カテゴリー: スーパーコピーブランド

ブルガリが魅力的なサーモンとスティールの色合いで、

ブルガリのオクト フィニッシモは、ローマ建築から着想を得たデザインを取り入れた超薄型ケースに現代的な素材に見事に融合させて誕生したコレクションです。2014年の登場以来、3針からトゥールビヨン、パーペチュアルカレンダーまで、さまざまな複雑機構を備えた極薄のムーブメントを展開し、数々の世界記録を打ち立てて、賞を受賞してきました。

当初はサンドブラスト仕上げが施されたケースにトーンオントーンのダイヤルが組み合わさったものでしたが、やがてスティールやゴールド、時にはタンタルといった素材がケースに取り入れられ、ダイヤルにも新たなカラーやデザインバリエーションが与えられるようになり、誕生から約10年で成熟したコレクションへと成長しました。

同コレクションのなかで最もシンプルなモデルが、2017年に発売された3針のオクト フィニッシモ オートマティックです。ケースの厚さはわずか5.15mmで、リリースされた当時の最薄自動巻き時計で、ブルガリが3つめの世界最薄記録を獲得したモデルとして話題を集めました。2020年にはスティール製ケースを備えたオクト フィニッシモ オートマティック Sを発表。同じ直径40mmですが、厚さが6.3mmとなり、100mの防水性能が確保されたことでより日常使いしやすいパッケージになりました。

ここで紹介するオクト フィニッシモ タスカンコッパーは、シンプルに言えばオクト フィニッシモ オートマティック Sのカラーバリエーションモデルです。実は2023年に北米限定50本で発表されたリファレンスと同じものですが、今回のリリースで通常ラインナップに加わることになりました。

オクト フィニッシモ タスカンコッパーの最も重要な要素であるダイヤルカラーは、時計業界ではいわゆるサーモンダイヤルと呼ばれるものですが、ややピンク色が強く、控えめながらも独特な雰囲気を備えています。デザインを手掛けたブルガリ ウォッチ デザイン センター シニア・ディレクターのファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ氏は、同モデルについてこう話します。「このメタリックサーモンの色合いは、一般的に見られるコレクターが好むヴィンテージの美学から来たものではありません。イタリア美術のルーツである16世紀、正確にはマニエリスムと呼ばれる当時の改革的な運動からインスピレーションを得たものです」

マニエリスムは、16世紀中頃から末にかけて見られる後期イタリア・ルネサンスの美術様式を指します。レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ボッティチェッリといったイタリアの盛期ルネサンスの巨匠たちが作り上げた完成された洋式に倣いつつも、わざと極端な比率に引き伸ばされた人体やS字曲線を描いたねじれたポーズ、不安定な構図、フラットな遠近法や空間表現が取り入れられた絵画が特徴です。

僕は本作のプレスリリースのなかでマニエリスムからの影響であると読んだときにフィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂につながりがあるのではないかと考えました。なぜならマニエリスムを提唱したミケランジェロの弟子ジョルジョ・ヴァザーリが大聖堂内部のフレスコ画を描いていたからです。もちろんオクト フィニッシモの形状がローマのマクセンティウスのバシリカから着想を得たものであることは知っていましたが、フレスコ画が描かれた大聖堂の天井も八角形で、外から見た屋根の赤褐色もこのダイヤルに近いものがあるように感じました。

ファブリツィオ氏に伺ってみるとヴァザーリではなく異なる作品であると伝えられました。「いい推測ですね。でも私の直接的なインスピレーション源となったのはヤコポ・ダ・ポントルモの絵画『十字架降下』です。デザイン学校2年生のときに授業でマニエリスムについて学んだ際に習ったのがこの作品でした」。なるほど、確かに時計愛好家たちがサーモンダイヤルと呼ぶローズゴールド色よりもピンクが強い色合いなのも頷けます。

スイスのウォッチメイキングにおいてサーモンダイヤルは定番のカラーのひとつですが、タスカンコッパーのダイヤルはメタリックトーンでありながら、艶消しの質感があるユニークなもので、光を受けると深みのあるアニメーション効果が見られます。ロジウムメッキの針とインデックスとの組み合わせによって美しいコントラストが生まれ、視認性も良好です。クラシックなドレスウォッチやヴィンテージスタイルの時計に見られるカラーをブルガリらしいやり方でスティールのオクト フィニッシモ オートマティックのケースにマッチさせているのです。

オクト フィニッシモは、何度も身につけたことがありますが、ダイヤルカラーが異なるだけでも大きく印象を変える不思議な感覚があります。多面的かつ立体的なケース構造ながらその薄さによる控えめなデザインが異なるカラーや意匠をより大きな違いのように感じさせるのかもしれません。当初は北米限定としてリリースされたモデルでしたが、着けてみると日本人の肌なじみのよいカラーリングのように思いました。

