が悪くなることはないと保証してくれた。

馬のオーナーたちは、私が時計を撮影しているのを見て興奮し、撮影用にモデルまでしてくれた。彼が着ていたセーターは、ロパペイサまたは“ロピ”セーターとして知られている、アイスランドのウールを使った伝統的なニットで、アイスランドにて手作りされているそうだ。アイスランドのウールを使い、アイスランドで手編みされてこそ、真のロピセーターと呼べるという。まさにシャンパンのようなものだ。

毎晩、オーロラの予報をチェックしたが、ムーンフェイズの星や雲の切れ間から覗くわずかな星を眺めるのが精一杯だった。

後ろに見えるのはフャズラオルグリューブル。

Icelandic horses
アイスランドの馬はでこぼこした地形にぴったりだが、私のような観光客にも当然適している。彼らはお互いに鼻を突き合わせるのが好きなようで、仲間外れにされると寂しくなる。だからこの馬は誰も乗っていない状態にもかかわらず、乗馬に出てかけていた。

オリエントスターのダイヤルの進化が、新たな次元に入った。

オリエントスターから新たなフラッグシップとなるM34 F8 デイトが登場。

オリエントスターのなかでも、コンテンポラリーなデザインやスタイルを持ったラインナップを展開するM34コレクションに、新作となるM34 F8 デイトが加わった。M34は、ブランドのなかでも⾃社の先進テクノロジーを駆使して表現するコレクションだが、そのなかでも新たなフラッグシップとして開発されたのが本作だ。

センターセコンド、3時位置の⽇付表示、そして12時位置にパワーリザーブインジケーターをレイアウトしたオリエントスターではオーソドックスなスタイルだが、M34 F8 デイト最大の特徴はダイナミックかつ繊細なそのダイヤル表現にある。ダイヤルにペルセウス座流星群をイメージしたという独特の放射パターンを持つ高精細な装飾が施されているのだ。

この高精細なダイヤルの装飾は、職人による⼿彫りの金型をもとに真鍮板をプレス成形することで作られる。長野県塩尻に拠点を置くセイコーエプソン塩尻事業所内の「信州 時の匠工房(※)」が製作を担うが、世界でも稀なマニュファクチュールであり、実はオリエントスターのハイエンドモデルの一部にもここで製造されたダイヤルが採用されている。

※編注:「匠工房」「マイクロアーティスト工房」「文字盤工房」「ケース・宝飾工房」で構成される4つの工房の総称。ムーブメントの開発・設計・製造をはじめ、ケース、ダイヤル、針、インデックスなどパーツ製造から組立・調整まで一貫して行っている。

白々明けを表現したホワイトダイヤル

満天の星が煌めく夜空をイメージしたブルーダイヤル

ダイヤルバリエーションはふたつ。どちらもペルセウス座流星群が降り注ぐ情景をデザインテーマとしているが、満天の星が煌めく夜空に降り注ぐ様をイメージしたのがブルーダイヤル、そして白々明け(夜が明けようとして、空が次第に白くなりはじめる様子)の空に降り注ぐ様を表現したのがホワイトダイヤルだ。

そして今回ブルーダイヤルに用いられたのが、エプソンが開発し特許を取得した光学多層膜技術である。この技術は、ダイヤル上にナノレベルの透明な膜を重ねて光の反射と透過をコントロールする光学多層膜を形成し、これまでの塗装技術では表現できなかった下地に施した繊細な装飾を生かした奥行き感のあるダイヤル表現が可能になった。これに加えてエプソンが開発した両球面サファイアクリスタル風防へのSAR(両面無反射)コーティングを施すことで、それぞれのダイヤルが持つ繊細な色や装飾を隅々までクリアに視認できるようになっている。

レイヤーを1段下げて設けられたパワーリザーブインジケーター部には、サーキュラー仕上げが施されている。

ケースとブレスレットにはヘアラインとポリッシュ仕上げを交互に施し、エッジの立ったシャープで力強い印象を与える。

ダイヤルのみならず、ムーブメントも新たなフラッグシップにふさわしい新型だ。M34 F8 デイトに搭載された自動巻きの自社Cal.F8N64は、ブランド70周年を記念して2021年に発表されたスケルトン以来、ブランドの技術的シグネチャーとなっているシリコン製ガンギ車を搭載し、日差+15秒から−5秒の安定した精度と60時間以上のパワーリザーブを備えている。ここまでは既存のF8系キャリバーと同じだが、新型のCal.F8N64はハイトルク化されており、重たい分針でもしっかり回すことができるようになった結果、立体的な見栄えのある針が採用された。

