月別: 2025年8月

このコラムは基本的に、“ウェブで販売されている最高の時計”というテーマのもと執筆されている。

パテック フィリップのステンレススティール(SS)製Ref.1518が“2000万ドル超”で販売されている記事をぜひご覧いただきたい。一方で、時針の代わりに太陽と月の表示があり、デッドビートセコンド機構を備えたユニークなドクサに興味があるならこのまま読み進めてほしい。

選んだ時計には自信があるが、前回掲載分の結果は今ひとつだった! 目玉となる初期フランク ミュラーとブシュロンの“ゴンドーロ”は、いまだにそれぞれの希望価格で販売中だ。一方でeBayに出品されていたポー“ラ”ルーターは最終的に1826.98ドル(日本円で約29万円)で落札され、ルガンのクロノグラフは完売となった。なお、ロレックスRef.6424のオークションも先週末に2325ドル(日本円で約35万2000円)で終了している。

それでは、今週のピックアップを紹介しよう!

オーデマ ピゲ プレシジョン 天文台ダイヤルとバルジュー13VZAS搭載 1948年製
先月のオリジナル マイアミビーチ アンティークショーで目にした数千点の時計のなかで、今もなお強く印象に残っているのは、このシンプルで、一見すると控えめで、さほど魅力的に映らないオーデマ ピゲだ。こんな紹介の仕方では次の時計にスクロールしたくなるかもしれないが、ぜひもう少しお付き合いいただきたい。この時計が特別な理由をお伝えしよう。このことは以前から言われ続けているが、私は今日のコレクターが本物のヴィンテージ オーデマ ピゲの素晴らしさを本当に理解しているとは思えない。

1951年以前に同社が製造した時計はどれも基本的に一点物であり、ひとつとして同じものは存在しなかった。シリーズとして製造されたモデルであっても、細かな違いがあったのだ。そして、それらは極めて稀少な存在だった。1940年代に製造されたパテック フィリップのクロノグラフの総数と、1951年以前のオーデマ ピゲのクロノグラフ製造数がわずか307本であることを考えてほしい。あるいはパテックのパーペチュアルカレンダー(Ref.1518、Ref.1526、Ref.2497)を思い浮かべて欲しい。パテックが同時期に製造したパーペチュアルカレンダーは688本だが、オーデマ ピゲはわずか9本しか作っていない。

この比較は一見、パテックの優位性を示すものに思えるかもしれない。しかし、当時オーデマ ピゲが複雑機構を備えた腕時計を製造していたという事実自体が驚くべきことなのだ。どんなブランドであれ、20世紀中ごろのパテックと比較するのは容易ではない。たとえばヴァシュロン・コンスタンタンは、この時期にパーペチュアルカレンダーの腕時計を一切製造していない。もちろん今回紹介する時計は時間表示のみ(タイムオンリー)のモデルだが、こうした背景を理解することでその価値がより明確になるだろう。これは単なる“ビッグスリー”の一角を担うブランドのヴィンテージウォッチというだけではない。3社のなかで唯一、ウォッチメイキングにおいて技術的挑戦を続け、各リファレンスを大量生産することなく仕立て上げていたブランドによる、極めて希少で卓越した時計なのだ。

前述のオーデマ ピゲの複雑機構のほぼすべては、バルジュー製のムーブメント“13VZ”をベースにしている。この点ではパテックのRef.1518やRef.2499、そして伝説的なJ.B.チャンピオンの天文台モデルと共通している。そして今回紹介するプレシジョン 13VZASは、オーデマ ピゲのなかでもJ.B.チャンピオンの時計に匹敵するモデルである。ただし、まったく同様というわけではない。なぜなら、このムーブメントが(パテックの事例のように)天文台クロノメーター検定にエントリーされた記録は存在していないからだ。しかし両者が持つ理念は共通している。天文台時計とはブランドが誇る究極のタイムオンリームーブメントであり、最高水準の精度と仕上げで製造されたものだ。そしてこのオーデマ ピゲには、そのすべてが反映されている。細かい説明はさておき、まずはムーブメントの仕上げに注目して欲しい。広い面積に施されたコート・ド・ジュネーブのストライプは、フィリップ・デュフォーのシンプリシティに匹敵するほど美しい(実際、デュフォー自身が仕上げの参考にしたのが13VZだと言われている)。

