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DB28の最新作は、時計の小型化というトレンドに沿った進化を遂げている。

ドゥ・べトゥーン DB28のダウンサイジング版となるDB28xs スターリーシーズを発表。

ドゥ・べトゥーン(De Bethun)のラインナップにおいて中核をなすDB28は、長きにわたって時計製造とデザインの両分野において特異かつ独特な視点を表現してきた。今回この一風変わったスイスのブランドは、DB28をより小さなケースに収めた最新進化形となるDB28xs スターリーシーズ(DB28xs Starry Seas)を発表した。美しい手巻きムーブメントと特別な文字盤を備えたドゥ・べトゥーンの“エクストラスモール(xs)”モデルは、ブランドが有するユニークな魅力をウェアラブルでモダンな存在へと昇華することを目的としている。

まずはケースについて話をしよう。DB28xs スターリーシーズは直径38.7mm、厚さ7.4mmで、ケースとヒンジ付きラグはいずれもグレード5のチタン製。表面には鏡面仕上げが施されていいる。文字盤にはブランドロゴらしいものがまったく見当たらず、外周部のシルバーのチャプターリングに時・分表示とロゴの両方が記されている。

ドゥ・ベトゥーンのDBシリーズの多くがそうであるように、文字盤はその時計の印象を大きく左右する。DB28xsの場合、文字盤にはブルーのポリッシュ仕上げを施したグレード5チタンを使用。“ランダムギヨシェ”パターン(ドゥ・ベトゥーンは世界初だと語っている)で表面を仕上げ、波打つような文字盤の表面に、ホワイトゴールドの星がまるで浮かび上がるように配置されている。ゆえにスターリーシーズ、星の海なのだ。

ブルーダイヤル上に星を模した装飾を施した外観は、DB28 スターリースカイ(DB28 Starry Sky)やDB25 スターリーバリアス(DB25 Starry Varius)といったブランドの過去の作品から派生したものだ。針は文字盤に表された静謐な空間の上に浮かんでおり、内部にはドゥ・ベトゥーンの手巻きCal.DB2005を搭載している。このキャリバーは過去にいくつかのDB25で確認されており、6日間のパワーリザーブと2万8800振動/時で時を刻む。

この時計がドゥ・べトゥーンブランドに属し、D28にラインナップしていることはいうまでもないだろう。DB28xs スターリーシーズは9万ドル(約1257万円)で販売予定であり、この値段に関しては少々驚きを覚えるかもしれない。

僕が時計に興味を持つようになってからこれまで、ドゥ・べトゥーンのパーソナリティ、遊び心、そして伝統的な時計製造のコンセプトや手法とネオフューチャリズムの要素を織り交ぜる能力(彼らの“ドリームウォッチ”を見てみて欲しい)を高く評価している。2013年に初めて行ったバーゼルワールドのハイライトがこのブランドで、それ以降、僕はこのブランドの時計、特にDB28をファンとして遠くから見守っている。

De Bethune DB28xs Starry Seas
そう考えると、直径39mmというサイジングは理にかなっていると思う。しかし、DB25QPのように40mm径の時計もあるものの、DB28シリーズのサイズは43〜44mmが中心だ。この手のサイズ感は2000年代半ばから後半にかけてドゥ・べトゥーンが注目を浴び始めたころ(ブランドの設立は2002年)に流行したものだ。しかし時代と人々の好みは常に変化するのである。フルサイズのDB28も、ラグがケースから分離して手首に沿うようになっているために不思議とうまくフィットするのだが、39mm径のDB28シリーズというアイデアは個人的に大歓迎だ。

もし新たにドゥ・べトゥーンを購入するにあたって実際にアドバイスを求めているのなら、僕に言えることは正規販売店に立ち寄った際にひとまわり大きなDB28とDB28xsを比較する機会を逃さないことだ。たとえそれがコントラストを確かめるだけだとしても意味がある。