サファイアクリスタルのシースルーバックから見えるムーブメント。ペルラージュが入った受け、コート・ド・ジュネーブのような独自の波目模様が施された回転ローターには面取り加工も施されている。

ホワイトダイヤルのRef.RK-BX0001S。

ブルーダイヤルのRef.RK-BX0003L。

前述のとおり、ホワイトダイヤル(Ref.RK-BX0001S)とブルーダイヤル(Ref.RK-BX0003L)のふたつのバリエーションを展開するが、それぞれ価格や発売時期が異なる。ホワイトダイヤル(Ref.RK-BX0001S)は34万1000円、ブルーダイヤル(Ref.RK-BX0003L)は36万3000円(ともに税込)で、前者は3月23日(土)、後者は少し時間が空いて6月10日(月)発売開始予定だ。なお、先行して発売されるホワイトダイヤル(Ref.RK-BX0001S)は国内限定200本のリミテッドエディションとなっている。

ファースト・インプレッション
本作の見どころは、やはりダイヤルだ。本作のものは前述のとおり「信州 時の匠工房」製だが、これがオリエントスター初の同工房製ダイヤルというわけではない。M45 F7 メカニカルムーンフェイズのダイヤルも実は同様で、昨年リリースされたブルーグラデーションダイヤル、そして2024年の新作として発表されたグレーグラデーションダイヤルも「信州 時の匠工房」製である。これは本作のわかりやすいセールスポイントのひとつと言えよう。

だが、最大の見どころは光学多層膜技術のほうであろう。本作で初めて取り入れられたこのダイヤルはまさに技術の粋を集めて完成する非常に凝ったものだ。

まずは職人が⼿彫りでペルセウス座流星群をイメージした独特の放射パターンの金型が作られ、これをもとに真鍮板をプレスすることでダイヤルのベースが出来上がる。このプレス成形の際に真鍮には100t以上の圧力がかけられるとのことだが、ベース素材を歪ませることなく金型のパターンをきれいにプレス成形するという技術も実はエプソンの特許技術なのだという。

こうして独特の放射パターンが成形された文字盤素材に対し、ブルーダイヤルには特許取得の光学多層膜技術が用いられた。これは光の干渉現象である干渉色を利用した色表現技術で、シャボン玉が虹色に見える様子を想像してもらえるとわかりやすい。シャボン玉の虹色は塗装や染色などの色をつける成分(色素)によってついているわけではなく、微妙に厚みの異なる透明な膜が特定の波長(色)を反射することで人間の目が色として認識している。エプソンの光学多層膜技術ではこの無色透明な複数の膜厚をコントロールし、本作の場合は青い波長だけを反射させることでブルーの色味を表現しているというわけである。

この技術を利用することでブルー以外のさまざまな理想の色を再現することができるほか、見る角度で文字盤の色調が変化するニュアンス表現も容易にでき、従来の塗装では安定しづらい、難しい色表現も可能になる。そして光学多層膜技術にはもうひとつの大きなメリットがある。それは膜厚が非常に薄いため、濃い文字盤色であっても下地に施した模様や装飾がつぶれにくいという点だ。その結果、本作のように手彫りによる金型を使用するような繊細な仕上げの再現が可能になったのだ。ちなみに限定モデルのホワイトダイヤルのほうが、実は従来の塗装により色付けをしている。

オリエントスターは近年、宇宙や星などをテーマにさまざまな技術を駆使することで、自然の移ろい、時の移ろいといった絶妙なニュアンスをダイヤルで表現してきた。本作で用いられた光学多層膜技術は、同ブランドのダイヤル表現の幅を大きく広げることは間違いなく、今後どのようなダイヤル表現をしていくのかが非常に楽しみである。

そうそう、本当はここで文章を締めくくりたいのだが、どうしても気になる点があったので付け加えておきたい。さらっと紹介したが、本作はムーブメントのトルクがアップしたため、従来よりも立体的で長い見栄えのする分針を載せることができるようになった。特に本作の場合は立体的な植字インデックスとの組み合わせで視認性も高まり、既存のラインナップと比べても一層高級時計にふさわしい顔つきになったと思う。これは間違いなく非常に魅力的なアップデートだ。ただし、画像を見る限り秒針が文字盤外周のプリントインデックスに届いていないのだ。これは好みによるところが大きいし、届いていないからよくないと一概に言えるものではないが、せっかくなら秒針も外周のインデックスに届く長さとする、あるいはインデックスのデザインを針に合わせることでより魅力的なバランスになるのではないかと思っている。