このムーブメントは32mm径のSS製ケースに収められており、2021年のクリスティーズで10万6250スイスフラン(当時の為替レートで約1285万円)で落札され、1万2000~2万8000スイスフラン(当時の為替レートで約145万〜328万円)のエスティメートを大きく上回った。そして現在、マイアミのメンタウォッチのアダム・ゴールデン(Adam Golden)氏が、この驚くべきオーデマ ピゲを13万5000ドル(日本円で約2040万円)で販売している。詳細はこちらから確認できる。

パテック フィリップ ローズゴールド(RG)製Ref.1486 箱、書類付き 1942年製
10月にこのBring A Loupeで、ヴィンテージのパテック フィリップ Ref.1485を“キューブ風”と表現して紹介した。それに続くのがひとつ上の番号にあたる姉妹リファレンス、Ref.1486だ。どちらもキューブのようなフォルムを持つが、Ref.1486はフードラグを備えゴールドケースで製造されている。一方のRef.1485は丸みを帯びた魅力的なラグを持ち、SSのみで展開されている。少々ややこしいが、どちらも同じケース構造を採用しており、このふたつのリファレンスはペアとして考えずにはいられない。これは時計界におけるユニークな仕様のひとつであり、私も特に気に入っている。

私の記事を読んだことがあるなら、私が20世紀中期の防水ケース、特にケースメーカーであるフランソワ・ボーゲルのものを好んでいることにはお気づきだろう。このRef.1486ももちろんボーゲル製で、1939年に取得された特許技術が使われている。この設計ではケースはケースバックとベゼルのふたつの主要パーツから構成され、側面にある3つのスライド式固定パーツがそれらをしっかりと密閉する。このRef.1486は状態が極めていいため、ケース側面のスライド機構用の刻みがはっきりと残っているのが確認できる。

1960年以前のパテック フィリップへの関心の高まりにより、こうした個性的なリファレンスの価格は近年上昇している。しかし私の知る限りでは、Ref.1486の優れた個体が市場に登場するのは実に久しぶりのことだ。実際、このリファレンスの過去最高額が記録されたのは1999年のオークションであり、それ以降極めて希少な存在となっている。そのため個体数の少なさと良好なコンディションのモデルの不足により、市場全体の価格上昇には追いついていない。Ref.1486はラグを含めたサイズが横27mm×縦37mmで、手首に乗せたときのバランスが絶妙であり、非常につけやすい時計だと感じる。

今回のRef.1486は、おそらく市場に登場したなかで最も素晴らしい個体のひとつだろう。“ピンクオンピンク”と呼ばれる配色で、RGのケースにRGトーンのシルバーダイヤルが組み合わされており、パテックのアーカイブ抄本によってそのオリジナリティが確認されている。さらにこの個体にはオリジナルの箱と書類まで揃っている。ケースに刻まれたホールマークのシャープさを見てほしい。ヴィンテージのパテック フィリップにおいて、これほどの状態のものは滅多にお目にかかれない。

この傑出したRef.1486は、バルセロナのAncienne Watchesのイグナシオ・コル(Ignacio Coll)とそのチームによって1万2000ユーロ(日本円で約188万円)で販売されている。詳細はこちらから確認できる。

ダニエル・ロート ホワイトゴールド(WG)製Ref.C117 永久カレンダー 1990年代製
LVMHとラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンがブランドの最新ラインとしてダニエル・ロートのモデルを少しずつ復活させているなか、パーペチュアルカレンダーの登場は時間の問題だろう。オーデマ ピゲとブレゲでの経験を経て、ロートは1989年に自身のブランドを立ち上げた。そして3年後の1991年のバーゼルワールドで、彼は世界初となる瞬時切り替え機能を搭載したパーペチュアルカレンダーを発表した。それまでのパーペチュアルカレンダーは、日付や月などの表示が真夜中にかけて徐々に変化するものだったが、このモデルではすべての表示が一瞬で切り替わる仕組みになっている。ロートの作品は初期の独立系時計師の頂点を象徴するものであり、このパーペチュアルカレンダーもその好例だ。彼の初期の時計は伝統的な時計製造に根ざしながらもまったく新しい美学を打ち出し、その革新的な機能性によって業界の進化を促した。