個人的にブルガリのオクト フィニッシモは先述のとおり成熟したコレクションであり、完成されたものであると捉えています。だからこそ建築家の安藤忠雄 氏や現代美術家の宮島達男氏らとのコラボレーションや、先日発表されたばかりのオクト フィニッシモ スケッチ 限定モデルのような前衛的なデザインとの組み合わせでもまったく破綻しないのだと感じます。タスカンコッパーは、カラーバリエーションといえばそれまでかもしれませんが、ファブリツィオ氏が選択したマニエリスムから汲み取ると完成されたコレクションにより改革的なアプローチを与え続けようとする動きなのだと言えるのではないでしょうか。

ブルガリ オクト フィニッシモ タスカンコッパー Ref.103856。直径40mm×厚さ6.4mm、ステンレススティール製ケース、100m防水。サンレイ加工タスカンカッパーメタルダイヤル、ロジウムプレートの針とアワーマーカー。ムーブメントはCal.BVL138搭載。自動巻き、パワーリザーブ約60時間、2万1600振/時、時・分、スモールセコンド。211万2000円(税込)

伝説のアルビノロレックス GMTマスター Ref.6542 の情報です。

この仕事を始めてから7年以上が経った。主要なオークションやトレードショーに参加し、世界中のコレクターたちとも数多く会ってきたが、最近ではよほどのことがないと心が動かされなくなったといってよいだろう。たとえば今年のバーゼルワールドは、率直に言って自分が純粋に興奮した時計はひとつだけだった。SIHHではひとつもなかった。これはあくまで個人的なレベルで心からワクワクする時計に限ってという話であり、どちらのイベントにもすばらしい新作はたくさんあった。そんななか、今日は日本から来た友人のおかげでとびきり興奮する1本を紹介できる。このモデルはかつて眉をひそめられたものの、個人的にぜひ手に入れたいと思っていた時計だ。それはロレックス GMTマスターの初代Ref.6542ながら伝説のベークライトベゼルを備えたモデルで、そのなかでも特に希少なホワイトダイヤルの個体である。そう、アルビノGMTと呼ばれる神話的な時計との対面だ。

まず最初に言っておきたいのは、すべての偉大なヴィンテージロレックスにおいて、価値の本質は発見だけでなく真贋の確認にもあるということだ。自分では究極のヴィンテージロレックススポーツウォッチを発見したと思っても、世界の権威者たちがその時計を本物と認めない限り、それはただの時計に過ぎない。そうした厳しい現実を身をもって学んだ人々を何人か知っている。

2015年の現時点で、ほとんどの人がホワイトダイヤルのRef.6542 GMTが存在すると信じていると言っても過言ではない。結局のところ、アルビノエクスプローラーやアルビノデイトナが実在していたことは分かっている。エクスプローラーは売りに出されたとき18万ドル(当時の相場で約1760万円)を突破し、デイトナはオークション史上最も高額なロレックスとなった。ただ正直言って、どちらが欲しいかと問われたら私はRef.6610を選ぶ。

では“アルビノ6542”とは何か。それはただシンプルに、ホワイトダイヤルを備えた初期のGMTである。それだけ聞くとあまり大したことのようには思えないだろう。ロレックスのホワイトダイヤル? それがどうした、と思うかもしれない。実際、この話の続きがどうであろうと、1950年代のGMTにホワイトダイヤルが付いていても、まったく大したことではないと考える人もいるだろう。それはそれで構わない。ヴィンテージロレックスの細部にこだわる人もいれば、そうでない人もいるからだ。だが私を含めその魅力に引かれる者にとって、この時計はとても特別な存在だ。その理由のひとつは、長年にわたりこのホワイトダイヤルのGMTが本当に存在するのかどうかが不明だったことにある。ホワイトダイヤルを持つ6542が存在するという話はあったものの、オンラインコミュニティ上では信ぴょう性のある個体が1度も目にされていなかった。コレクターでありディーラーでもあるヴィンテージロレックス愛好家、ステファノ・マッツァリオール(Stefano Mazzariol)氏が2010年2月に自身のブログでこの時計について記事を発表するまでは。

ステファノ氏は自身の判断で疑いなくオリジナルだと確信できる時計に出合った。彼はダイヤルを取り外してプリントの細部を丁寧に検証し、オリジナルのブラックダイヤルモデルと比較した。その結果この時計が本物であるという結論に至った。そして彼は自身のブログに記事を投稿し、さらにヴィンテージロレックスフォーラムにその内容を公開した。その際彼の調査は、ヴィンテージロレックスコミュニティ特有の強い懐疑の目にさらされることになった。

それでも5年が経った今、ステファノ氏の投稿はホワイトダイヤルGMTに関する聖典となっている。そして今回紹介するこの時計は、彼の時計と見事に一致している。

この時計を初めて見たのは、長年日本で活動しているディーラー、イーストクラウン(East Crown)のInstagramだった。最初は私も疑っていたが、友人のルイ(Bring A Loupeを執筆している)がディーラーの息子であるKと話をしたところ、写真をもとにその時計が完璧に見えると言ったことで少し安心した。そして最終確認としてアンドリュー・シアー(Andrew Shear)氏にも話を聞いたところ、彼もこの時計は100%正しいと認めていた。