De Bethune DB28xs Starry Seas
サイジングをのぞけば、DB28xs スターリーシーズにはDB28のすべての要素が詰め込まれている。高価だが美しく繊細で、個性に溢れた時計だ。初めて試着した2013年当時から変わらず、いまだ僕はDB28のオーナーになれそうな気配はない。だが、もしその状況が変わるようなことがあれば、DB28xsは間違いなく有力な候補になるだろう。

基本情報
ブランド: ドゥ・べトゥーン(De Bethune)
モデル名: DB28xs スターリーシーズ(DB28xs Starry Seas)
型番: DB28XsTIS3

直径: 38.7mm
厚み: 7.4mm
ケース素材: グレード5チタン
文字盤色: ブルーチタンの文字盤にランダムなギヨシェパターン
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: チタン製ピンバックル付きアリゲーターレザーストラップ

db28xs
ムーブメント情報
キャリバー: DB2005
機能: 時・分
直径: 30mm
パワーリザーブ: 6日間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 27
追加情報: 自動調整ツインバレル パワーリザーブ、フラットターミナルカーブ巻き上げヒゲゼンマイ、シリコン製ガンギ車

価格 & 発売時期
価格: 9万ドル(約1257万円)

針のない、まるで魔法使いの水晶玉のような時計をご紹介しましょう。

フランス発の独立系時計メーカー、トリローブ(Trilobe)が2018年のデビュー以来作り続けている、小さくて針のない不思議な時計に親近感を抱いています。回転するディスクとリングで時間を知らせるという彼らの試みは実にユニークで、それが理由で僕たちはこの時計を取り上げることになりました。あまりに気に入りすぎて、同ブランドのヌイ・ファンタスティック(Nuit Fantastique)のHODINKEE限定モデルでコラボレーションまで果たしたほどで、僕は妻に購入の許しを得ようと半ば強引に説得したのを覚えています(悲しいことに、僕がそのアイデアをほのめかすや、妻は冷ややかな視線を送ったわけですが)。その戦いに敗れたとはいえ、僕は幸運にも、より前衛的なモデルであるユヌ・フォル・ジュルネ(Une Folle Journéeはフランス語で“荒ぶる1日”の意味)と1週間ともに過ごし、このワイルドなデザインをまとう時計が日常をともに過ごすに相応しいか、動画に収めることができました。

ユヌ・フォル・ジュルネを見てまず気づくのは、多くの現代の時計とは異なり、針がないことでしょう。その代わり、スケルトンダイヤルに3つのエキセントリックなリングがあり、いちばん大きなリングが時、真ん中のリングが分、そしていちばん小さなリングが秒を表しています。慣れるのに少し時間がかかりましたが、これらはすべて反時計回りに回転しています。それらを支えるのは、リング下の歯車に取り付けられた異なる高さの軸です。

これらの浮遊するリングを保護するため、この時計はケースからなんと10.2mmも突き出た巨大なドーム状サファイアクリスタル風防を備えています。これは最近の時計ではあまり見られないレベルの、奥行きと立体感を演出しています。基本的なコンセプトは、よりフラットなニュイ・ファンタスティックと同じですが、このモデルではリングが実際に浮いているかのような錯覚を起こさせます。誰もこんなの見たことないと僕は断言できますよ。

ここまで聞けば、この時計はかなり変わり種に思えますが、グレード5のチタンケースは実のところ伝統的なデザインを踏襲しています。ポリッシュ仕上げでミドルケースにはサテン仕上げが施され、通常の3時位置にリューズを備え、厚さはわずか10mm(風防を除き)、直径は40.5mmです。現代の基準からすれば、このサイズは多くの人にとって着用可能なサイズであり、それこそがこのワイルドな時計がとても着用しやすい理由なのです。確かに、サファイアクリスタルは少し出っ張っていて、フラットなタイプに比べると物にぶつけやすいのですが、それ以外はほかの時計と同じようにレザーストラップで着用できます。また僕はいつも何かに時計をぶつけることを心配しているので、ユヌ・フォル・ジュルネを身につけているときはすべての時計と同程度の慎重さをもって扱いました。

