月別: 2025年6月

新作時計の中から、時計のプロがベスト5を選ぶ企画。

今回はジュエリー/ウォッチジャーナリストの本間恵子が選んだ5本を紹介する。一部のセレブによって首や足首に着用されるなど、ハイジュエリーウォッチの在り方が変わりつつある2024年を象徴するような、一見時計とは分からないようなモデルが多く選出された。なお、5本の時計に順位はない。

エルメス「エルメス カット」
新しいレディースウォッチを作るにあたって「エルメス H08」という非常に良くできたメンズウォッチを小さくするのではなく、「エルメス カット」を作り上げてしまうところにメゾンの矜持とこだわりを感じる。欲しい時計として推す。

エルメス「エルメス カット」
自動巻き(Cal.エルメス・マニュファクチュールH1912)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径36mm)。10気圧防水。102万4100円(税込み)。(問)エルメスジャポン Tel.03-3569-3300

カルティエスーパーコピー代引き 優良サイト「ポリモルフ」
ビス、クギに続いてカラビナが豪華にデザインされた。ペンダントとして使うのもいいが、ルビーを配したリング状のパーツを動かせばカラビナを開閉できるので、デニムのベルトループに通して着けたりするとひたすらかっこいい。

カルティエ「ポリモルフ」
クォーツ。コレクターズピース。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-301-757

シャネル「プルミエール サウンド」
時計が時計の形をしていなくてもいいじゃないかという試みは、これまで多々なされてきたが、これには本当に驚いた。もはや時計が付いている意味がない。そのことによって、時計のデザインとは何かを考えさせられてしまった。

シャネル プルミエール サウンド
シャネル「プルミエール サウンド」
クォーツ。SSケース(縦26.1×横20mm、厚さ7.65mm)。30m防水。253万円(税込み)。(問)シャネル(カスタマーケア) Tel.0120-525-51

ショパール「ラグーナ ハイジュエリー シークレットウォッチ」
実は現物をまだ見ていないのだが、これは間違いなくスゴいやつ。まるで人魚のブレスレットだ。ショパールはハイジュエリーに陽極酸化したチタンをよく使うのだが、この時計でもカラフルなチタンがものをいっている。

ショパール ラグーナ ハイジュエリー シークレットウォッチ
ショパール「ラグーナ ハイジュエリー シークレットウォッチ」Ref.105374-9001
クォーツ。18KRG✕18KWG(直径16mm、厚さ9mm)。ユニークピース。(問)ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922

ヴァシュロン・コンスタンタン「エジェリー・ムーンフェイズ」
なぜかレディースウォッチには妙に生々しい色や子どもじみたパステルカラーが多くなりがちなのだが、この「モーヴ色」を見て久々に溜飲が下がった。少しくすんだような、それでいて濁っていない、きれいめニュアンスカラーを待ち望んでいた。

エジェリー・ムーンフェイズ
ヴァシュロン・コンスタンタン「エジェリー・ムーンフェイズ」
自動巻き(Cal.1088/1L)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KPGケース(直径37mm、厚さ10.08mm)。642万4000円(税込み)。(問)ヴァシュロン・コンスタンタン Tel.0120-63-1755

総評
今年はテイラー・スウィフトが腕時計をチョーカーネックレスに仕立て直したり、リアーナが足首にブレスレットウォッチを巻いたりして、ファッションシーンでは時計が手首の定位置から飛び出した。高級時計というアイテムが記号化し、宝石と同等になったのだと思う。つまり、従来なら稀少な大粒の宝石が入るべき位置に、記号としての宝石である時計があしらわれるようになってきた。

カルティエのカラビナ形ウォッチ、シャネルのネックレス一体型ウォッチも、そう考えるとつじつまが合う。今年はソートワール(ロングペンダント)形ウォッチも、いくつかのマニュファクチュールで散見された。時計が腕時計のテイを成していないデザインは、これまでにも「こんなの作っちゃいました」系のギミックとしていろいろ作られてきたが、良質なジュエリーとして仕立てれば、単なるギミックではなくハイファッションの一部として受け入れられるのだ。