この時点で、私は完全に興味を引かれていたと言ってよいだろう。なにしろアルビノGMTは今やヴィンテージロレックスマニアたちのあいだで語られる伝説的な存在であり、私は1度も実物を見たことがなかったから。そこで、次にイーストクラウンのKがニューヨークに来た際、オフィスにその時計を持ってきてもらうよう頼んだ。彼は快く応じ、こうしてみなさんにこの写真を見せることができたというわけだ。この時計は本当に素晴らしかった。自分の大好きな時計、6542 GMTにちょっとしたひねりが加わるだけで、まったく新しい印象を与えている。とくにいつも見慣れている光沢のあるブラックダイヤルとは違い、どこかカジュアルな雰囲気を感じさせるのだ。

この6542のケースとベゼルについては、それぞれが独立したストーリーを語れるほど、どちらもこの年代の時計としては驚くほど良好な状態を保っている。正直なところ、この個体は最初からこのダイヤルを備えていたのか、それともあとからこの素晴らしいケースとベゼルに特別な文字盤が組み込まれたのかは定かではない。実際希少なダイヤルが状態のいいケースに交換されることがあるのは事実だが、それでもこの時計の魅力が損なわれることはない。そしてみなさんが気になっているであろう質問に答えると、裏蓋には“PAN-AM(パンナム)”のロゴは刻まれていない。

私はKに、彼の父親がこの時計をどうやって手に入れたのか、そしてそれが販売される可能性があるのかを尋ねた。話によると、この時計はニューヨークから持ち込まれ、彼の父親が著名なプライベート・コレクションに入れていたという。ただしこのコレクションの所有者が、この希少なアルビノGMTを手放すと決めた場合は、必ずそれを彼に売った人物に戻すという条件付きだった。そして何年もの時が経ち、そのコレクションの所有者は約束を守り、このアルビノGMTは現在、イーストクラウンの親子のプライベートコレクションに収められている。では、彼らはこれを売るのか? その答えは控えめなノーで、少なくともお金だけでは手放さないという暗示だった。これほど特別なものを手にしているなら、お金は簡単に手に入る。ヴィンテージロレックス愛好家である私やイーストクラウンのふたりにとって、このコンディションのアルビノGMTはこれ以上ないほど特別な存在なのだ。

ウェブ上で販売されている注目の時計を厳選して紹介する。

おそらくプライベートメッセージで直接取引が成立し、時計は現在の市場価格である6000~8000ドル(日本円で約95万〜126万円)の範疇で新たな持ち主の元へ渡ったのだろう。最後にもうひとつだけお知らせがある。ブシュロンのトラベルアラームクロックが、1月11日土曜日(米東部標準時)にTennants Auctioneersで競売にかけられる予定だ。

それでは、今週の注目時計を見ていこう。

ロレックス バブルバック Ref.3372 ピンクゴールド&スティールのツートンモデル 1944年製
A Rolex ref. 3372 Bubbleback
市場でロレックススーパーコピー時計n級品 代引き バブルバックがようやく活気を取り戻しつつあることを報告できるのは、喜ばしいことだ。このモデルは数十年前に非常に人気を博し、多くのコレクターに収集されたが、近年ではヴィンテージ時計市場のなかであまり注目されなくなっていた。その理由はいくつかある。ケースサイズの小ささ、良好な状態の個体を見つける難しさ、そして再塗装(リダン)された文字盤が多すぎることなどだ。そのため特に熱心なヴィンテージウォッチのコレクターでさえ、ここ10~20年はバブルバックを敬遠してきた。

しかし最近小振りなケースサイズが“クール”とされるトレンドがあり、さらにカルティエが人気を集めるなかで20世紀初頭の時計デザインへの関心が高まっていることで、市場におけるバブルバック需要を高めている。2024年11月のジュネーブでのオークションシーズン中、TikTokで人気のディーラーであるマイク・ヌーヴォー(Mike Nouveau)氏と会った際、彼が素晴らしいローズゴールド(RG)のバブルバックを見せてくれた(ちなみに、その時計は私のYear In Reviewのメイン画像にも登場している)。ヌーヴォー氏はその時計を午前中に別のディーラーから購入し、数時間後には別のオーナーに売却していた。つまり、彼がその時計を所有していたのはほんの数時間だったというわけだ。

A Rolex ref. 3372 Bubbleback
トレンドというのは、1本の時計がディーラーを介して瞬時に売れるだけでは生まれない。先日、Loupe Thisが別の素晴らしいバブルバックを出品していた。それは無垢のイエローゴールド(YG)製Ref.3372で、Giudici Milanoのダブルネームとツートンのサーモンダイヤルを特徴としていた。説明が長くなってしまったが、これは本当に素晴らしい1本だった。私自身も隠れたバブルバック支持者だが、落札価格が3万3000ドル(日本円で約520万円)になったことには驚かされた。この結果を見て、私のトレンド予測センサーが反応している。