ユヌ・フォル・ジュルネと過ごした1週間について、まだまだお伝えしたいことがあるのですが、この時計について説明を聞くよりも、実際に時計を眺めることほど楽しいものはありません。ですから、この魔法使いの水晶玉のような不思議な動きを動画でぜひ確かめて欲しいのです。

フルース オートマティック ネッシーパールダイバー リミテッド エディション”が登場する。

SPINNAKER(スピニカー)
Fleuss Automatic Nessie Pearl Diver Limited Edition(フルース オートマティック ネッシーパールダイバー リミテッド エディション)
本作は、2024年に話題を呼んだ第1弾のアップデードモデル。伝説の未確認生物ネッシーをテーマにした幻想的な一本。ベースモデルの“フルース”コレクションは、19世紀に人類が海へ進出した時代のダイビング機器から着想を得たシリーズとなる。

文字盤には天然のマザー・オブ・パールを全面に使用。光の角度によって虹色に輝く湖面を表現する。

5時位置のインダイヤルには、長い首を持つネッシーのシルエットを描いたディスクを配し、これが60秒で1回転。まるで、ネス湖の中をゆったりと泳ぐように動くネッシーを楽しめる。さらに、12時位置の外周には、ネッシーが棲息しているとされる場所北緯57度18分と西経4度27分の文字を刻む。

SPINNAKER(スピニカー) Fleuss Automatic Nessie Pearl Diver Limited Edition(フルース オートマティック ネッシーパールダイバー リミテッド エディション)

暗い場所でも時刻を確認できるよう、針とインデックスにはスイス製の高輝度蓄光塗料を採用。針の裏面にも塗料を施し、反射によってマザー・オブ・パールのダイヤルが淡く光る。さらにベゼルやネッシーのシルエットにも控えめな蓄光を施し、夜の湖に浮かぶような幻想的な光景を演出する。

そして、裏ブタはシースルー仕様で、日本製ムーヴメントキャリバーのMIYOTA 8245とそのローターに刻印されたネッシーの姿を見ることができる。ローターが回転するたびに、ケース内を泳ぐように動く姿もポイントだ。

SPINNAKER(スピニカー) Fleuss Automatic Nessie Pearl Diver Limited Edition(フルース オートマティック ネッシーパールダイバー リミテッド エディション)

収納ボックスには、ネッシーを捉えた伝説的な写真を描く。さらに、照射することで暗闇の中で光るネッシーを見られるUVライトも付属する。なお、販売価格は7万7000円。世界限定650本となる。

ブルガリ セルペンティのスタイリング 最も美しい、4つのスタイルを紹介。

スタイルエディターのマライカ・クロフォードが愛用の腕時計をより最高の状態にするための方法を紹介するHow To Wear Itへようこそ。このセクションではスタイリングのコツから現代におけるファッションの考察、歴史的な背景、ときには英国流の皮肉も織り交ぜて、その魅力をお伝えしていこう。

セルペンティに愛情を捧げている。それを考えるたびに、無条件の賞賛と目がくらむようなヒステリックな感覚に見舞われる。当然、最高で神聖な装飾品は、本能的な独特のよろこびを与えてくれる。個人的な満足度を求めないなら、なぜわざわざジュエリーや時計を身につける必要があるのだろうか? 私は指や手首に嵌められた、滑らかで光沢のある金のジュエリーを眺め、それぞれのアイテムが光を受け、身につけているものの色や質感が生み出すコントラストを見るのが好きだ。