しかしロートはこの偉業をひとりで成し遂げたわけではない。実はこのパーペチュアルカレンダーの開発に際し、彼は親しい隣人であるフィリップ・デュフォー(Philippe Dufour)に協力を仰いでいる。デュフォーはこのモデルに搭載されたパーペチュアルカレンダーモジュールの開発に大きく関与した。このモジュールは最終的にレマニアのエボーシュムーブメント、Cal.8810の上に搭載されることとなった。ロートとデュフォーという20世紀を代表するふたりの名工がてがけたにもかかわらず、このプロジェクトは非常に困難を極めた。世界初のものを生み出すのは決して容易なことではない。デュフォー自身も「大変な作業だったのを覚えています。ムーブメントの完成までに6~7カ月かかりました」と語っている。

ある日曜日の午後、マンハッタンのアッパーイーストサイドを何気なく歩いていた時、ふとした好奇心からリアルリアル(The RealReal)のマディソンアベニュー店に立ち寄った。そしてショーケースのなかにこの時計を見つけた。初期のダニエル・ロートをこうした場所で目にするだけでも十分に興奮するが、それがデュフォーが関わったパーペチュアルカレンダーとなればなおさら心が躍る。とはいえ、周囲の誰もこの時計の意義を理解できるとは思えなかったので時計をそっと置き、「ありがとう」とだけ言って店を後にし、急いで帰宅してこのBring A Loupeの記事を書き上げた。

この個体は完璧とは言えない。おそらくオーバーホールが必要で、オリジナルボックスやギャランティーも付属していない。もちろん1990年代の時計としてはそれらが揃っているのが理想的だ。しかしこのモデルの過去の取引価格を考慮すると、見逃せない価値がある。同じリファレンスの個体が2024年には4万8946ドル(日本円で約740万円)、2023年には7万674ドル(日本円で約1070万円)でフィリップスのオークションにて落札されている。なお、これらはどちらもフルセットだった点は付け加えておこう。

このダニエル・ロートのパーペチュアルカレンダーはリアルリアルによって3万6000ドル(日本円で約545万円)で掲載されているが、現在のセール価格は3万4200ドル(日本円で約518万円)にまで下がっている! 詳細はこちらから確認できる。

ドクサ サン&ムーン デッドビート秒針 1950年代製
今週のピックアップの締めくくりにふさわしいeBayからの1本として、ヴィンテージの魅力に溢れたこのドクサを紹介しよう。HODINKEE Magazineを何号か遡ると(Vol.11だったはず)、“Hey Hodinkee”でコミュニティからの質問に答える機会があった。そのなかでも特に興味深かったのが、「比較的手ごろな価格でデッドビート秒針機構を搭載したムーブメントを見つけるにはどうすればいいか?」という質問だった。もちろん、現在1万ドル未満でデッドビートを製造している数少ないブランドのひとつとしてハブリング²を挙げたが、話の大部分はヴィンテージ時代のサプライヤーであるシェザード(Chézard)に焦点を当てた。

シェザード SAは20世紀前半に活躍したエボーシュメーカーで、最終的に現在のETAの一部となった。わかりやすく言い換えるならETAに吸収されたブランドということだ。とはいえ、このメーカーについて詳しく調べるのはなかなか難しい。シェザードは1952年にデッドビート秒針機構のムーブメント群に関する特許を取得しており、今日ではこの分野でコレクターに知られている。ここで明確に説明しておくと、デッドビート秒針とは秒針が通常のスムーズな動きではなく、1秒ごとにカチッとジャンプするように進む機構を指す。この動作は、輪列に蓄えられた一定の張力が限界に達したときに、ゼンマイが4番車を解放することで実現される。