今回、Loupe Thisが同じRef.3372をさらにピンクゴールド(PG)&ステンレススティール(SS)のツートンモデルで出品している。これは夜光を塗布したインデックスと24時間表示のインナートラックを備えた、よりスポーティな文字盤を持つモデルだ。同じオークションサイトで立て続けに2本のRef.3372が登場するのは珍しいことだが、ここで強調しておきたいのは、このようなオリジナルの文字盤を持つバブルバックを見つけるのは今やほぼ不可能に近いということだ。特に夜光文字盤の場合、ラジウムが経年劣化することで文字盤が損傷することが多く、その過程で所有者が“修復”するために再塗装してしまうケースが少なくない。しかし今回の出品物に関してはそのような手が加えられておらず、非常にいい状態で残っている。もし私の言葉を信じ、トレンドが本格的に到来する前にバブルバックを手に入れたいのであれば、これは絶好の機会だ。

A Rolex ref. 3372 Bubbleback
オークションを主催するLoupe Thisはロサンゼルスに拠点を置いている(現地の皆さんの安全を祈る)。この記事を書いている時点での現在の入札価格は1万501ドル(日本円で約166万円)だ。このロレックス バブルバックのオークションは、1月15日(水)正午(米東部標準時、日本では1月16日の午前2時)に終了予定である。詳細はこちらから確認してほしい。

ロレックス オイスター パーペチュアル Ref.6332 ブルーエナメルダイヤル 1954年製
A Rolex ref. 6332 Bubbleback with enamel dial
厳密に言えば、この時計もバブルバックに分類される。しかし誤解のないように言っておくが、これを“バブルバックだから”と紹介しているわけではない。今回のBring A Loupeにこの時計を取り上げた理由は、バブルバックであることは二次的な要素でしかないのだ。正直に言おう。私は火曜日の夜、マイアミでMomentum Dubaiのターリク・マリク(Tariq Malik)氏と夕食を共にした。6人のグループディナーで、勘定はきっちり均等に割った。ディナーの場所はToni’s Sushi Barだったが、料理の印象は“まあまあ”だった。一方で、ターリクがその夜につけていた時計のほうが、ずっと記憶に残っていた。もちろん、それがこのブルーエナメルダイヤルの1954年製オイスター パーペチュアルだった。

A Rolex ref. 6332 Bubbleback with enamel dial
エナメルダイヤルのロレックスは、常に私の心を掴んで離さない。しかし完全なクロワゾネエナメル(例えば先月、フィリップスニューヨークのオークションに出品されたRef.6100のようなもの)は、100万ドル(日本円で約1億6000万円)近い価格になるだろう。一方でこのRef.6332は、その価格の数十分の1でありながら私にとって心躍る感情を同じように呼び起こしてくれる。特に気に入っているのは、6時位置の“OFFICIALLY”という文字列に赤い文字が加えられていることだ。この文字盤全体のデザインはアメリカやフランス、イギリスなど、どこかの国旗の色あせたトリコロールを思わせる。販売者は文字盤の製造元について明記していないが、12・3・6・9の独特なフォントから判断して、おそらくこれはスターン・フレール社(Stern Frères)によるものだろう。この会社は、ロレックスのクロワゾネダイヤルをてがけたことで知られている。例えばRef.8171 パデローネの文字盤にも同じフォントが使われており、スターン・フレールがそれを製造したことは分かっている。

A Rolex ref. 6332 Bubbleback with enamel dial
確かに厳密な意味では、この34mm径ケースのオイスターはバブルバックに分類される。しかし初期のバブルバックに見られる象徴的なケースと滑らかに一体化したラグがないため、この1950年代の個体は一般的なスクリューバックのモデルに見間違えられたとしても不思議ではない。実際、私もその間違いを犯していた。火曜日にターリク氏の時計を見たとき、それがバブルバックだと気づかず、この記事を書くために販売情報を確認するまで気づかなかった。

販売者であるMomentum Dubaiはその名の通りドバイに拠点を置いているが、この時計は現在マイアミにあることを私は知っている。このロレックスの販売価格は3万8116ドル(日本円で約600万円)だ。詳細はこちらで確認して欲しい(編注:すでに売却済み)。

パテック フィリップ ホワイトゴールド製Ref.3445 ギュブランとのダブルネーム 1960年代製
A Patek ref. 3445G Calatrava with Gübelin retailer stamp
一見するとパテック フィリップのRef.3445は、“退屈なカラトラバ”のひとつかもしれない。しかし実物を見るか、あるいは所有する機会があれば、このモデルが日常使いのヴィンテージウォッチとして最高レベルの1本であることに気づくはずだ。オンラインでよく見る“ソルジャー”ショット(時計単体の直立写真)では、この時計のラグの鋭いエッジや、一見単調に見えるラグの微妙な曲線美、そしてカラトラバの文字盤が持つ洗練されたシンプルさを十分に感じ取ることはできないだろう。ただシンプルと言い切るのは少々語弊がある。このRef.3445は日付表示機能を備えており、カラトラバとしてはかなり複雑な機能を搭載しているのだ。さらに特筆すべきは、このモデルがパテック フィリップにおける最初の量産型自動巻き防水腕時計であり、日付表示機能を持つ初のシリーズ生産モデルであるという点だ。知れば知るほど、興味が湧いてくる時計である。