私は機能的な服装ではなく、自身の気分を上げるために服を着ている。そしてセルペンティは、私をとてもいい気分にさせてくれる。

ファッションは今や民主的な領域である。以前はルールによって決められた制度だったが、若者と黒人文化が人々の着るものに大きな影響を及ぼし始めた、60年代後半のユースクエイク(若者たちの行動が社会や文化を動かす社会的変化)でそれは崩れた。もちろん、個々人は常にファッショナブルだったが、社会の要求やシーンに応じた服装をしていた。それが70年代に入るとファッションは方向を変え、上流階級が定めた服装の規範を放棄。ダイヤルもこれに伴い、いままで見られなかった自由なスタイルへとシフトしていった。

今日、私たちは快適さ、機能性、そして性的魅力のために、個々で選択をして服を着ている。一部の人にとってスタイリングは、個性を表現する方法となっているが、ほとんどの人にとっては常に従う方法であり続けているだろう。基本的には誰もがほかの人と同じように見られたいと思っているが、それについてはまた別の機会に話そう。なぜなら私のHow To Wear Itファンタジーの世界では、みんながよろこびを自由に表現するために服を着ているからだ。

セルペンティは私を自由な気持ちにさせてくれる。時計的な意味合いの重荷(そうだな、ラグからラグまでとかマイクロアジャスト機能とか)を背負うことなく身につけられるのだ。私は政治的には中立だと考えている。それを着用することで注目を集めるが、それは常に正しい理由と最高の賛辞のためである。直径やジェンダー政治、さらに悪いことに機械的な完璧さについて、議論を巻き起こすことはない。

ブルガリ セルペンティを身につけた女性
女性向け時計市場に伴う、創造性の欠如について考えると、私は多くの時間を憤りの渦のなかで過ごしている。実際のところ、女性が何を身につけたいのか、どのようにして製品を売り出す必要があるのか、真剣に理解しようとしてつくられた女性向けの時計はほとんどないのだ。だから自分が持っていた、時計学的な知識のかけらが突如として脳から流れ出たとしても、それでもなお魅力を感じるとわかっている数少ないモデルに引き寄せられてしまう。そのほうが簡単だからだ。私は本能ではなく直感で選んでいるのであって、傲慢なマニアによるニセモノの時計学を誇示しているわけではない。

セルペンティは基本的にジュエリーなので、自身のパーソナルスタイルに合っていると思う。アッパー・イースト・サイドやヨーロッパのさまざまな都市(いろんなところ)で、数人のスタイリッシュな女性がこれを着用しているのを見たことがある。それを見つけるといつもワクワクする。ベストな目撃例は、パリッとした白いシャツの袖口の下から、時計が控えめな輝きを放ったりのぞいたりすることだ。あるいは(まっさらな肌の)ブロンズ色の腕にセルペンティを巻き付けているのを見るのも好きだ。その人間工学に基づいた設計により着用者の腕と一体化しているが、彼女(セルペンティ)の重なったバングル、完璧なまでにくたっとしたスラウチーバッグ、ダメージ加工されたデニムによちカモフラージュされるも、彫刻のようなユニットとして際立っている。それがクールに見えるのは、カジュアルながら考え抜かれた、彼女が自分に合うと思った方法でスタイリングしたからである。

このゲームの目的は、洋服、アクセサリー、時計を手に取り、それらを自分だけのサルトリア(仕立て)コードへと組み込むことである。既成概念にうまく溶け込ませることで、自分だけのスタイルへと変身できるのだ。

セルペンティはジュエリーであり、またデザインの一部であり、身につけられる彫刻でもある。事実セルペンティウォッチの歴史は1940年代後半、ブルガリで様式化されたトゥボガスウォッチまで遡る。トゥボガスはブランドにとって非常に重要なデザインコードであり、イタリアのインダストリアルルーツの一部だ。“ガス管を高級品に変えられるのはブルガリだけです”と、ブルガウォッチのクリエイティブ・ディレクターであるファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ(Fabrizio Buonamassa Stigliani)氏は言う。“私たちのインダストリアルデザインのルーツの一部なのです。イタリア流に言うと、機能に従った形です”。今年の初め、ボナマッサ・スティリアーニ氏は私にそう語った。