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基本情報
ブランド: オリエントスター(Orient Star)
モデル名: コンテンポラリーコレクション M34 F8 デイト(Contemporary Collection M34 F8 Date)
型番: RK-BX0001S(ホワイトダイヤル)、RK-BX0003L(ブルーダイヤル)

直径: 40mm(ラグ・トゥ・ラグ: 47.3mm)
厚さ: 12.9mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤色: ホワイトダイヤル(RK-BX0001S)、ブルーダイヤル(RK-BX0003L)
インデックス: アプライド、12時位置のみローマン
夜光: なし
防水性能: 10気圧
ストラップ/ブレスレット: SS製ブレスレット、プッシュ3つ折式(中留)バックル、本ワニ革レザーストラップ付属(ホワイトダイヤルにはグレー、ブルーダイヤルにはブラック)

ムーブメント情報
キャリバー: F8N64
機能: 時・分針、センターセコンド、12時位置にパワーリザーブインジケーター
パワーリザーブ: 60時間以上
巻き上げ方式: 自動巻き(手巻き付き)
振動数: 2万1600振動/時
石数: 22
追加情報: 日差+15秒~−5秒

価格 & 発売時期
価格: ホワイトダイヤルは34万1000円、ブルーダイヤルは36万3000円(ともに税込)
発売時期: ホワイトダイヤルは3月23日(土)、ブルーダイヤルは6月10日(月)
限定: ホワイトダイヤルのみ国内限定200本

ビギナーのためのGMTベゼル使い方ガイド。

トラベルウォッチマニアのひとりとして、2都市(またはそれ以上)の時刻を表示する時計の基本概念のなかに存在する、無数の組み合わせにこだわらずにはいられない。またトラベルウォッチの機能をフルに活用する方法を知らない人と頻繁にすれ違う日常にも驚いている。予想どおり、これはトラベルウォッチの最も一般的な形式であるGMTでよく起こることだ。

rolex gmt-master
 ロレックス GMTマスターとGMTマスターIIで広く普及したスタンダードなGMTにはいくつかの種類があるが、基本的な機能は、24時間針と24時間表示の回転ベゼルの両方が装備されていること。使用されるムーブメントは、フライヤー(ローカルジャンピングアワー)またはコーラー(独立した24時間針)だが、第2タイムゾーンを追跡する機能は第2タイムゾーン用の24時間針に起因し、さらに多くのことを行うには24時間ベゼルを回転させることでその機能を体感できる。

 次のガイドは還元的であると同時に、知識をひけらかしたようなものに感じられるだろうか? 僕のことを信じたほうがいい。次にGMTの第2タイムゾーンを変更しなければならないとき、これを読んでおけば、リューズに触れたり針を動かしたりすることなく時刻を知ることができるため、僕に感謝することになるかもしれないのだから。

rolex explorer II
ロレックス エクスプローラーIIは、固定ベゼルのデュアルタイムウォッチという一例である。

 GMTを使っている人を見ると、ほとんどの場合は伝統的な“デュアルタイム”ウォッチのように設定されている。メインの針には現地時間が表示され、24時間針はベゼルのデフォルト位置(下図で示しているが、ゼロアワーとは理論上、文字盤の12時位置だ)を読むことで第2タイムゾーンの時刻を表示している。これはこれでいいし、ロレックス エクスプローラーIIのような固定ベゼルの“GMT”(実際にはデュアルタイムウォッチ)に備わっている機能でもあるが、24時間GMTの能力をすべて活用できるわけではない。最大限活用するには回転ベゼルを使う必要があるのだ。

the hodinkee mido LE watch showing two time zones
写真のミドー オーシャンスター GMT LEは、回転式24時間ベゼルを使用しない、標準的なデュアルタイムレイアウトの状態だ。