とりわけこの時計について話すと、ヴィンテージのパテック フィリップをeBayで購入するには覚悟が必要だ。しかしこの個体は写真を見る限り、状態は悪くないようだ。写真から判断する限り、この時計が“ファーストシリーズ”の盛り上がったロゴを持つハードエナメルダイヤルのモデルなのか、“セカンドシリーズ”のフラットな文字盤のモデルなのかははっきりしない。しかしホワイトゴールド(WG)ケースで、ギュブランのダブルネーム付きであることを考えると、この価格は非常に魅力的である。もちろんリスクもある。出品者のフィードバックスコアは8と高くはない。しかし、私はこの時計の価格は市場価格を下回っていると踏んでいる。

この時計はフランスのレ コンタミン モンジョワに拠点を置くeBay出品者によって、1万2061ドル強(日本円で約190万円)の即決価格で出品されている。詳細情報や写真はこちらから確認してほしい。

ギュブラン トリプルカレンダー 1940年代製
引き続き、ギュブランをテーマにした時計を紹介しよう。プライベートレーベルのトリプルカレンダーであり、非常にお買い得な1本だ。このコラムを長く読んでいる読者であれば、私がギュブランの名が入った時計に目がないことはすでにご存じだろう。私は、販売店名が刻印された時計を非常に興味深い存在だと感じている。だがこうした販売店のロゴが入ったプライベートレーベル時計は、ヴィンテージ市場において評価が難しい。なぜなら、どのブランドが製造したのかが不明なケースが多いためだ。その結果、ほかのヴィンテージ時計と価格を比較するのが難しく、適切な相場を見極めにくい。

このギュブランのトリプルカレンダーについても、どこが製造したのか特定するのは難しい。正直に言えば、私もこのトリプルカレンダーがどのメーカーによるものかはわからない。しかし、それでも販売価格に対して十分に価値があると評価できる要素はいくつもある。この時計は1940年代のスイス製であり、バルジュー製キャリバーを搭載している。この時代のバルジュー製ムーブメントを使用した複雑時計で5000ドル(約79万円)以下で手に入るものは、非常に少ない。私は個人的にバルジュー 90に特別な愛着がある。それはトリプルデイトカレンダーの時計に目がないということもあるが、このムーブメントが伝説的なバルジュー 72のファミリーに属しているためだ。基本設計はヴァルジュー 72に基づいているが、このキャリバーをじっくり見てみると、オーデマ ピゲが使用していた初期の13リーニュ ヴァルジュー“VZ”ムーブメントの面影も感じ取れる。

この時計の状態は非常に良好だ。オーバーサイズの38mm径ケースは未研磨と見られ、しっかりとした存在感がある。文字盤にはラジウム塗料が使用されており、経年変化による色褪せが見られる。しかし変色は均一であり、こうしたヴィンテージらしい風合いが好みの人には魅力的だろう。

このギュブランの時計は、イギリスのルイスに拠点を置くeBayの出品者が即決価格2475ポンド(日本円で約39万円)で販売している。詳細はこちらから確認してほしい。

モバード 1966年サンボウル記念モデル 1960年代製
私がヴィンテージのモバードを愛していることは、読者諸君のあいだでもよく知られているだろう。しかしカレッジフットボールに対する私の熱意については、あまりご存じでないかもしれない。実は先日もマイアミでの時計イベントの合間を縫って、オレンジボウルでノートルダム・ファイティングアイリッシュがペンシルバニア州立大学に勝利する試合を観戦し、ナショナルチャンピオンシップへの出場権を手にする瞬間を目の当たりにしてきた。

そんなこともあって、1月10日のコットンボウルでシーズンが正式に終了することを考えていたときに、1966年サンボウルの記念モデルとして作られたこのモバードが目に留まったのだ。この時計は基本的には一般的な防水ケースを備えたモバードの腕時計だが、文字盤の中央に大きく描かれたサンボウルのロゴが非常に印象的だ。もし先日のアンティークショーで購入する時計を見つけていなければ、私自身がこの時計を買っていただろう。だが私が購入しなかったことで、この時計を手に入れるチャンスが読者諸君に訪れたというわけだ。

このモバードはメリーランド州ヘルソープに拠点を置くeBayの出品者が、即決価格350ドル(日本円で約5万5000円)で出品している。詳細はこちらから確認してほしい(編注:すでに売却済み)。