このシェザード製ムーブメントを搭載したドクサは、間違いなくユニークなデザインだ。時針を持たず、サン&ムーン表示で時間を示すという珍しい仕様になっている。太陽は午前6時(おおよそ日の出の時間)に現れ、月は午後6時から登場し、時間を示す仕組みだ。

セイコー 奇想天外な時計たち

セイコーは13年ぶりに“パワーデザインプロジェクト”という社内プロジェクトを復活させた。これは非常に興味深い取り組みであり、セイコーウオッチの社内デザイナーたちが、従来の枠にとらわれず自由に時計のコンセプトを探求できる場となっている。昨年のテーマは“専用すぎる腕時計展”であり、デザイナーたちは実用性を重視した時計を生み出すことを求められた。しかし、それは我々が一般的に考えるような実用性とはやや異なるアプローチだった。

昨年のプロジェクトで、文字どおり“パンダ”クロノグラフを再解釈したかつてないほどユニークなモデルが登場したのを見逃していたなら、惜しいことをした。しかし心配は無用だ。今年もセイコーは“専用すぎる腕時計展2”というシンプルながら的確なタイトルで、このプロジェクトを再び開催した。

商業的な成功はさておき、このプロジェクトは、巨大コングロマリットが社内の才能を育成して膨大な製品ラインナップのなかで遊び心ある個性を表現する素晴らしい試みである。規模の大小を問わず、時計デザインの背後にある人間らしさを改めて感じさせてくれる。今年は6本の時計が登場し、そしてそのどれもが驚くほど専門に特化していた。

ナイトモード
最初に紹介するのは忍者専用腕時計だ。タクティクール(tacticool)とタクティカル(tactical)が融合したデザインであり、忍者が夜の闇のなかで活動することを考慮し、すべてブラックで統一されている。忍者が直面する外部衝撃(共感できる人はいるだろうか?)から時計を守るため、デザイナーの菅沼佑哉氏は、文字盤の針を保護するスイング式の蓋を採用。この蓋はガラス製または金属製を選択でき、時間を確認していないときには、針をしっかりと覆う構造になっている。

もちろん、この時計には輝くメタルブレスレットや繊細なレザーストラップを合わせるわけにはいかない。菅沼佑哉氏は、忍者専用腕時計にハイブリッドなカフストラップを採用。これは細いレザーを幾重にも巻きつけて装着する仕様となっており、腕にしっかりと固定しながらも肌を保護するデザインになっている。さらにセイコーによれば、この時計は上腕や足首にも巻きつけられるため、忍者のさまざまな動きに適応できるとのことだ。スプリングドライブムーブメントを搭載できるかどうかも気になるところである。

もし忍者のようなステルス性が自分には合わないと思うなら、まったく正反対のアプローチとして、目がくらむような光と鼓膜を揺さぶるサウンドに包まれるナイトクラブの世界へ飛び込んでみるのもいいだろう。そんな環境にぴったりなのが“クラブDJ専用腕時計”だ。セイコーはこれらのコンセプトウォッチが市販予定のないデザインであることを明確にしているが、特にこのDJ専用腕時計に採用されたインフィニティ(無限)ミラーのアイデアは、ぜひ製品化してほしい要素のひとつだ。ビジュアル面では、まるで『ブレードランナー(原題:Blade-Runner)』をほうふつとさせるネオンカラーが魅力的であり未来的な印象を放っている。さらに時計の見た目から判断すると、セイコーのルミブライトを塗布する必要すらなさそうだ。クラブでDJをするなら、ブラックライトの下で自然に発光し、最高の視認性を発揮することだろう。

クラブDJ専用腕時計

この時計はDJ専用というだけあって、文字盤の時間表示にもユニークな工夫が凝らされている。午後6時から午前5時までの時間のみを表示し、不規則な睡眠サイクルを前提とした設計となっている。デザイナーの伊東絢人氏はこのモデルにセイコーの自動巻きムーブメントを採用しているが、この省略された時間表示がデジタルムーブメントなしでどのように機能するのかは不明だ。すべての要素が綿密に考え抜かれており、ストラップにもこだわりが見られる。選ばれたのは中央にUV反応性のホワイトファブリックを配したレザーストラップで、全体のデザインを引き締める仕上がりとなっている。