タイムゾーンの変更にはUTC/GMTオフセットを使用する
 GMT、特にロレックス GMTマスターIIのようなフライヤーGMTや、HODINKEEが最近コラボレートして製造した2本のGMT(ひとつはロンジン、もうひとつはミドー)を使用する場合、僕は24時間のGMT針をUTC 0にセットし、ベゼルを使用して表示しているタイムゾーンのUTCオフセット(編註;特定の時刻ゾーンとUTCのあいだの時間と分の差)を使い、特定の第2タイムゾーンに“ジャンプ”することを好む。厳密にはローカルタイム、UTC 0、ベゼルによって設定されているタイムゾーンがあるため、3つのタイムゾーンが1本の時計に集約されることになる。画像で説明しよう。

map of the standard timezones
標準時UTCタイムゾーンの地図(UnaitxuGV、Heitordpなど、パブリックドメインはWikimedia Commons経由)。

 まず“協定世界時(Coordinated Universal Time)”の略語であるUTCについて、ある程度理解しておく必要がある(これは米軍を含む一部軍組織においては、ZULUタイムとしても知られている)。よく旅行をしたり、ほかのタイムゾーンに住む人と多く交流していれば、GMT(グリニッジ標準時)の概念をより現代的にしたUTC 0という中央タイムゾーンがあることをご存じだろう(東に行けばUTC +1、+2など数値が上がり、西に行けばUTC-1、-2など下がっていく)。UTCの開発については、CUTと略されない理由も含めてこちらを参照してほしいが、簡単に言うとUTCは1967年から存在し、原子時計のように精度を高めるべくGMTをアップデートしたものである。

 GMTと同様に、UTC 0は本初子午線と一致し、経度線のように0から外側に向かって拡大する24のフルタイムタイムゾーンが広がっている。つまりロンドンはUTC -0、ニューヨークはUTC -5、ジュネーブはUTC +1、ドバイはUTC +4、東京はUTC +9である。24時間の“GMT”針をUTC -0にセットすれば、GMTウォッチのベゼルをUTCオフセット(特定の空港や都市、または既知のタイムゾーンの場合)の数だけ回転させることができる。

longines GMT showing UTC time
時針でトロントの現地時間(10:00)を示す“ロンジン スピリット Zulu Time LE”。GMT針はUTC 0(15:00)にセットし、ベゼルはジュネーブのUTC +1を考慮して1時間分回転している。

 ホームタイムゾーンがUTC -5(僕はカナダのトロントに住んでいる)で、ジュネーブの時刻を知りたいと仮定してみよう。トロント(ローカル)が10:00の場合、UTC 0は15:00(+5時間)になる。そこで、ベゼルはホームポジションのまま、GMTの24時間針を15:00にセットした。次に、ジュネーブの時刻を表示するために、24時間ベゼルを回転させてUTCオフセットを正午の位置に表示する。上の画像でも説明しているが、もっと簡単に言うと、ジュネーブがUTC +1(16:00)なら、GMTベゼルの12時位置(ゼロアワーのポジション)に“1”と表示することで、24時間針とベゼルを使ってジュネーブの時刻を知ることが可能だ。

longines GMT showing time in Toronto and tokyo
このロンジン スピリット Zulu Time LEでは、時針でトロントの現地時間(10:00)を表示し、GMT針はUTC 0(15:00)に設定し、ベゼルは東京のUTC +9を考慮して回転している。

 現在、24時間針はUTC 0(15:00)に設定されているため、東京の時刻を表示したい場合は、ベゼルを回して12時の位置に“9”を合わせるだけだ。ベゼルには東京の24時間の時刻(0:00)が表示されるようになり、リューズを操作したり針を動かしたりと、時計の時刻を調整する必要がなくなる。繰り返しになるが、すべては24時間針をUTC 0に設定することにかかっており、この具体的なシナリオは上の図で説明している。

Mido GMT showing geneva local time, toronto away time
このミドー オーシャンスター GMT LEでは、時針でジュネーブの現地時間(16:00)を表示し、GMT針はUTC 0(15:00)にセットし、ベゼルはトロントのUTC-5(24-5=19)を考慮して、12時位置に19が来るように回転させている。

 おまけに、この記事で紹介したロンジンやミドーのようなフライヤーGMTを使えば、新しいタイムゾーンに移動しても、24時間針の位置を変えずに現地時間の更新ができる。そのため、僕がジュネーブに旅行する場合は、着陸し、メインの時針を+6時間ジャンプさせてスイスの時刻(16:00)を表示し、ベゼルを回転して正午の位置に“19”を配置する(19はUTC 0のトロントの-5時間のオフセットを24時間から差し引いたもの)。1本の針を動かすだけでローカルタイム(16:00)とホームタイム(10:00)が表示された。簡単に言うと、これはかなり便利な機能だ(上図)。