来年は、1925年にパリで開催された通称「アール・デコ博覧会」からちょうど100年。アール・デコの潮流は時計にもジュエリーにも多大な影響を与え、一時代を作り上げた。この頃のジュエリーウォッチのデザインは今見てもモダンで、心が浮き立つような華やかさがある。ということで、来年はこの黄金期を振り返ったアール・デコ風ジュエリーウォッチがいくつか出てきて時計界を賑わせると思うのだが、はたしてどうなるか。

時計とバッグの違いはあれど、ゼニスもポーターも実によく似たブランドだと思う。

質実剛健かつスタイリッシュ。そんな両者がコラボしたクロノグラフ、「パイロット ビッグデイト フライバック ポーター エディション」の出来が悪かろうはずもない。良いに決まっている。そしてその良さは、時計に詳しくないフツーの人々にも一発で伝わるのであった。

いつでも、どこでも、誰にでも褒められる
『クロノス日本版』編集部がゼニスのクロノを貸してくれるとな。キョエー! アガる! だってエル・プリメロですよ。しかもポーターとのコラボですよ。貸し出し期間は2週間。ゼニスと私のアバンチュールは長いようで短いゆえ、寝ている間も着用したいと思う。

さてこの「パイロット ビッグデイト フライバック ポーター エディション」(以下、「パイロット」)はどんな時計だったのか。ゼニススーパーコピー代引き 優良サイト結論から言えば、「いつでも、どこでも、誰にでも褒められるクロノグラフ」であった。

なので本インプレッションの後半では、私が(本当はこの時計が)褒められるシーンが随所に表れる。「えーめっちゃ可愛いじゃないですかぁ。お似合いですぅ」的な。そう、はっきり言ってチャラい。チャラいが、どこまでも正直に書こうと思う。この「パイロット」を目にした他人の感想と、私の実感を。

限定パイロット コレクション Ref.03.9500.3600/01.I001 ゼニス ポーター
ゼニス「パイロット ビッグデイト フライバック ポーター エディション」Ref.49.4001.3652/63.I001
自動巻き(Cal.エル・プリメロ 3652)。26石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。セラミックケース(直径42.5mm)。10気圧防水。世界限定500本。204万6000 円(税込み)。

ストレスフリーの軽さと着用感
まずは第一印象から。素敵……もうね、うっとりだわ。まず色がいい。ラギッドな雰囲気漂うカーキ(一般的にオリーブグリーンと呼ばれる色だが、ブランドの呼称とミリタリーカラーの所伝に従う)のケース&文字盤に、オレンジ色の針が映える。フライトジャケットのMA-1を彷彿とさせるカラーリングだ。男心をそそるし、どんな服装にも意外なほどマッチする。

エンジニアド ガーメンツのウールジャケットに、フィルソンのシャンブレーシャツ。合うねぇ。このカーキカラーは、男服とめっぽう相性が良さそうだ。
おおっ、と新鮮に感じるのがその軽さ。ゼニスのクロノグラフには──いい意味でがっしりと武骨な印象で、その持ち重りする着用感がプロダクトとしての信頼感につながっている──そんなイメージを持っていた。が、この「パイロット」のケースはセラミックス。ブレスレットはラバーベースにファブリックを縫い付けたもので、こちらも軽いのだ。

ゼニス ポーター パイロットウォッチ
ポーターの「タンカー」シリーズをご存じの方は、そのデザインコードに首肯するはず。時計の色使いやストラップの素材に「タンカー」らしさが見て取れる。
時計の重いor軽い問題は、好みやオケージョンによって変わるのでむろん正解はない。が、実際2週間続けて使ってみると、やっぱり軽いのはありがたいなって。ウールメルトンのダッフルコートやムートンのジャケットの良さはわかるけど、ついダウンジャケットの登板回数が多くなる感じ。何せラクなのよ。