トリー バーチ 2025年秋の新作ウィメンズバッグ「キラ ターンロック」が登場。

シャープなフォルムの新作秋バッグ
キラ ターンロック ショルダーバッグ トレンチ ブラック 92,400円
キラ ターンロック ショルダーバッグ トレンチ ブラック 92,400円
「キラ ターンロック」は、ブランドを象徴するダブルTモチーフのターンロックと、角度を付けたシャープなシルエットが特徴のバッグ。クラシカルで洗練された佇まいながら、カジュアルなスタイルにも合わせやすいデザインに仕上げた。今回は、実用性にも優れたショルダーバッグとトートバッグを展開する。

スーパーコピー 代引き大ぶりチェーンが魅力のショルダーバッグ
キラ ターンロック ショルダーバッグ 84,700円
キラ ターンロック ショルダーバッグ 84,700円
ショルダーバッグは、スタイリッシュで存在感のあるシルバーチェーンがポイント。チェーンはクロスボディとして使用できるほか、二重にして肩掛けスタイルでも楽しめる。また、バッグ内部には3つのコンパートメントを備えているため、スマートフォンや財布、サングラスなどの小物を整理して収納することができる。

キラ ターンロック ショルダーバッグ 84,700円
キラ ターンロック ショルダーバッグ 84,700円
カラーごとに異なる質感も魅力の1つ。光沢感のあるレザーを使用したブラック、ダークグリーン、アイボリーのほか、ファー素材でレオパード柄を表現したトレンチ ブラック、温かみのあるスエード素材で仕立てたダークココアを展開する。

収納力も備えるレザートートバッグ
キラ ターンロック スモール トートバッグ 79,200円
キラ ターンロック スモール トートバッグ 79,200円
一方の「スモール トートバッグ」は、縦長のラインがすっきりとした印象。サイドに備えたファスナーで容量を広げることができるため、荷物が増えてもしっかりと収納することができる。カラーは、ダークココアのスエードとブラックレザーの2色を展開する。

【詳細】
新作「キラ ターンロック」バッグ
発売日:2025年7月9日(水)
取扱店舗:全国のトリー バーチ店舗、公式オンラインストア
アイテム:
・キラ ターンロック ショルダーバッグ 84,700円、レオパードのみ92,400円
カラー/素材:ブラック/レザー、ウォームティール/レザー、プラリネ/レザー、トレンチ ブラック/ファー、ダークココア/スエード
サイズ:高さ 14.8cm、幅 28cm、マチ 8cm
・キラ ターンロック スモール トートバッグ 79,200円
カラー/素材:ブラック/レザー、ダークココア/スエード
サイズ:高さ 27.5cm、幅 22cm、マチ 9cm

【問い合わせ先】
トリー バーチ ジャパン
TEL:0120-705-710

このコラムは基本的に、“ウェブで販売されている最高の時計”というテーマのもと執筆されている。

パテック フィリップのステンレススティール(SS)製Ref.1518が“2000万ドル超”で販売されている記事をぜひご覧いただきたい。一方で、時針の代わりに太陽と月の表示があり、デッドビートセコンド機構を備えたユニークなドクサに興味があるならこのまま読み進めてほしい。

選んだ時計には自信があるが、前回掲載分の結果は今ひとつだった! 目玉となる初期フランク ミュラーとブシュロンの“ゴンドーロ”は、いまだにそれぞれの希望価格で販売中だ。一方でeBayに出品されていたポー“ラ”ルーターは最終的に1826.98ドル(日本円で約29万円)で落札され、ルガンのクロノグラフは完売となった。なお、ロレックスRef.6424のオークションも先週末に2325ドル(日本円で約35万2000円)で終了している。

それでは、今週のピックアップを紹介しよう!

オーデマ ピゲ プレシジョン 天文台ダイヤルとバルジュー13VZAS搭載 1948年製
先月のオリジナル マイアミビーチ アンティークショーで目にした数千点の時計のなかで、今もなお強く印象に残っているのは、このシンプルで、一見すると控えめで、さほど魅力的に映らないオーデマ ピゲだ。こんな紹介の仕方では次の時計にスクロールしたくなるかもしれないが、ぜひもう少しお付き合いいただきたい。この時計が特別な理由をお伝えしよう。このことは以前から言われ続けているが、私は今日のコレクターが本物のヴィンテージ オーデマ ピゲの素晴らしさを本当に理解しているとは思えない。

1951年以前に同社が製造した時計はどれも基本的に一点物であり、ひとつとして同じものは存在しなかった。シリーズとして製造されたモデルであっても、細かな違いがあったのだ。そして、それらは極めて稀少な存在だった。1940年代に製造されたパテック フィリップのクロノグラフの総数と、1951年以前のオーデマ ピゲのクロノグラフ製造数がわずか307本であることを考えてほしい。あるいはパテックのパーペチュアルカレンダー(Ref.1518、Ref.1526、Ref.2497)を思い浮かべて欲しい。パテックが同時期に製造したパーペチュアルカレンダーは688本だが、オーデマ ピゲはわずか9本しか作っていない。