ミッドセンチュリーなセルペンティは、シークレットウォッチとするために、ヘビの頭を蝶番で取り付けたより自然主義的なものだった。これらの初期のセルペンティの多くは、しばしば本物のヘビ皮革の色、模様を真似たエナメル細工で作られていた。セルペンティはさまざまな紆余曲折を経て、多様な金属、サイズ、さらには複雑機構(小さいトゥールビヨンを搭載していたこともある!)を持つ、複数のバリエーションへと姿を変えていった。

私は最近、ニューヨークで開催されたブルガリのセルペンティ 75周年展を訪れた。そこには、神秘的なローマの骨とう品棚やブルガリの秘密の金庫から取り出されたお守りのように、何十年分ものセルペンティが終結していた。宝石で覆われた、光沢のある金色の彼らは、台座の上でとぐろを巻いて休み、私をじっと見つめていた。

幸運なことに、私は関係者たちを説得して、このHow To Wear Itセクションのためにいくつかのアーカイブを貸してもらった。エナメルに塗られたゴールドとペアシェイプのダイヤモンドに臆することなく酔いしれ、私が思う完璧なレディスウォッチを堂々と楽しむときが来た。

ルック1: 恥じない90年代ノスタルジー
ブルガリ セルペンティを身につけた女性
ジャケット/ヴィンテージ、タンクトップ/スタイリスト私物、パンツ/バレンシアガ、シューズ/セリーヌ。

バレンシアガのデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)、グレッグ・アラキ(Greg Araki)監督の『ドゥーム・ジェネレーション(原題:The Doom Generation)』で主役を務めたローズ・マッゴーワン(Rose McGowan)、マーティンローズのトリクルダウン理論(富裕層が富むと経済が回り、低所得者を含む広い層にもその恩恵が及ぶ経済理論)に基づいたモトクロスは、恥じない90年代ノスタルジーの衣装だ。ファッションの回想へのこだわりは、ときに表面的なものに感じられることもある。しかしジェラルド・ジェンタや1970年代のファンボーイ(マニア) / 不健康な熱狂クラブなどは似たり寄ったりなコンセプトだ!

この服装は、ダイヤモンドを身につけるのも好きな現代ファッションの信奉者のためのものである(基本的にこの時計を買う余裕があるかどうかを見極める方法である)。ハイジュエリーウォッチを、普段使いのパンテールやレベルソと同じように扱ってみたらどうだろう? それはロジックの究極の逆転である。いわば逆さまなのだ。理論上は意味をなさないが、効果はある。

いい心構えをしていれば、ベビーブルーのバイカージャケットに、1968年製のルビー入りプラチナ&イエローゴールドのセルペンティをつけることができる。人によっては大胆すぎると思うかもしれないが、私は遊び心があると思う。ジーンズに白いTシャツ、そして高級時計の組み合わせという単なるステップアップであり、同じ対照的なコンセプトなのだ。

このキャラクターは、雑誌『Dutch』や『The Face』のバックナンバーを何度も読み返し、難解なファッションの参考資料の知識を蓄えていった歳月へのオマージュだ。これらのページは、ユースカルチャーがデジタルではなく有形であった時代を垣間見ることができた。しかしそれは過去と未来のどちらにも縛られることなく、両者のバランスを見つけることに尽きる。セルペンティも過去の“遺物”だが、アップデートが施され現代にも合っている。ただ最も重要なのは、これがクラシックであり続けているということだ。

ヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイト。

しばらくのあいだ、自身がニューヨークでアイスランドに行かなかった最後の人間のように思えた。というのも私の心の一部が、なぜほかの人たちと同じことをするのかと抵抗していたからだ。家族の出身地であるノルウェーか、ドラマチックな山岳風景があるパタゴニアに行きたい。でも私がアイスランドを訪れないのは、みんなが好きなテレビ番組を見るのを我慢するようなものだった。アイスランドは大げさに宣伝されていて、期待に応えられないのではないか? と。