ストラップの着脱には面ファスナーを採用。一般的にマジックテープやベルクロと呼ばれる、ベリッと剥がすやつだ。ああそうか、こんなところにもポーター「タンカー」(ググってみて)シリーズの血脈が表れるか。「タンカー」のバッグや財布類のフラップポケットには、しばしばベルクロテープが用いられる。いわばアイコン的ディテールね。ポーターのネームタグも意味ある。全体がビシッと締まる感じで。

着け心地も素晴らしい。ファブリックやステッチが肌に当たる感じは皆無で、面ファスナーゆえ当然だが微妙なサイズ調整も利く。ホリデーシーズンの飲み過ぎ食べ過ぎで、手首がむくんでしまっても問題なしだ。ただその面ファスナーの、側面からわずかにはみ出した起毛部分が、どうしても衣服の袖口を擦ってしまう。デリケートなカシミヤニットやウール地のジャケットは袖口が毛羽立ってしまう恐れがあるので、ご注意を。ま、致し方ない部分ではある。もちろん半袖のシーズンには何の心配もない。

ゼニス ポーター パイロットウォッチ

ストラップを外してみた。今まで試したインターチェンジャブルの中で、最も着脱が容易だった。個人的に。
ストラップはインターチェンジャブル。裏面のボタンを押しながらストラップを押し上げれば、簡単に取り外すことができる。再装着はバネ棒にフックを掛けて引くだけだ。“カチッ”という小気味良い音とともに再装着完了。各社のインターチャンジャブルにビクビクしてきた生来不器用な私でも簡単なのだから、誰にでもできる。また交換用として、コーデュラ・エフェクト カーキラバーストラップが付属する。気分や服装によって使い分けを楽しみたい。

明日からずっと一緒(キモい)のこの「パイロット」。果たして他人の目にはどう映るのだろうか。まあ、期待しかないけど。

Case1: 30代男性「くは〜、滑らかだわ〜」
ファッション誌の編集部へ。恒例のスニーカー座談会のYouTube収録を終えたところで、編集部のAが寄ってきた。30代半ばの2児のパパだ。

「あ、加瀬さん見つけました〜。何やってるんですか? 収録ですか?」

チッ。Aは雑誌の時計担当ゆえ、いわば玄人。恐ろしいほど時計に鼻が利き、そのニオイを嗅ぎつけては「いいじゃないですか〜」と慣れ慣れしく近寄ってくるのだ。今回は時計に詳しくない人の感想を聞きたかったのに。

「今日の時計もいいじゃないですか〜。あ、ポーターコラボ! 見ていいですか?」

相変わらず慣れ慣れしい。仕方なしに「パイロット」を渡す。

「くは〜この秒針の動き! 滑らかだわ〜。フライバックいじっていいですか? さすがエル・プリメロですね。でも200万超えですよね? さすが売れっ子は違いますね〜」

何だよ“くは〜”って。そして私が購入した時計&私が売れっ子だと勘違いをしているようだが、めんどいのでそのまま泳がせることにした。Aに見つかったのは偶然にほかならないが、ともかくも褒められたので良しとする。

ゼニス ポーター パイロットウォッチ

ラルフ ローレン ラグビーのステンカラーコートに、ライテンダーのウールニット。合うね。コートの袖がほつれているのは15年近く愛用しているからだ。これも味かなって。

Case2: 20代女性「こういう普通の時計、してみようかな」
本日は取材である。スポーツ関連商品を扱う輸入商社にて撮影&インタビュー。

広報の女性Bさん、社長、そしてその商社がサポートするアスリート、という布陣だ。2年ほど続けている仕事なので、どなたも顔馴染みではある。

撮影のセッティング中にBさんと世間話。自転車で通勤し、ランやヨガを楽しむウェルネスな女性である。彼女の手元はもちろんApple Watchだ。私はテーブルの上で「パイロット」をわざとらしくいじくり、アピールする。

ゼニス ポーター パイロットウォッチ

ループウィラーのスウェットシャツに、ブルックス ブラザーズのボタンダウンシャツ。軽快で若々しくて、いいねぇ。
「あ、今日の時計素敵ですね。カーキにオレンジ色が可愛い。ポーターの時計なんですか?」