この比較は一見、パテックの優位性を示すものに思えるかもしれない。しかし、当時オーデマ ピゲが複雑機構を備えた腕時計を製造していたという事実自体が驚くべきことなのだ。どんなブランドであれ、20世紀中ごろのパテックと比較するのは容易ではない。たとえばヴァシュロン・コンスタンタンは、この時期にパーペチュアルカレンダーの腕時計を一切製造していない。もちろん今回紹介する時計は時間表示のみ(タイムオンリー)のモデルだが、こうした背景を理解することでその価値がより明確になるだろう。これは単なる“ビッグスリー”の一角を担うブランドのヴィンテージウォッチというだけではない。3社のなかで唯一、ウォッチメイキングにおいて技術的挑戦を続け、各リファレンスを大量生産することなく仕立て上げていたブランドによる、極めて希少で卓越した時計なのだ。

前述のオーデマ ピゲの複雑機構のほぼすべては、バルジュー製のムーブメント“13VZ”をベースにしている。この点ではパテックのRef.1518やRef.2499、そして伝説的なJ.B.チャンピオンの天文台モデルと共通している。そして今回紹介するプレシジョン 13VZASは、オーデマ ピゲのなかでもJ.B.チャンピオンの時計に匹敵するモデルである。ただし、まったく同様というわけではない。なぜなら、このムーブメントが(パテックの事例のように)天文台クロノメーター検定にエントリーされた記録は存在していないからだ。しかし両者が持つ理念は共通している。天文台時計とはブランドが誇る究極のタイムオンリームーブメントであり、最高水準の精度と仕上げで製造されたものだ。そしてこのオーデマ ピゲには、そのすべてが反映されている。細かい説明はさておき、まずはムーブメントの仕上げに注目して欲しい。広い面積に施されたコート・ド・ジュネーブのストライプは、フィリップ・デュフォーのシンプリシティに匹敵するほど美しい(実際、デュフォー自身が仕上げの参考にしたのが13VZだと言われている)。

このムーブメントは32mm径のSS製ケースに収められており、2021年のクリスティーズで10万6250スイスフラン(当時の為替レートで約1285万円)で落札され、1万2000~2万8000スイスフラン(当時の為替レートで約145万〜328万円)のエスティメートを大きく上回った。そして現在、マイアミのメンタウォッチのアダム・ゴールデン(Adam Golden)氏が、この驚くべきオーデマ ピゲを13万5000ドル(日本円で約2040万円)で販売している。詳細はこちらから確認できる。

パテック フィリップ ローズゴールド(RG)製Ref.1486 箱、書類付き 1942年製
10月にこのBring A Loupeで、ヴィンテージのパテック フィリップ Ref.1485を“キューブ風”と表現して紹介した。それに続くのがひとつ上の番号にあたる姉妹リファレンス、Ref.1486だ。どちらもキューブのようなフォルムを持つが、Ref.1486はフードラグを備えゴールドケースで製造されている。一方のRef.1485は丸みを帯びた魅力的なラグを持ち、SSのみで展開されている。少々ややこしいが、どちらも同じケース構造を採用しており、このふたつのリファレンスはペアとして考えずにはいられない。これは時計界におけるユニークな仕様のひとつであり、私も特に気に入っている。

私の記事を読んだことがあるなら、私が20世紀中期の防水ケース、特にケースメーカーであるフランソワ・ボーゲルのものを好んでいることにはお気づきだろう。このRef.1486ももちろんボーゲル製で、1939年に取得された特許技術が使われている。この設計ではケースはケースバックとベゼルのふたつの主要パーツから構成され、側面にある3つのスライド式固定パーツがそれらをしっかりと密閉する。このRef.1486は状態が極めていいため、ケース側面のスライド機構用の刻みがはっきりと残っているのが確認できる。

1960年以前のパテック フィリップへの関心の高まりにより、こうした個性的なリファレンスの価格は近年上昇している。しかし私の知る限りでは、Ref.1486の優れた個体が市場に登場するのは実に久しぶりのことだ。実際、このリファレンスの過去最高額が記録されたのは1999年のオークションであり、それ以降極めて希少な存在となっている。そのため個体数の少なさと良好なコンディションのモデルの不足により、市場全体の価格上昇には追いついていない。Ref.1486はラグを含めたサイズが横27mm×縦37mmで、手首に乗せたときのバランスが絶妙であり、非常につけやすい時計だと感じる。

今回のRef.1486は、おそらく市場に登場したなかで最も素晴らしい個体のひとつだろう。“ピンクオンピンク”と呼ばれる配色で、RGのケースにRGトーンのシルバーダイヤルが組み合わされており、パテックのアーカイブ抄本によってそのオリジナリティが確認されている。さらにこの個体にはオリジナルの箱と書類まで揃っている。ケースに刻まれたホールマークのシャープさを見てほしい。ヴィンテージのパテック フィリップにおいて、これほどの状態のものは滅多にお目にかかれない。

この傑出したRef.1486は、バルセロナのAncienne Watchesのイグナシオ・コル(Ignacio Coll)とそのチームによって1万2000ユーロ(日本円で約188万円)で販売されている。詳細はこちらから確認できる。

