ゼニス(ZENITH)とアニメ『ルパン三世』の因縁は、実に半世紀以上前に遡ります。1971年、テレビアニメ第1シリーズの放送当時、次元大介というキャラクターはすでにゼニスの「A384」をモチーフにした腕時計を身に付けていました。
しかし、当時は著作権の問題からブランドの正式な許諾を得ていなかったため、文字盤から「Z」や「H」のロゴが意図的に消されていました。この「禁断のアイテム」が、今や公式コラボレーションへと発展するとは、当時の制作陣も予想だにしたことでしょう。
2019年から始まったコラボレーション3部作(およびオークション用一点もの)を経て、今年ついにシリーズ第5弾となる**「A384 ルパン三世 コミック版 リミテッドエディション」が登場。今回はチタンケースとクリームダイヤル**の採用により、アニメの世界観を現実に忠実に再現した、まさに奇跡の一本です。
アニメ『ルパン三世』に登場するA384の変遷
アニメに登場するA384は、単一のモデルではなく、時代とともに変化していました。
● 初期(黒文字盤): 最初に登場したのは、冒頭でも触れた「ZENITH」の文字を消された黒文字盤モデル。
● 後期(パンダ文字盤): 第1シリーズ最終話あたりから登場したのが、グレー×ブラックのケースに、クリーム色(ベージュ)の文字盤を備えたモデルです。
今回の2025年限定モデルは、この「第1シリーズ後期に登場したA384」を完全復刻したものです。
A384が持つ制表史的意義
『ルパン三世』がA384を選んだ理由は、商業的な宣伝ではなく、当時の時計界におけるその「先進性」にありました。
1969年に発表されたA384は、世界初の自動巻きクロノグラフウォッチの一つです。
● ケース: 直径37mmの精鋼ケース。
● デザイン: 極めて高い識別力を誇る「パンダフェイス」(逆引き)。
● ムーブメント: 振動数36,000振動/時間(5Hz)という高振動レートを誇る**エル・プリメロ(El Primero)**自動巻きクロノグラフムーブメントを搭載。
この「自動巻き」「高振動」「クロノグラフ」という3大要素を兼ね備えたA384は、60年代の製表技術の最先端そのものでした。
2025年限定モデルのポイント
これまでのコラボレーション(3部作)とは一線を画す、今回の新作の特徴を押さえておきましょう。
1. ヴィジュアル:アニメ設定への完全回帰
従来の「3部作」がすべてステンレススチールだったのに対し、今回はグレーチタンを採用。表面は微粒子ブラスト仕上げが施され、アニメで描かれていた独特の鈍い光沢を現実に再現しています。また、これまでのモデルはシルバー文字盤が主流でしたが、今回は**クリーム色(ベージュ)**の文字盤を使用。アニメのセル画のように、わずかに黄ばんだような色調は、当時の空気感をそのまま切り取ったかのようです。
2. デザイン:次元大介のシルエット
裏ガラスには、次元大介が愛用する拳銃を構えるシルエットがレーザー彫刻されています。これは単なる装飾ではなく、アニメ『ルパン三世』の第1シリーズのオープニングに登場する、次元のシルエットを忠実に再現したもの。この細部へのこだわりが、ファンの心を掴みます。
3. ムーブメント:伝統と現代の融合
裏蓋からは、キャリバー 400(El Primero 400)が覗けます。これは1969年のオリジナルエルプリメロをベースに、現代の使用感覚に合わせて改良を加えたムーブメントです。高振動というDNAはそのままに、メンテナンス性や耐磁性能が向上しており、コレクションとしての価値だけでなく、実用時計としても十分な性能を備えています。
総括:フィクションとリクションの融合
ゼニスA384と『ルパン三世』は、まさに「相思相愛」の関係です。
多くのファンは、3部作の完結を以ってこのシリーズは幕を閉じるものだと考えていました。しかし、今回の次元大介特別仕様は、単なる続編ではなく、「アニメの設定資料を忠実に再現する」という新たな切り口を提示しました。
チタンケースによる軽量化と、クリーム文字盤による絶妙な経年変化風の色調。この一本は、アニメファンにとっても、時計愛好家にとっても、これまでで最も手に入れたい「時計」であることに違いありません。
色彩の還元度がさらに進化:ゼニスが『ルパン三世』と新たな時計史を創造
2025年12月22日 ゼニススーパーコピー