アイスランドにあるクヴェルヌフォスの滝は、国内で最も有名な滝のひとつからそう遠くないところにあるが、そこはより静かで、人里離れた体験ができる世界が広がっている。

時計ではよくある話だ。熱狂という列車が街中を疾走し、誰もが乗車できる。ほかの誰もが疎外感に苛まれる。金銭的な理由の場合もあれば(誰もが今話題の時計を買えるわけではない)、自分が遅すぎるということもある。いずれにせよ、時計収集の悲しみの段階のようなもの、つまり否定、怒り、駆け引き、憂鬱、そして受け入れを経験する。しかし長い目で見ることができないのは、時計収集の世界において最大の敵である。熱狂が薄れていくと、最初に物事を偉大にしたものだけが残されるのだ(そして価格が必然的に下がり、時計が小売店から入手できるようになり始める)。

基本的にヴァシュロン・コンスタンタンのオーヴァーシーズのどのブルーダイヤルも、ここしばらくのあいだは入手が困難だった。パテックやオーデマ ピゲのアイコンと同様、オーヴァーシーズはスティールブレスレット一体型の高級スポーツウォッチとして、独自に細かい工夫を施しながら成功を収めてきた。ヴァシュロンのプレスチームは、腕時計を“バンドル”(何かとセットにして売る)していないし、もっとお金をかければブルーオーヴァーシーズを早く手に入れられるわけではないとも断言している。しかし、もし手に入れることができなければ、過剰な宣伝だと自分自身を納得させることができる時計のひとつであることは確かだ。

ヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイト。

ただ不思議なことに、これは高級スポーツウォッチのラインナップのなかでも、言葉は悪いが、実際に“使える”と感じる時計のひとつでもある。ほかの主流であるロイヤル オークは、ケースの打痕や傷の摩耗を考えると登山に携行したい時計ではない。ノーチラスは美しくエレガントだが、実際にはスポーティさを強調するには程遠い。その点、オーヴァーシーズの3針モデルは358万6000円(税込)と高額だが、少なくとも150mの防水性能を備えている(どちらの競合モデルよりも防水性が高い)。さらにこのパッケージは薄くて快適に装着できるほか、レザーやラバーストラップにすぐに付け替えられるクールなブレスレットも備えている。そして、サンバーストのブルーダイヤルは今でも素晴らしいものであり、それがそもそも人々が欲しがる理由でもある。

そこで私は、手首に新しいヴァシュロンのオーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイトをつけて、アイスランドに赴いた。ただこれは、防水性わずか50mであり、オーヴァーシーズのなかで最も頑丈な時計ではない。実際、3月の時点で私はこれをヴァシュロンの“象徴する複雑機構”と呼んでおり、スポーツをする上で特に役立つものではない。価格も629万2000円(税込)と3針よりかなり高い。しかし、私がやろうとしていたことではそれは相応しかった。何よりも私の大きな疑問は、“スポーツウォッチ”がどこまで“ラグジュアリー”に近づけば、そのふたつの考え方が衝突するのかということだった。

魅力的な滝を追いかける筆者。

これは正統なHands-On記事ではないだろう。実際にこのモデルのスペック(41mm径×10.48mm厚のSS製ケース、約40時間のパワーリザーブ、122年先まで修正の必要がないムーンフェイズという事実以外)を詳しく知りたい人は、こちらのIntroducing記事を参照して欲しい。その代わりこれから先の記事では、スポーツウォッチはどこまでラグジュアリーになり得るのかという問いに(そっと)答えるので、これは視覚的な口直しだと思って欲しい。でもその前に、なぜ私がアイスランドにまで来たのか、その理由を説明しよう。