 ジェットセッターの多くはこの機能を知っていると思うが、このガイドはアクティブに旅行している人や、単にほかのタイムゾーンを追跡する必要がある人など、GMTを最大限に活用したいという人の役にも立つかもしれない。最後に、GMT機能を搭載した新しい時計、特にフライヤー機能のモデルを探しているなら、この記事で紹介したミドーとロンジンの限定モデル(シリアルナンバー入り)は、いずれもHODINKEE Shopで購入可能だ。

フラテッロウォッチの優秀なスタッフらが、今までで一番手頃な価格の最新限定モデルをリリースした。

このコラボレーションのために、このオランダ発のメディアはRZEと協力して、冒険のためにデザインされたツールウォッチ、RZE×フラテッロ レゾリュート プロ コントゥールを製作したのだ。

2020年に設立されたRZEは、チタン製のツールウォッチで知られるブランドで、この度フラテッロと協力して冒険に適した時計をデザインした。RZE×フラテッロ レゾリュート プロ コントゥアは、40mm径×10.5mm厚(ラグからラグまで46mm)のグレード2チタンケースを採用。この実測値には、ARコーティングを施したフラットな風防も含まれている。ラグは少し下へと傾斜しており、ストラップの交換を容易にするための穴が設けられている(素晴らしいディテールだ)。さらにレゾリュート プロ コントゥアのチタンブレスレットには、工具不要のマイクロアジャスト機能も搭載している。

文字盤はカーボン製だが、そこにスティールパウダーを注入することで、地形図のようなクールなパターンを作り出した。このコンセプトは、エングレービングが施された裏蓋ともマッチしている。

内部にはミヨタ90S5ムーブメントを搭載。有名な日本の自動巻きムーブメントであり、約42時間パワーリザーブ、2万8800振動/時、ハック機能を備えている。

RZE×フラテッロ レゾリュート プロ コントゥアの予約注文は、フラテッロの公式サイトにて3月14日(木)の午前10時(アメリカ東部時間)から1週間だけ開始される。なおメーカー希望小売価格は679ユーロ(日本円で約11万円)で、予約注文時には日本円に自動換算される。

愛好家向けのフレンドリーなメディアが提供する、1000ドル(日本円で約14万7000円)以下の冒険心くすぐるツールウォッチを気にいらない人はいるだろうか? この時計について、私たちが気に入っている点を挙げよう。まずサイズ感がちょうどよく、装着しやすいチタン製ケース、穴の開いたラグ、ソリッドバック、コンポジットカーボン文字盤、工具不要のマイクロアジャスト機能…もっと言いたいことはあるが、要点はわかってもらえただろう。これはマニアが求め、愛してやまない意匠のすべてを、新進ブランドとのコラボレーションにより、手頃な価格でミヨタ製パッケージに収めたものなのだ。

カーボンダイヤル全体にSSの斑点を散りばめることで、競合モデルやRZEのほかのカタログとは一線を画し、コントゥアに真の特徴を与えている。

これは限定モデルだが、予約受付は3月14日から1週間の猶予があるため、フラテッロに駆け込んでRZE×フラテッロ レゾリュート プロ コントゥアを手に入れる時間は十分にあるだろう。

基本情報
ブランド: RZE×フラテッロ(RZE×Fratello)
モデル名: レゾリュート プロ コントゥア(Resolute Pro “Contour”)
型番: 1021

直径: 40mm
厚さ: 10.5mm(風防込み)
ラグからラグまで: 46mm
ケース素材: グレード2チタン(ウルトラヘックスコーティング)
文字盤: スティールパウダー入りカーボンファイバーコンポジット
インデックス: アプライド
夜光: あり、スーパールミノバ
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: チタンブレスレット、工具不要のマイクロアジャスト機能

rze fratello watches contour limited edition
ムーブメント情報
キャリバー: ミヨタ 90S5
機能: 時・分・センターセコンド
直径: 26mm
パワーリザーブ: 約42時間
巻き上げ方式: 自動巻き(手巻き付き)
振動数: 2万8800振動/時
石数: 24

価格 & 発売時期
価格: 679ユーロ(日本円で約11万円)
発売時期: 3月14日(木)から3月21日(木)まで予約受付。フラテッロによると、予約受付開始から4カ月以内にすべての時計をデリバリーする予定とのこと
限定: 1週間だけの先行予約