ダニエル・ロート ホワイトゴールド(WG)製Ref.C117 永久カレンダー 1990年代製
LVMHとラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンがブランドの最新ラインとしてダニエル・ロートのモデルを少しずつ復活させているなか、パーペチュアルカレンダーの登場は時間の問題だろう。オーデマ ピゲとブレゲでの経験を経て、ロートは1989年に自身のブランドを立ち上げた。そして3年後の1991年のバーゼルワールドで、彼は世界初となる瞬時切り替え機能を搭載したパーペチュアルカレンダーを発表した。それまでのパーペチュアルカレンダーは、日付や月などの表示が真夜中にかけて徐々に変化するものだったが、このモデルではすべての表示が一瞬で切り替わる仕組みになっている。ロートの作品は初期の独立系時計師の頂点を象徴するものであり、このパーペチュアルカレンダーもその好例だ。彼の初期の時計は伝統的な時計製造に根ざしながらもまったく新しい美学を打ち出し、その革新的な機能性によって業界の進化を促した。

しかしロートはこの偉業をひとりで成し遂げたわけではない。実はこのパーペチュアルカレンダーの開発に際し、彼は親しい隣人であるフィリップ・デュフォー(Philippe Dufour)に協力を仰いでいる。デュフォーはこのモデルに搭載されたパーペチュアルカレンダーモジュールの開発に大きく関与した。このモジュールは最終的にレマニアのエボーシュムーブメント、Cal.8810の上に搭載されることとなった。ロートとデュフォーという20世紀を代表するふたりの名工がてがけたにもかかわらず、このプロジェクトは非常に困難を極めた。世界初のものを生み出すのは決して容易なことではない。デュフォー自身も「大変な作業だったのを覚えています。ムーブメントの完成までに6~7カ月かかりました」と語っている。

ある日曜日の午後、マンハッタンのアッパーイーストサイドを何気なく歩いていた時、ふとした好奇心からリアルリアル(The RealReal)のマディソンアベニュー店に立ち寄った。そしてショーケースのなかにこの時計を見つけた。初期のダニエル・ロートをこうした場所で目にするだけでも十分に興奮するが、それがデュフォーが関わったパーペチュアルカレンダーとなればなおさら心が躍る。とはいえ、周囲の誰もこの時計の意義を理解できるとは思えなかったので時計をそっと置き、「ありがとう」とだけ言って店を後にし、急いで帰宅してこのBring A Loupeの記事を書き上げた。

この個体は完璧とは言えない。おそらくオーバーホールが必要で、オリジナルボックスやギャランティーも付属していない。もちろん1990年代の時計としてはそれらが揃っているのが理想的だ。しかしこのモデルの過去の取引価格を考慮すると、見逃せない価値がある。同じリファレンスの個体が2024年には4万8946ドル(日本円で約740万円)、2023年には7万674ドル(日本円で約1070万円)でフィリップスのオークションにて落札されている。なお、これらはどちらもフルセットだった点は付け加えておこう。

このダニエル・ロートのパーペチュアルカレンダーはリアルリアルによって3万6000ドル(日本円で約545万円)で掲載されているが、現在のセール価格は3万4200ドル(日本円で約518万円)にまで下がっている! 詳細はこちらから確認できる。

ドクサ サン&ムーン デッドビート秒針 1950年代製
今週のピックアップの締めくくりにふさわしいeBayからの1本として、ヴィンテージの魅力に溢れたこのドクサを紹介しよう。HODINKEE Magazineを何号か遡ると(Vol.11だったはず)、“Hey Hodinkee”でコミュニティからの質問に答える機会があった。そのなかでも特に興味深かったのが、「比較的手ごろな価格でデッドビート秒針機構を搭載したムーブメントを見つけるにはどうすればいいか?」という質問だった。もちろん、現在1万ドル未満でデッドビートを製造している数少ないブランドのひとつとしてハブリング²を挙げたが、話の大部分はヴィンテージ時代のサプライヤーであるシェザード(Chézard)に焦点を当てた。

シェザード SAは20世紀前半に活躍したエボーシュメーカーで、最終的に現在のETAの一部となった。わかりやすく言い換えるならETAに吸収されたブランドということだ。とはいえ、このメーカーについて詳しく調べるのはなかなか難しい。シェザードは1952年にデッドビート秒針機構のムーブメント群に関する特許を取得しており、今日ではこの分野でコレクターに知られている。ここで明確に説明しておくと、デッドビート秒針とは秒針が通常のスムーズな動きではなく、1秒ごとにカチッとジャンプするように進む機構を指す。この動作は、輪列に蓄えられた一定の張力が限界に達したときに、ゼンマイが4番車を解放することで実現される。

このシェザード製ムーブメントを搭載したドクサは、間違いなくユニークなデザインだ。時針を持たず、サン&ムーン表示で時間を示すという珍しい仕様になっている。太陽は午前6時(おおよそ日の出の時間)に現れ、月は午後6時から登場し、時間を示す仕組みだ。