ヴァシュロンは先週、アーティストのザリア・フォーマン(Zaria Forman)氏をブランドの新しいパートナーとして発表した。ほとんどの場合、ブランドパートナーには著名人が起用されるが、彼らがイベントに参加できるのは年に数回、数時間に限られる。しかしフォーマン氏は、ヴァシュロンが彼女に注目するきっかけとなった、気候を意識した彼女のアートワークを深く理解して欲しいと、娘と夫から離れてアイスランドに1週間滞在する予定だった。彼女の大規模なパステル調の風景画や、氷が溶ける様子を細部まで描いた繊細なアートは、“写真のようにリアル”なのではなく、リアルで気候変動が起きているのを見ているような気分にさせる。そして、その作品にさらに命を吹き込むために私たちはアイスランドを横断し、彼女の最新作のインスピレーションの源泉となった風景を見に行く旅に出た。私たちはアイスランドの首都、レイキャビクにあるハルパ(コンサートホール&会議センター)から出発し、ザリア氏の作品を見てこれからの旅に備えることにした。

アイスランドにて、ザリア・フォーマン氏のアートが展示されたハルパ会議センターとコンベンション・センターからの眺め。

ザリア・フォーマン氏のアートは大規模なパステル画が中心だ。長年にわたり、気候変動の最前線にある風景に焦点を当てており、現在は融解する氷の細部にこだわった作品を手掛けている。

ザリア氏が作品に使うパステルは絵画の一種であり、軽くて柔らかい色を表現するのに使用される。

ヴァシュロン・コンスタンタンのアーティストであり、ブランドパートナーであるザリア・フォーマン氏が登壇した。

ハルパで夢を見よう。そしてしばらくのあいだ、都会の風景を見るのはこれが最後となる。

最初の目的地はクヴェルヌフォスの滝だ。友人たちがアイスランドで下手な写真は撮れないよと言っていたので、それがプレッシャーになった。しかし間近へと近づくたびに、いいアングルへと変わっていった。

しかし私としては風景と同じくらい時計のためにそこにいたので、できる限り急いで、この時計を撮影する時間を設けなければならなかった。

私の好きなアングルは、太陽に向かって影を作りながら撮影する“ショートライト”だ。しかし、それは多くの場合、少し遠くへ行って自身(それと時計)を不安定な状況に身を置くことを意味する。いちばん上のオーヴァーシーズの写真で、時計が濡れているのがわかると思うが、本物のスポーツウォッチでは問題ないはずだし、この時計でも問題はなかった。

これもショートライトでの撮影だ。

私たちはフャズラオルグリューブル近くにあった、曲がりくねった川で昼食をとった。ほとんどの人が食事をしているあいだ、写真を撮るのをやめられなかった。

ひび割れ、苔の生えた風景の上からの眺め。

アイスランドで最も象徴するもののひとつが馬だ。彼らは2000年代初頭のエモーショナルなルックス、がっしりした体格、特異な歩き方をしている。もしアイスランドの馬が島から輸出されたら、歩き方を覚えて2度と戻ってこないかもしれない。

普通のクォーターホースよりかなり背が低く、表向きは私が乗るつもりだった。6フィート7インチ(約2m)の私は馬に申し訳ないような気がしたが、彼らはこれ以上馬が悪くなることはないと保証してくれた。

馬のオーナーたちは、私が時計を撮影しているのを見て興奮し、撮影用にモデルまでしてくれた。彼が着ていたセーターは、ロパペイサまたは“ロピ”セーターとして知られている、アイスランドのウールを使った伝統的なニットで、アイスランドにて手作りされているそうだ。アイスランドのウールを使い、アイスランドで手編みされてこそ、真のロピセーターと呼べるという。まさにシャンパンのようなものだ。

毎晩、オーロラの予報をチェックしたが、ムーンフェイズの星や雲の切れ間から覗くわずかな星を眺めるのが精一杯だった。

後ろに見えるのはフャズラオルグリューブル。

Icelandic horses
アイスランドの馬はでこぼこした地形にぴったりだが、私のような観光客にも当然適している。彼らはお互いに鼻を突き合わせるのが好きなようで、仲間外れにされると寂しくなる。だからこの馬は誰も乗っていない状態にもかかわらず、乗馬に出てかけていた。