夕暮れから夜明けまで
クリストファー・ノーラン(Christopher Nolan)監督の映画の登場人物がしばしばハミルトンを着用するように、昨年はロバート・エガース(Robert Eggers)氏にとって、『ノスフェラトゥ(原題:Nosferatu)』に企業スポンサーを取り入れ、オルロック伯爵にこの眩い“ヴァンパイア専用腕時計”を持たせる絶好の機会だったのかもしれない。しかし、その宝石がちりばめられた外観を超えて見れば、この時計は太陽恐怖症のトランシルヴァニア人にとって必携の1本といえるかもしれない。

石原 悠氏(セイコーの高級ラインを手がけるデザインディレクター)は、ヴァンパイアが安全に外出できる時間を把握できるよう、文字盤のすべての要素を巧みに設計している。回転ベゼルには赤から透明へとグラデーション状に配置されたクリスタルがセットされており、吸血鬼が最後の血の宴からの経過時間を記録できる仕様になっている。

もし鏡に自分の姿が映り日の出とともに目覚めるなら、きっとバランスの取れた朝食で1日を始める準備ができているはずだ。そこで登場するのが“ゆで卵好き専用腕時計”である。ケース側面のプッシャーを操作すると、好みの固さに応じたタイマーをセットできる(ちなみに私は半熟一択)。さらにこのケースは10%の卵殻を含むプラスチック複合素材で作られており、まさにゆで卵愛好家のためのアイテムとなっている。

針は時間の経過とともにスイープし、最後に振動して卵の茹で上がりを知らせる仕組みになっている。もちろん、デザイン面でもこの時計のテーマがしっかりと反映されており、オレンジからイエローへと変化するグラデーションダイヤルはまさに卵の黄身を思わせる色合いだ。この時計を手がけたのはグランドセイコーの酒井清隆氏。デザインの詳細は、公式ページに登場する“タマリエ(卵ソムリエ!?)”に聞いてみるといいだろう。まさにエッグストリーム(極端な卵愛)とも言うべき時計だ。

古き伝統
ついに、全面夜光ダイヤルを採用したモデルが登場した。しかし、まさかそのデザインが“サンタクロース専用腕時計”になるとは予想していなかった。暗闇で光るダイヤルの上を、白い秒針が駆ける。その先端には赤いトナカイがデザインされている。確か赤いのはルドルフの鼻だけだった気がするが…まあ、それはさておき。時刻表示は夜間のみに限定されており、これはサンタのプレゼント配達スケジュールに合わせたものだ。また星型のGMT針がセカンドタイムゾーンを指し示し、世界中を飛び回るサンタにとって実用的な設計となっている。

この時計の時間表示の仕組みが現実世界でどのように機能するのか、正直なところ完全には理解しきれていない。しかしそれを議論するのは、魔法映画のなかで熱力学の法則を持ち出すようなものだとも思う。松本卓也氏が手がけたこのモデルは、今回のデザインのなかでも最も装飾性の高い1本だ。ハンターケースを採用し、ヴィンテージ懐中時計を思わせるディテールが随所にちりばめられている。さらに美しくデザインされた彫刻入りのカバーが、クラシカルな魅力を一層引き立てている。

もしクリスマスに本当の恋が見つかるかどうかを知りたかったなら、この展示の最後を飾る時計が、その問いに答えてくれるかもしれない。廣瀬由羽氏が手がけたこの“恋する乙女専用腕時計”は、恋に夢中な若者たちが運命の人を探す手助けをするという、なんとも愛らしいコンセプトの時計だ。

特徴的なのは、ひとつの針が半透明の花びらディスクになっている点。このディスクには花占いの機能が組み込まれており、花びらの一部がカットアウトされている。占いを始めるとディスクがランダムに回転し、下に印刷された“LOVE me”または“Love me NOT”のどちらかのメッセージが小窓から現れる仕組みだ。さらに、大きく歪んだクリスタルを採用することで、占いの結果はボタンを押した人にしか見えないようになっている。