ゼニスっていう歴史あるブランドのクロノグラフなんです、と彼女に「パイロット」を手渡す。

「軽い! もっと重いのかと思ってました。アクティブな感じでいいですね。わたしもこういう普通の時計、してみようかな」

むろんこの「パイロット」は全然普通の時計ではないわけだが、彼女とっては、丸型ケースに時分針という、オーソドックスな時計に見えるのだろう。この“普通の時計”が200万円を超えるものだと知ったら、どう反応するだろうか。

「えっ。ダイヤとか、宝石が付いてます?」

なるほどそうきますか。いやBさんの言葉を笑うなかれ。この反応こそ世間一般のスタンダードであろう。時計業界にどっぷり浸かるとこのあたりの“普通の感覚”を見失ってしまうもの。以人為鑑よね。ともかくも、見た目と着用感は若い女性にも高評価をいただいた。社交辞令? いいんですよ。信じる者は救われる。

Case3: 40代女性「趣味いいなー、って」、40代男性「車で言えばアウディのA4」
とある企業誌の編集人を務めるCさん(女性)の呼びかけで、早めの年忘れ会食。もうひとりはフォトグラファーのD氏(男性)だ。

「最近どうですか、仕事」とCさん。

景気は戻ってきたけど、売り上げは増えません。文章生成AIも日進月歩ゆえライター業が先細りであることは言うまでもありません。ショボい返しである。

「と言うわりにいい時計してますね。新しいのでしょ」

どうやら「パイロット」は、具眼の士であるCさんのアンテナを刺激した模様。

あ、分かります? いやまあ、仕事で着けてる時計ですけど。

ゼニス ポーター パイロットウォッチ
会食のようにテーブルに手を乗せるシチュエーションだと、時計に気付いてくれることが多いなあと改めて実感。すき焼きの映り込みは、イタイ見栄坊の小自慢ゆえ鼻で笑ってください。
「ギラギラしてないけど生真面目でもない。ちょっとした遊び心がありますよね。趣味いいなー、って感じ」

これは……めっちゃうれしい。フォトグラファーのD氏にも感想を聞いてみる。ゼニスのことは知っているようだ。
「時計にそこまで詳しいわけじゃないけど、ゼニスを着けている人を見ると“分かってるな〜”って思います。車で言えばアウディのA4オールロードクワトロかな。時計好きが選ぶ時計、ってイメージ」

自分の時計じゃないが、そりゃもう、気分がいい。酔って気も大きくなり、うっかり「ここは私が」と口を滑らす。しまった。私は根がセコいくせに、見栄っ張りなのだ。この生来の気質のせいで、どれだけ身の程知らずを繰り返し、どれだけ自己嫌悪に陥ってきたことか。そんな浅はかな私に「いやいや割り勘で」とCさん、D氏。慈悲深く聡明なおふたりに、この場を借りて御礼申し上げる。

私「逆にイヤなところあります?」
さて、「パイロット」を借りた2週間はあっという間であった。カレンダーを振り返ると、土日を含めほぼ毎日何かしら外出している。そして出先で「パイロット」に気付いた人の感想は、いずれもまったく好意的なものばかりであった。

ゼニス ポーター パイロットウォッチ

ナンガのダウンコートに、チャンピオンのスウェットシャツ。ナイロン系アウターとの相性も良さそうだ。
実は、気付いた人にはインプレッション原稿を書く旨を明かし、「逆にイヤなところあります?」といちいち聞き直したのだ。が、それでも誰もが異口同音に「全然。めっちゃいい」と言うのである。

色や形が好きじゃないとか、高すぎて買えないとか、重くて違和感があるとか……普通は何かしら言いたいことが出てくるもの。だがこの「パイロット」に関しては、そんな意見がまるでなかったのだ。

ちなみに40代の妻の感想は「いいじゃん」(あっさり)、10代半ばの息子は「おー、いいじゃーん!」(しっかり)であった。性別、年齢を問わず、愛好家にも、そうでない人にも「いいね!」をもらえる時計。これってかなり、稀有なことだと思う。